第四話 私ではこれが限界でした
興味を持っていただきありがとうございます。
さて、諸々あって放課後。相変わらず人に捕まっている柳葉を尻目に、待ち合わせ場所である図書室に向かう。
「ふむ、やはり異能バトルモノは衰退気味か……」
本棚を覗きつつそんな呟きをしていると、人とぶつかる。
「失礼、って白梅か……」
「こっちもごめん、薄野君。で、何でここにいるの?」
「知り合いと待ち合わせ。そっちは?」
「恥ずかしい話だけど異能の練習」
白梅は照れたように返す。ああ、そんなシーンあったなと思い返しつつ、俺はこう返す。
「演習場以外じゃ禁止じゃあ無かったか?」
異能の使用は事故にもつながるため、決められた場所以外での使用は厳禁である。バレたら生徒指導行き。
「うん、でも、人に見られると恥ずかしいし、そこまで破壊力のある能力でもないから……」
「なら、バレなきゃ問題ないか」
「……確かにそうだけどそこそこ外道発言ってわかってる?」
「何を言うか共犯者殿、バレなければ事件になり得ない。故に露見しない罪は存在しないのだよ?」
「より酷くなった!?」
そんなアホな会話を小声でしつつ。本を選ぶ。
「因みにどんな能力なんだ?」
一応聞いておく。
「えっと……」
答え辛そうな気配。まあ、当然かもしれない。彼女はお世辞にも便利とは言えない能力のせいで悩んでいる。それの解決、練習等に主人公が一役買うことで、主人公と彼女は仲を深めた。そんなシナリオだった気がする。あんまり覚えてないけど。
「ちなみに俺は無能力だ」
「嘘でしょ?」
「マジです」
「……よく入れたね?」
「『薄野満月』の努力の結果だ」
諦めたように溜息をついて、白梅は話始める。
「私の家について知ってる?」
「さっぱり」
嘘である
「……空間系能力者をよく輩出する家柄なんだけど」
「成る程。貴重だわな」
「うん、でも私の能力が変な能力で……」
と言ったところで、彼女は写真を取り出す。
「どこの写真?」
「よくわからない」
そして続いてティッシュペーパーを取り出して、黒塗りした後丸めた。
それの上に写真を置いて
「来て!!」
小さく呟くと同時、白い十人の妖精のような存在が出現する。
「行きなさい」
「アイ!」
ウチの一人が写真と黒塗りの髪を掴み、消えた。
「で、何が起こった?」
知ってるけど驚いておく。
「これ、この写真の元になったデータなんだけど……ここ。」
「……へぇ?」
彼女が写真を指差す。彼女が示した部分には、例の紙が落ちていた。
「アイ!」
「お疲れ様、みんな、戻っていいよ?」
「「「イェーーーー」」」
帰っていった。
「写真の中に物体を送り込む能力なんだって、ウチで結論はついてる。ちなみに生物は送れないみたい」
真剣にこれだけの能力だと思っているらしい。原作通り。シナリオを崩していいものかと少し悩むが、彼女が真の能力に気づいた際、能力を暴走させて、自分の腕を消しとばしてしまうシーンがあった。ならば、先に伝えて、ある程度使いこなせるようにした方がいいだろう。
「へぇ、じゃあ一つ実験をしよう」
そうと決めたらさっさと行動。未だに他人事気分だからか、思い切って動ける。スマホで近くの机の写真を撮ると、コピー機を借りに行く。
白梅が首を傾げている間にプリントアウトして戻ってきた。
「はい、ここに黒塗りの紙があります」
「はい」
「この写真置きます」
「はい」
「やって?」
「……了解。お願い、みんな」
「アイ!」
次の瞬間、黒い紙は消え、いつの間にか写真に撮った机の上にあった。
「え……嘘っ!?」
「名付けるなら超越配達ってところか?写真の件から察するに、時間軸すら無視して物体を送信するんだから結構ヤバい能力だよな」
命名は原作まんまである。
「待って待って、怒涛の展開すぎて認識が追いつかないから」
「だろうなあ。まあ、人が狼狽てるのを見るのは中々に楽しいものだが」
「意地悪!」
「攻めっ気が強いだけだ。あと、図書室では静かにね?」
「何?またナンパしてるの?」
「またとはなんだ、覚えがねぇよ」
フレームインしてきた柳葉に思わず叫び、司書さんに怒られたのはご愛敬。
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「ごめん、ウチのバカが」
「いえいえ、私もブレイクスルーさせてもらったわけですし……」
家の方向が同じらしく、合流した柳葉と共に、三人で帰ることになった。
「いや、突拍子もないことを最近よくやるけどここまでとは……」
「いえいえお気になさらず」
「おい、人を困った奴みたいに言わないで貰おうか」
「自覚ないの?」
「………………」
とまあ、終始こんな感じで、非常に気まずい思いをした。
お読みいただきありがとうございました。