第七話 予告で、○○死すなんて言われたところで、そのシーンになると結局叫ぶ。
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結果として、引き分けに終わったのは最善だったらしい。相変わらず俺はクラスで孤立気味だが、表立って敵に回る奴はいないという悠々自適状態。名取がしれっと、クラスで例の下校の件を出さないことを条件に決闘を行うと抜かしたため、あれから追求もされてない。
「とは言え、手ぇ抜かれて引き分けたようなもんだしなぁ……」
「まあ、追求される事もなくなったならよかったじゃない?」
「私も少し迂闊だったわ。次から気をつけないと。それはそれとしてマナーの悪い人は絞めておきたいものだけれど」
「やめとけ、お前がやると洒落にならん」
恐らくうちのクラスの最高火力だ。最終的な火力なら、作中でもトップ10に入る。
とまあ、多少の面倒事はあったものの、概ね平和な学園生活である。
だが、平和というのは打ち壊されるためにあるという。まあ、いわゆる極論の類だが、概ねそれは正しい。予告をつきの平和の崩壊なんてありはしないという事だ。
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基本的に人付き合いで、自分が不利益を被るのが苦手な柳葉は、人生で初めて人に集られて、少し戸惑っていた。(以前までは薄野がある程度防波堤になってくれていた)
そんな彼女だが、最近キレた拍子に薄野を氷漬けにしかけた関係で、少し人に距離をとられていた。
本人的には万々歳なわけだが、それでもきれなかった縁もある。
「今日は一緒に来なかったの?柳葉さん」
「アイツと私をワンセットみたいに扱うのはやめてもらえるかしら?」
登校一番、声をかけた白梅は、なら高頻度で一緒に登校するの止めろよ。思いつつこう返す。ちなみに先に来ているのは薄野の方で、今はトイレにいる。
「あと柳葉さんと薄野くんが幼馴染だっていう噂が流れてるけど本当?」
「ソースどこ?」
「まあ、柳葉さんが本当は薄野くんに弱み握られてて裏でエロいことされてるって噂もあるけど」
「何、その薄い本みたいな話」
「で?幼馴染なの?」
「まあ、そうだけど」
「へぇーー」
「それだけ?」
「別にそこまで特別性を見出してないだけ。というか幼馴染だーってネタにされるの嫌なクチでしょ?」
「まあ、そうだけどね」
そんな会話をしている最中、ガラッと教室のドアが開く。
入ってきたのは二人の黒ずくめの男。二人とも銃を持っている。
「はいどーも、『星の切開』でーす。ざっくり言うとテメェらは人質。もしくは未来の俺らの兵器。舐めた真似したら即刻殺すからね?」
その言葉と同時、ノイズが走り、続いてキーーーンと言った風な音が鳴り響いた。
「ぐっ!?」
埋まる。反射的に奴らを攻撃しようとして、気付く。
「(幽象が、出せない!?)」
「幾つか質問いいですか?」
「構わない」
先程までとは別の男が口を開いた。
「一つ、何の要求のために此処をジャックしたんです」
「それはお前の知る必要のないことだ」
「二つ、何でわざわざこの教室だったのですか?」
「白梅家の御令嬢、柳生の分家筋である柳葉家の御令嬢。そして名取家の御子息がいらっしゃるからだよ」
「では三つ目。何人でいらっしゃいました?」
「それこそ知る必要の無いことだ」
そう言って彼は白梅の額に銃口を突きつけた。
「では、最後に。一人、トイレに行っているのですが、そいつはいいんですか?」
「………二階担当。トイレを調べろ」
通信機に男は言った。
「(六人構成くらいですかね?)」
白梅は当たりをつける。能力が使えないのは結構痛い。挙句、間の悪い事に、本日は研究授業みたいなもので、このクラス以外の人間が投稿していない。
今できることは、唯々諾々とテロリストに従うことくらいだろう。
「(頼みます。薄野くん)」
そう祈りつつ、白梅はポケットの中の通話中にしたスマホを撫でた。
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