第三話 サーバーが落ちる方ではない
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さて、入学式も終わり数日後。
柳葉の周りには人が群がっていた。なんとなく、ラピュタを手に入れたムスカになりたい衝動に駆られるが、取り敢えず黙る。毎年日本人の遺伝子にジブリを刻み続ける金曜ロードショーの功罪だと思う。
まあ、柳葉は新入生代表として、スピーチしてたので、仕方なくもあるが、それはそれとして気の毒に思う。どうにも口が達者なタイプには見えなかったし。
「いやあ、すごい人気だね?」
現在、座席は名簿順なわけだが、一つ前の席の少女が話しかけてきた。確か柳葉と同じメインキャラの一人。
名前は確か……
「白梅 鶯だったか?」
「うん、正解!」
白髪碧眼の彼女はそう言って笑った。
「どうした?急に話しかけてきて」
「用もないのに話しかけちゃダメ?」
「理由が見えないと怖いし、普通に美人局を疑う」
「……君の普通ってなんなのさ」
呆れ返ったような目で見られる。
「まあ、対した理由はないよ?ただ、助けに行かないのかなーーって」
「俺が?何でわざわざ」
「誰を?って聞かない辺り柳葉さんの様子には気付いてるみたいだね」
図星だ。舌打ちしたくなる。
「どう見ても彼女、気圧されてるし嫌がってるよねーー」
男女問わず群がられている柳葉はどうにも気圧されて、疲れ果てているように見えた。
そして、チラチラとこちらを見てくる。
俺にどうしろと?
「まあまあ、そのくらいにしなよ」
そうこうしているうちに、あの集団の中に誰かが割って入った。
金髪で、やたらキラキラして見えるタイプのイケメン。名は名取だったと思う。
「で?俺があれやってアイツを逃せると思うか?変な油注ぐだけになる」
「まあね、でも彼女は君に助けてほしいんだと思うよ?」
「何でわかる。君の能力か?」
「違うよ、単に経験則」
「そうかよ」
溜息。立ち上がり、教室の出口に向かいつつ、ポケットのなかでスマホを操作し、柳葉にTELした。
大きめのバイブ音が鳴り、小さく柳葉が跳び上がる。
「ごめんなさい、少し電話が来たので……」
そう言って教室の外へ逃げていく柳葉。
それを廊下で眺めつつ「はい……」という応答の声にこう返す。
「しばらく教室帰らん方がいいだろ、お前」
「高校になってからは防波堤がいなくなったから……」
「そうかい。俺にはもうできないぞ?俺がどんな風に言われるか、知っているだろ、お前」
「でも……」
「デモも示威もありゃしない。まあ、間接的に助け舟くらいは出してやるから。ほどほどに頑張れ」
流石にあそこまでの群がりようは悪意を感じるレベルである。
「わかった。一つ頼んでいいかな?」
「内容による」
何を頼まれるのやら。
「今日から一緒に帰ってくれないかな?」
「……お安い御用だ。図書室待ち合わせで」
電話を切って、教室に戻る。
白梅がニヤニヤ笑いと共に話しかけてきたのが大変ウザかったとだけ言っておく。
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