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16話 3対3


「さてと…どうやってケリをつけようかしらね?」



エレナの問いにアカニシは笑みを深める。



「お互いに三人いるんだ。好きな相手を選ぼうぜ!」


「なるほど…いいわ。なら、そっちから選ばせてあげる。」



アカニシはその言葉に舌なめずりをすると、品定めするようにエレナ、フレデリカ、アレックスと順番に視線を向け、最後にエレナに戻した。



「お前だ…俺はお前とやってやる。」


「あら、光栄ね。あんた、一応そちらのボスでしょ?」


「まぁな…ククク。」



二人が笑っていると、ハーデが口を開く。



「ならよぉ!俺はお前だ。」


「えっ?僕ぅ?」


「あぁ、そうだ。おじさんといいことしようぜぇ!!」


「げぇ…キモォ〜い!!!」



愉悦の笑みを浮かべるハーデに対し、アレックスはゾワゾワと訪れる気持ちの悪い感覚に身震いする。



「なら、私はお前か…」


「そうみたいですわ。」


「こんな小娘の相手とは…ちっ…」


「ふん!そっちこそ、格の違いを教えてやりますですわ。イケメンさん。」


「あ"?!…てめぇ、いまなんつった?」



すまし顔だったメテルの顔が、突然怒りに満ちた。

血管が浮き上がったその顔をフレデリカに向け、今にも飛びかかりそうな表情を浮かべている。



「そいつに"イケメン"って言っちゃなんねぇぜ…ククク」


「どうでもいいですわ。」



肩をすくめるフレデリカを鼻で笑うと、アカニシがエレナたちに告げる。



「なら、さっさと始めようぜ。勝敗は…生きるか死ぬかだ。シンプルだろ?」


「あたしたちは構わないけど…本当にいいの?あんたら、負けるわよ。」


「ケッ!言ってやがれ。目にモノ見せてやる。」



こうして双方の相手が決まった。


エレナとアカニシ。

フレデリカとメテル。

アレックスとハーデ。


それぞれが距離をとった場所に移動し、向き合って立つ。




巨大な斧を手に持つハーデが、アレックスをジッと見つめている。



「ハァハァ…お嬢ちゃん、お名前はなんて言うの?」


「キモいキモいキモいぃぃ!!お前なんかに名前なんか教えないよぉ!!」


「グヘヘヘ、怒った顔も可愛いなぁ!!よし、決めたぜ!」


「きっ…決めたって…なっ…何を?」



恐る恐るたずねるアレックスに対して、ハーデは愉悦の笑みを深めて言い放った。



「お前は手足をもいで、俺のお人形さんにしてやるよぉぉぉ!!」


「わわわわぁぁぁぁ!!」



ハーデはその瞬間、大きな巨体を浮かせて、アレックスへと飛びかかった。


大きな斧がアレックスに襲いかかる。

アレックスは焦りながらも、バックステップをとり、大きく後ろに回避した。


誰もいなくなったところに、ハーデの斧が直撃する。

叩き込まれた斧の周りから亀裂が走り、衝撃波が地面を砕いていく。



「うわぁ…馬鹿力だね〜♪」


「お嬢ちゃんこそ、そんな大きな盾持ってるのに、けっこう逃げ足は早いんだね。」


「いや〜♪おじさんが遅いんだよ♪」


「…ほう。言ってくれるじゃねぇの。なら、これはどうよ!」



ハーデが再び斧を持ち上げると、斧の刃先には大きな岩がくっついており、ハーデはそれをアレックス目掛けて投げ抜いた。



「うひゃぁぁぁ♪」



目の前に迫る大きな岩に、アレックスが再び横に飛んでかわした瞬間、目の前にハーデの巨躯が現れた。



「ひっ!なんで…!?」


「お嬢ちゃん、俺のこと遅いってみくびったな?グハハハ、これで終わりだ!」



ハーデは、自分のスピードをわざと遅く見せていたようだ。

アレックスを油断させ、岩をおとりに一気に勝負を決めにきたのである。


真近で見ると、何十倍にもおぞましさが増して見えるハーデの笑みに、アレックスはゾワゾワと鳥肌を感じてしまう。



「キモいキモいキモいよぉぉぉぉぉ!!!」


「へへへ、もう遅いぜ!!」



その瞬間、斧が振り下ろされ、衝撃波とともに巨大な砂けむりが巻き上がった。





一方で、興奮状態のメテル。

フレデリカにその怒りの視線を向けている。



「フゥーッ!フゥーッ!てめぇ、殺すからなぁ!俺のこと馬鹿にしやがって!!」


「イケメンも、こうなると台無しですわね。…はぁ。」



フレデリカは大きくため息をつくと、組んでいた腕を解く。

そして、メテルに人差し指を向ける。



「…さっさと来い。遊んでやるですわ。」


「このアマァァァァ!!舐めるなぁ!!」



さらに怒りを増した顔を浮かべたメテルは、両手に赤い炎を纏わせると、フレデリカへと飛びかかる。



「ふ〜ん、体魔術士ですわね。」



メテルの赤く光る右拳を横向きにかわしつつ、フレデリカはそう呟いた。



「りゃぁぁぁぁぁ!!」



そんなことは意に介さず、赤い光をまとった右足で追撃するメテルに対して、フレデリカは上半身を仰向けに反ってそれをかわす。


前髪の一部がチリッと燃える。


そのまま後転すると、メテルの背中に蹴りを浴びせた。



「ぐあぁぁぁっ!」



吹き飛びつつも冷静に受け身をとり、体制を整えるメテル。

しかし、その顔には笑みが浮かんでいた。



「…やってくれるじゃねぇか!


「あんたがとろいだけですわ。」


「口の減らねぇ女だな。まぁいいさ…お前は今、俺に触れちまったんだからな!」


「…どういう意味ですわ?」



フレデリカがそう問いかけると、メテルの口角が小さく上がる。


次の瞬間、メテルを蹴ったフレデリカの右足が赤く光り出した。



「こっ…これは!!」



その光は、キーンと収束する音を立て、最後に大きく輝き出した。


そして…


ズドォォォォォン!!


フレデリカを巻き込んで、大きな爆発が巻き起こったのだ。





「俺らも始めようか。」



アカニシは抜いた剣をエレナに向ける。

それを見たエレナは腕を組んだまま、アカニシを睨んでいる。



「武器を抜けよ。」


「…」


「…てめぇ、無視してんじゃねぇよ。」



腕を組んだままのエレナにイラ立ち、アカニシは声を荒げた。


その瞬間、ドーンッという岩が砕ける大きな音が響き渡った。見ればハーデが巨大な斧を振り下ろしていて、砂けむりが舞い上がっている。



「ありゃりゃ!おチビちゃん、死んじまったんじゃねぇか?」



アカニシがそう笑うと、今度は反対側から大きな爆発音が轟いた。


黒煙と粉塵が舞い、その中でメテルが大きな笑い声を上げているのがうかがえる。



「高飛車な女も死亡っと…お前一人になっちまったな。」



しかし、エレナは顔色ひとつ変えずにスッと腕を解くと、アカニシに向かって口を開いた。



「あんた、おしゃべりにきたの?ぺちゃくちゃとうるさい男ね。口の軽い男はモテないわよ。」


「あ"ぁ"!?なんだと?」



エレナの挑発に、アカニシは青筋を立て、怒りを露わにする。



「さっさときなさいよ。格の違いを教えてあげるわ!」





「おりゃあっ!…はっ!せいやっ!」



アカニシは、赤いラインの入った特徴的なロングソードを、正確無比にエレナへと打ち込んでいく。


唐竹からたけ、袈裟斬り、逆袈裟。

エレナには、その太刀筋からアカニシの強さがわかった。



(なかなかやるわね。体力面だけなら、BOSSより断然強いわ…)



しかし、そんなアカニシの攻撃を、エレナは軽々とかわしていく。



「ちょこまかとぉ!!うぜぇんだよ!!」



当たらないことにイラ立ったアカニシは、今までで一番の速さで、ロングソードを右から左に振り抜いた。

横薙ぎの一閃は、エレナの胴体へと向かって走る。


しかし…



「蚊が止まってるみたいね。」



エレナはそう言いながら、その太刀を軽々と屈んでかわすと、スッと間合いを詰める。



「…っ!??」



そして、驚くアカニシをよそに、振りかぶった右ストレートを、おもいっきり赤い鎧に向けて撃ち抜いたのだ。


ドゴォッと鈍い音がして、アカニシが数メートルほど、後ろに吹き飛ばされる。


ザザザッと音を立てて、足の裏で勢いを殺し、なんとか留まったアカニシは悔しげな表情を浮かべている。


見れば、自分の鎧が少し凹んでいるのがわかった。



「まだ…やる?」



エレナはそう言って、アカニシにニコリと微笑むのであった。

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