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ダブルビジョン  作者: 深瀬優賀
新人戦
18/32

第十七話 味噌汁の好みって慣れの比重が大きい気がする。

興味を持っていただきありがとうございます。

そして数週間経ち、新人戦当日の朝。


目を覚ますと、目の前に柳葉の顔があった。


「遂に、来てしまったか……」

「なんで、「その日、人類は思い出した。みたいな」ノリなのさ」


それ以前の問題として、なんで我が家にいるのかという疑問が浮かぶが、眠気と美少女のドアップのせいで言葉の形をとってまとまらない。


「昨日おばさんに新人戦のこと伝えたらスペアキー貸してくれて、起こしてやってくれって言われた」

「ああ……なるほど」


最近わかったことだが、『薄野満月』の両親は、仕事で家を開けていることが多く、家にいることの方がレアケースだ。時々職場に着替えを持っていったりすることもある。


「大事な日に限って寝坊するものね、満月は」

「まあ、否定はできないな」


入学式でも寝坊仕掛けたし。


「取り敢えず朝ごはん作ったから着替えてリビングに来なさい」

「了解だ。助かる」


部屋を出ていく燕に軽く感謝の言葉を投げかけつつ、寝ぼけ眼でもそもそと着替え始める。


階段を降りてダイニングへ向かうと、白米に味噌汁などの中々豪勢な食事が用意されていた。


「これ、お前が作ったのか?」

「そうだけれど、何か問題でも?」

「いま、朝の6時だよな?」

「時計見れば分かるでしょう」

「昨晩の残りでもなく、昨晩のうちに用意していたわけでもないと……」

「そうだけど……」

「じゃあお前、今日何時起きだ?」

「……………………」


その沈黙に、思わず薄野はキレた。


「バッカ、お前、今日新人戦だから来たんだろうが!俺が良いコンディションで試合に臨めるよう頼まれたんだろうが!ならお前が睡眠不足でどうするんだよ!!」

「そんなこといいから早く食べなさい。冷めるわよ。あと、頭に響くから叫ばないで」

「どう考えても寝不足頭痛じゃねぇか!しばらく寝てろ!多少マシになるまで!食器洗いくらいはするから!」


こうしてこの日の朝は騒がしく幕を開けた。ちなみにご飯は絶品だった。


♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢


「ああ、お腹痛い」

「生理か?」

「違う。あとデリカシー」


会場への道を歩きながらそんなやり取りを柳葉とする。


柳葉は、大舞台の直前にやたらと緊張する性質がある人物として描かれていて、そのたび周囲の人間がフォローするという場面が散見された。


まあ、本番になると割と容赦なく敵を攻撃するのだが……


「まあ、そういうことは始まってから考えろ。今はまだ不安に思う時間でもない。どうしてもならあっちでトイレに篭れ。ナプキンくらいなら買ってきてやる」

「………そういう満月は余裕だね」

「そういうわけじゃない」

「面倒だから思考停止してるんだよね?」


そんな風な男の声。同時に肩甲骨の間くらいを軽く叩かれる。


「どうしてここに?名取」


金色の髪の男が軽く笑って横に並ぶ。


「一応僕も出ることにしてね……」

「おお、そいつはありがたい」

「ふふっ……」

「おいおいどうした?」


急に噴き出す燕に問うとこんな答えが返って来た。


「いや、お互い勝つこと前提なあたりがね……」

「ああ……」


確かに我ながら珍しいかもしれない。他はメインキャラ様だからともかく。


「まあ、何とかなるさ。死ぬわけじゃない。俺がダメでもお前と白梅が何とかするんだろうさ」


負けた場合は俺が悪い。存在しないはずのものが存在するのが悪い。


「正確には死んでも生き返る。だけどね?」


名取は含むところがありそうな表情で言う。何処か寂しそうではあった。


「一応君の人生の主人公は君なんだから、脚本読み気取りはやめた方が良いんじゃないかな?」


そう言いつつ名取は満月の首の後ろに触れ、そのまま追い越す。


「んじゃあ、先に行くよ。お互いベストを尽くそう」


そう言いつつ校門に消えていった。


♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢


選手控え室に入ると、白梅が先に来ていた。ちなみに燕は花を摘みに行ってる。


「よ、早いな」

「家に居場所がなくてね、逃げてきた」

「休日のお父さん達みたいな事を……」

「亭主元気で留守がいい?」

「酷い話だけれど、家事のリズムが崩れるからなぁ……」


会って早々そんな会話である。



「……白梅さんって、家族と仲悪いの?」

「えっと、その…………」

「能力が使いこなせてなかったのを見てマウントとられてる感じだったね」

「薄野くん!!」


焦ったような声で白梅が言う。


「というかトイレ行ってたんじゃねぇの?燕」

「明らかに長い列が出来てたから行くのやめた」

「さいですか」


それはさておきと言った様子で燕は白梅に顔を向ける。


「白梅さん」

「はい……」


能面のような表情、抑揚のない声で、柳葉は言う。


「そいつらって、今日見に来るわけ?」

「いえ、そんなことは恐らくないと思いますが……」

「そう……」


あまり見ない雰囲気に気圧されていると、柳葉は溜息をついた。


「はぁーーーーー……満月、私の言いたいことは分かるね?」

「だいたい予想はつく」

「「我らが親友の価値を見誤った世界に目に物見せてやる」だろ?」

「さすがは我が幼馴染ね」

「( 中身は別人なんだがな……)」


多少の罪悪感が顔を覗かせるが、それを噛み殺し、満月は笑う。


「野チョウ。をプロデュースってな」

「私も燕だけどね」

「時々よくわからない言い回しをしますよね、薄野くんは」

「味方がいない……」


伝わらない前提でネタを撒いたのも悪いけどさ……

闘争喜級(ヴァルハラ)


所有者 ???


ビジョン

木の紋様が描かれた黄金色の丸盾


破壊力 — 速度 B 射程 A 持続力 A

精密操作性 A 成長性 E


盾を中心とした指定範囲内において、死者や負傷者、壊れた物品を自動で完治させる能力を持つ。また、建物の要石として使うことで、その建物全体に効果を適用でき、本体のエネルギーを使わずに、能力を発揮し続けることができる。死亡時演出、復活条件等も本体は後から改変可能。欠点として、攻撃能力がない、敵味方関係なく、条件に合致すれば発動する。あえて壊したものも勝手に治るなどがある。

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