第二十三話 人はギャップに萌えるもの
トラブって遅れました。更新
というわけで本日はダンジョン回である。
では、同じ班のイかれたメンバーを紹介しよう。
最初の一人は我が幼馴染。キレると人を氷漬けにする天気の子(暴風雨)柳葉燕。
「なんか失礼なこと考えられてる気がするのだけれど」
勘がいいからネタにするのも一苦労。
続いてはこいつ、暗殺させたら天下一品。的確な一品で確実に機能停止に追い込む女。配達員(書留は死亡届へ)白梅鶯。
「だいたいアホなこと考えてるに決まってるよ」
こいつもあっさり見透かしてくるから注意が必要だ。
続いては此方。いまいち何考えてるのかわからない、ハイスペックストーカーになり得る人材。名取揚羽。
「僕だけ仇名なし?」
ナチュラルに心読む件に関してはツッコまないぞ?
さて、続いては
「男同士でツッコむとかなんとか」
「お嬢、自重してください」
そこでちょっとハァハァしてる豪奢な美少女。腐海の茨姫こと茨城起福とその尻拭いの海堂不揃。
そして最後に、この班の引率をしてくれる、国防軍所属の加藤麗亜さん。
「はい、取り敢えずちゅうもーく。attention please!」
パンパンと手を叩きつつ、木の抜けた声で注目を促す。
「正直言って私としても、ガキの引率なんて面倒なので、下手なことするようなら放置していくからね。指示にはしたがえー以上。医者の指示を守らない患者は死んでも文句言う権利はねぇーー」
「取り敢えず、欠伸噛み殺しながら言うのはやめてもらえますか?不安になるので」
流石に柳葉がツッコミを入れた。
「なぁーに?私の能力が信用できないって?」
「人間性ですかねーどちらかと言えば」
「まあ、態度はともかく腕は確かだよ?私は」
「自分で言いますか……」
「まあねぇーー。だって……」
薄野の苦笑に、加藤は気負いなく返す。
「自分の能力と心中する覚悟もなしに、戦いに身を置きはしませんよ。しかもこれで飯食ってんですから」
「……ごもっともで」
割と嫌いじゃない語り口だ……と薄野の中で加藤氏への好感度が少し上がった。
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「『霞露領域』」
十機編隊の高速飛行で突っ込んでくる蜂の群れに対し、加藤嬢が体から霧を噴霧する水の人型を発する。これが彼女の幽象なのだろう。
「水牢」
高速回転する水球に奴らを閉じ込め、脱出させずに溺死させる。そんなシーンがさっきから何度も繰り返されていた。
「流石ですね……」
「これで食ってるんだから。できなきゃおまんまの食い上げよ」
「リアルにあまり聞かない言い回し」
先ほどから加藤さんは、誰よりも早く敵を察知しては始末するため、こちらの出番が一切ない。
「そういえば、このダンジョンって何が出てくるんだっけ?」
「虫全般、あと、鹿、兎、リス、狼、猿くらいかな?」
「こっちでは生き残れたのか、日本狼……」
微妙に感慨深かった。
「ちなみに共感覚で群れで一つの個体みたいな連携するし、噛みつきで毒付与してくる」
「え?何ソレ狂犬病?」
「学術名称レイビスクラスタウルフ」
「うん、狂犬病だな」
「和名、群狂狼」
思わず苦笑いすると、加藤嬢がボソッと言った。
「まあ、出てくるのはもっと奥のはずだから」
ガサガサっと茂みが揺れ、件の狼達が姿を現した。
「………………」
視線が集まる中、加藤嬢はちょっとプルプルしながら
「本来はもっと奥のはずだから……」
あら、お可愛い。思わずニヤニヤしてしまう。ウチの他のメンバーも、何というか、微笑ましい物を見る目をしている。
何というか、間が悪かったね……
「じゃあ、私は攻撃しないから貴方達でどうぞ」
「え、どうぞ……って……」
「じゃあ、頑張んなさい」
そう言って少し距離を取る加藤嬢。
「何というか……その……」
「ほら、とっとと構えなさい。彼方さんは待ってくれなさそうよ。あ、言い忘れてたけど音立てないようにね。増援くるから」
忘れてました……
というわけで戦闘開始である。
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「『透明拒絶』」
上空からの強襲を、壁を張って防ぐ。
「ナイス!『隻眼龍神・氷雨』」
空中で一瞬止まった奴らを氷柱の雨で壁ごと打ち抜き、ハリネズミにする。
「武器提供感謝!『超越配達』」
現れた小人達が余った氷柱を掴んで転移。同時に数体の狼が崩れ落ち……
ギャンッとうめく声が複数。見ると、茨が足に絡みつき、身動きが取れなくなっている狼達が……
「海堂!」
「了解だ、お嬢。『浸透衝撃』!!」
波形グラフが人型になったような幽象が現れ、茨城の背中に拳の雨を叩き込む。しかし、茨城にはいかなる痛痒も感じた様子はなく、数秒後、茨に拘束されていた狼達が、目と鼻から血を流し、泡を噴きつつ崩れ落ちた。
「これで終わりかな?」
そう言いながら森の奥から名取が歩いてくる。その手には若干体が大きく、体色が他より少し濃い狼の死骸が。恐らくこの群のリーダーだろう。
「ふん、手出しする必要は無かったわね……それじゃあ、戻るわよ」
そう言いって加藤嬢は踵を返す。真っ当な判断だろう。
彼女は先ほど、こんな浅い場所に出てくる奴らではないと言っていた。
なら、この森に何か異常があるかもしれないと判断でき、色々まずいからだ。
「面倒にならないといいな」
叶わぬと思いつつもそう呟いた。
お読みいただきありがとうございました。




