001 残念すぎる外れスキル
「リタ、リタ、起きなさい。そろそろ時間ですよ、リタ」
「ううん・・・・」
「ほらリタ、今日は大切な『授かりの儀』ですよ」
「・・・・・おはようございます、先生」
「おはようございますリタ。ほら、早く髪を整えて着替えなさい、遅れますよ」
「はぁい」
私はリタ・アンジェーロ。
このアンジェーロ孤児院で暮らしている。
そうだ、今日はとても大切な『授かりの儀』の日だ!
私は急いで顔を洗って髪を整えて着替えた。
いったい私はどんなスキルを授かるのかなぁ?
わくわくする気持ちが止まらない。
『授かりの儀』とは、とてもとても大切な日。
その日、15歳の年になる子達は皆、神様達からスキルと言う特別な力を授かるのだ。
「おはようリタ。いよいよ今日ね!」
「おはようアンジェリカ!どんなスキルを授かるのかなぁ?魔法関連だといいなぁ」
「私は皆の役に立つスキルなら何でもいいかな?」
「アンジェリカなら頭も良いし優しいし何でもできるから、きっと凄いの授かるよ!」
「そんな事ないわよ」
アンジェリカはアンジェーロ孤児院で一緒に育った私の一番の親友。
私と同じで今年15歳になる。
アンジェリカはとっても可愛くて、勉強もできてお裁縫もお料理もできる、まさにお嫁さんにしたいナンバーワンの女の子だ。
そばかすで太っちょで元気と食べる事しか能がない私とは雲泥の差だ。
「15になったら孤児院を出て自立しなくちゃいけないからね。とにかく一人でも食べていけるようなスキルを授かりますように!」
ぐっと手を握って切実に私はそう神様に願った。
理想は魔法のスキルだけど、それがダメならせめてどこのお店でも雇ってもらえるような役に立つスキルが良い。
毎日ご飯を食べていけるような・・!
「もうリタったら」
くすくす笑われたけど、ご飯が食べれないのは私には拷問より辛いんだよアンジェリカ君・・。
『授かりの儀』は大聖堂の広場にて行われる。
もう沢山の人達が集まっていた。
あ、冒険者と思わしき人達もいる。
良いスキルを授かったら即スカウトするつもりなんだろうな。
「それでは『授かりの儀』を始めよう。今年15の年を迎える若者たちよ、神に祈りを・・・」
大神官様を筆頭に15歳になる私達全員は両手を結んで目を閉じ、膝まづく。
どうか、どうか外れスキルでありませんように!
どうかどうかどうか!!ご飯だけは毎日食べれるようなスキルでありますように!!!
朝日が昇る。
街を朝のまばゆい光が包んでいった。
その光の中から更にキラキラした結晶のようなものが私達の元にゆっくり落ちてきた。
凄い綺麗・・。
これが、スキルの結晶。
この結晶を受け取った時、私達はスキルを授かる。
手の中に結晶を受け止めると、結晶は私達を包み込む光に変わった。
あったかい・・。
これがスキルを授かるって事なのかぁ・・・。
そして、頭の中にある声が響いた。
「なんと!これは素晴らしい!≪回復魔法≫のスキルとは・・!アンジェリカよ、素晴らしいスキルを授かったなっ」
「わ、私が≪回復魔法≫のスキルを?」
「回復系のスキルを持つ者はそう多くはいない。この国でも回復系のスキル持ちは数年ぶりだ!」
「そ、そんな凄いスキルを授かるなんて・・」
大神官様は鑑定の水晶玉を手に、一人一人どんなスキルを授かったか見ていた。
アンジェリカのスキルを知った途端、普段は落ち着いている大神官様は凄く興奮した。
アンジェリカは頬を赤くさせ戸惑っている。
周りの皆も、アンジェリカのスキルに驚きと称賛の声を上げた。
「凄いじゃないかアンジェリカ!!」
「俺なんて≪栽培≫だぜぇ~外れにも程があるよ」
「でもそれならどっかの農園で雇ってもらえるじゃん」
「あ、り、リタはどんなスキルを授かったの?」
ぎくっ。
「わ、私・・・・は・・・・」
「どれどれ、君はどのようなスキルを授かったのか・・・」
まだ興奮を抑えきれない大神官様が水晶玉を私の前に掲げる。
ああ・・・見られたくない・・。
「・・・・・・ん?・・・・・・・んんんん?」
大神官様はこれでもかというくらい首をひねらせた。
何度も水晶玉と私を見比べる。
「これは・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「リタ・・・?どんなスキルを授かったの?」
私は声を絞り出した。
「・・・・・・・・≪シャボン玉作成≫・・・・・・・」
その後、朝日に包まれた街は盛大な笑い声にも包まれた。
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