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ダブルビジョン  作者: 深瀬優賀
新人戦
15/32

第十四話 嘘をつくコツは真実を混ぜることと、情報を絞ること

「お願い、私と一緒に新人戦に出て下さい!」


ある日のことでございます。お釈迦様……ではなく俺と燕は物陰で白梅に頼み込まれていた。断じて蓮の花を見ながら散歩はしてない。


「……新人戦?ああ、前回それに前の章はそれに言及しながら終わったな」

「そう言うこと言っちゃダメでしょ」


燕がマジトーンで突っ込むので黙る。


新人戦というのは、毎年この時期に行われる一年生限定の校内大会だ。夏季に開催される、十の高校が様々な競技で勝利を争う国内最大規模の大会。『十巴戦』の一年生の部の選抜としての意味合いもある。


「なんでまた俺らに……」

「ほら、先日テロリストの制圧やったじゃないですか」

「ああ、アレか……」


満月と燕は、二人揃って苦い顔になる。

先日、学校を襲ったテロリストの制圧において、ここ3人は結構目立ってしまったのだ。


「挙句、柳葉さんに至ってはカースヒュドラを凍りつかせて機能停止させたじゃないですか」

「9割運だけどね?」

「だとしても1割は実力だろうが」

「満月いなかったら死んでるわよ?私」

「と!いうわけで、夏の十巴戦代表になるべく私たち3人組で出ろと打診を受けまして」


一つ疑問が浮かび、満月は聞く。


「なんで白梅にだけ話が行ってるんだ?」

「……普段の言動を思い出して貰えますか?」

「ああ、成る程」


燕は納得したらしい。


「どう言うことだ?」

「満月はクラス随一の実力者の名取君と引き分けた実績持ちにして、あまり友人を作らず、基本無表情。どう考えても話しかけ辛いでしょう?」

「そういうものか」

「貴方、他人からの自分の見え方にもう少し気を使った方がいいわよ?」

「気にしてるさ。毎朝寝癖は治してる」

「それは当たり前って言うんだよ……」

「ちなみに柳葉さんはこの前薄野くんを氷漬けにした件が効いてますね」


それはともかく。


「出なきゃダメなのか?それ」

「恐らく出る羽目になるし、出なきゃ面倒だと思う」

「……出るか」

「そうね」

「わかった。ありがとう」


満面の笑みで白梅はそう言った。


♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢


というわけで、トレーニング兼練習中なわけだが。


「そろそろお昼休憩にしようよ」


そう言いながら白梅がこちらに来た。


「ならそうしよう」

「ちょうどいい時間ではあるものね」


そんなわけで演習場に座り込んで話し合う。昼食は全員持参だ。


「そういえばどんなルールだっけ?」

「把握しておきなさいよ……」


燕が溜息を吐く。


「ざっくり言うと、全員死亡か降参で試合終了。武器は許可が取れれば何を持ち込んでもよし。殺しても生き返るから安心しろって所かな?」

「そらまたなんともご都合主義な……」

「まあ、限りなく実戦に近く……が基本コンセプトらしいから」

「(それって生き返れるだけで普通に死ぬってことでは?主人公よ。早く出てきてくれ。全部押し付けるから)」


満月は心から願った。


♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢


「へえ、出るんだ、新人戦」

「まあ、そうなった」


昼休憩の一コマ、眠気覚ましの缶コーヒーを買うべく、名取と自販機に向かっている間の会話でその話題が出た。


「君はそんな面倒なことしたくなーい!!ってタイプだと思ったけど……」

「理由なくやりたいと思わないだけで、頼まれれば出てもいいくらいの気分ではあったのだよ」

「で、渡りに船と白梅さんから頼まれたわけだ」

「正確には白梅を通して先生に、だ」

「ふぅん……(まあ、彼女も難儀な立場だし、このくらいなら見逃すか。いい経験にもなるだろうしね)」

「何か言ったか?」


後半がボソボソとして聞き取れなかったので聞き返すと、なんでもないと返される。


「ところで名取は出ないのか?」

「今のところその気はないね。ソロの奴は出ようかと思っているけど」

「そうか。まあ、敵に回したくはなかったからありがたくはある。共に十巴戦を戦えると

なると心強くもあるしな」

「気が早いねぇ」


苦笑いしながらも気負いなく、彼は返した。


取り敢えず自販機に金を入れて缶コーヒー(ブラック)を買う。


「んじゃあ、俺は苺ミルクを……」

「それはまた可愛らしい飲み物を……」

「?知ってるかと思ったけど」

「?まあ、名前は知ってるが実物見たのは初めてなんだよな……」

「あ、うん、そうだね、なかなか売ってないもんね。アハハハ……」

「…………」


まあ、追求して欲しくなさそうなので置いておいて


「結構甘党なのな」

「ああ、辛いものは苦手だね」

「味覚はほぼ真逆かねぇ……」


甘いものはそこまで好きではない。ほんのり甘いくらいならいけるが、綿飴くらいの甘さでダウンする。


対して辛いものはかなりいける。ハバネロくらいなら丸かじりできる程度には。


「僕からすれば辛いものが好きって方が信じられないんだけどね」

「まあ、悪い言い方をすれば自分の舌を痛めつけたいって言うマゾ野郎だしな……」

「そこまでは言ってない」


そんな会話をしている最中、後ろから声がかけられる。


「おお、薄野に名取じゃないか」

「おお、鹿角先生ですか……」


我らが担任のご登場である。先日のテロの件では、真っ先に頭ぶん殴られて倒れたとのこと。どうにも戦闘系の能力ではないらしい。


「いやぁ、薄野お前が新人戦に出てくれるとは思わなかったから助かったよ。取り敢えず感謝させてくれ」

「いや、頼まれれば断りにくいでしょう」

「案外友達思いなのな」

「案外とはひどい言われようですね」


ここで一つ違和感を覚える。


「新人戦って教師が生徒に出てくれと頼むことは無いんですか?」

「いや、基本的にはないぞ?能力に関しては自主性を重んじるという名の丸投げ方針だし、能力を秘匿したい奴もいるだろうからな」


教師として言ってはならないことを言われた気がするが……


「まあ、設備は整えてるし、場合によってはアドバイスも行う。後はお前らの努力次第ってことだ」

「的確な補足をありがとうございます」


横で名取が返す中少し考え込む薄野。


「まあ、頑張れよ。二人とも。実績ある奴には目をかける主義だ、俺は」

「誰でも多かれ少なかれそうでしょうに」

「そいつはそうだ」


そう言いつつ微糖のコーヒーを買って、鹿角先生は去っていった。


「どうにも明け透けだね、あの人。セクハラで謹慎食らわないか心配だよ。どうした?考え込んで」

「いや、何でもない」


さて、ここで白梅の言葉を思い出そう。彼女

は新人戦の3人組で出る部に出場するよう打診を受けたと言った。誰からとは言われなかったが、話の流れ的に先生方からと俺は解釈したわけだが、それは方針に反するとの旨を鹿角先生は口にした。


だとすれば、彼女は一体誰に打診を受けたと言うのだろう。


『隻眼龍神』(イチモクレン)


所有者 柳葉 燕


ビジョン

隻眼で灼眼の黒龍。黒雲を展開しながら現れる。纒装時は、黒ベースで一部赤の甲冑にマント。片目だけが爛々紅く輝くという姿になる。刀も生成される。


破壊力 A 速度 C 射程 C 持続力 D

精密操作性 C 成長性 D


能力の強度、肉弾戦における性能の双方に秀でたオールレンジパワー型の非人間型アバター。能力は、「天候による破壊」であり、黒雲から氷刃を生み出したり、水を噴射したり、雷を放ったり出来る。万能型ではあるが、出力調整に難があり、制御が乱れると、無秩序に災害をばら撒く。応用性の高さ故に、技名をつける事で、能力の出力をコントロールしている。また、人型でない中で纒装可能な数少ないアバターである。

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