第十三話 能力なんぞ拡大解釈してナンボ
再開です。二章終わるまでは毎日この時間に投稿します。
「ふっ!ほっ!」
「……何をしているのかしら?あまり奇行に走るようなら通報するけど」
「マジでやめろ」
場所は休日の市立体育館。休日なのに人の少ないこの場所で、満月はパルクールじみた動きを練習。その映像を燕にとらせていた。
一区切りつけて映像を確認し始める満月を見て、燕は溜息をつく。
「……明日時間あるか?あるなら少し付き合って欲しい。なんて言うから来たのに」
「あぁ、それで……」
「何か?」
「いや、別に」
そういえば、なかなかにめかし込んでいるなとは思ってはいた満月である。なんでそんな動きにくい格好で……と思っていたのは黙っておくが吉だろう。
「えっと……似合ってるな。ガーリーな雰囲気でやや新鮮だ」
「……とってつけたような賛辞をありがとう」
と言いつつ髪を指にくるくると絡め始める。照れている時の彼女の癖であり、一応正解を引いたらしいと満月は胸を撫で下ろす。
「で?結局満月の能力ってどんなものなの?」
「ふむ、未だ研究中ではあるが……ざっくり言うと透明な障壁を作り出す能力だ。あと反発係数を弄れるっぽい」
「なかなか便利な能力ね」
「ああ、合計面積に制限はあるが、枚数制限はないからこう言うこともできる」
そう言いながら階段のように壁を展開した。
「へえ……これ私も乗れるのかしら」
「ああ、乗ってみるか?こちらとしても他人が乗った時どんな感覚か聞いておきたい」
「なら失礼させてもらうわ」
そんなことを言いつつ階段を登っていく燕。
「どんな具合だ?」
頭の上くらいまで登って行ったところで聞いてみる。
「そうね……まず透明で反射率も低いから階段として登ると躓きかけるわね。あと、表面がツルツルしているから雨の日とかは滑りやすそうね」
「そうか……ご意見感謝する」
そう言いつつ上を見上げて……数秒硬直。
不穏な気配を感じたのかこちらを見下ろす燕。
「……………」
「……………」
目が合った。
隣に飛び降りてくる燕を見つつ、満月は動くことができない。
「ねぇ、満月君」
「なんでしょう?あと敬称は不要だ。逆に怖い」
「何が逆かはわからないけれど分かったわ。それはともかく、良いトレーニングを思いついたのだけれど」
「おい、ちょっと?黒雲でてる。バチバチ言ってる!」
その後、足腰立たなくなるまでしごかれた。なかなか理にかなっていて、使い所の多そうな能力活用方だっただけにタチが悪かった。
「なんでこんな事に……」
事情を語るべく、時を巻き戻そう。アレは約一週間前のことだ。
『透明拒絶』(クリアリジェクト)
所有者 薄野 満月
象
メカニカルでSFチックな全身鎧とヘルム。割とスリムな形状をしている。
破壊力 E 速度 A 射程 C 持続力 B
精密操作性 A 成長性 A
中距離能力主体型の人型アバター。能力は「透明な壁を作り出す」というもの。その壁は合計面積が100平方メートル以内であれば何枚でも出すことができ、表面の反発係数を0~1.5の間で変動させることができる。出した壁は、その場でのサイズ変更も、出した位置からの移動も出来ず、その座標に固定される。強度は、至近距離からの戦車砲を、防ぎはするが砕けるという程度。また、壁には表と裏があり、表面への攻撃には、先述の通りの強度を発揮するも、裏面への攻撃だと、あっさり砕ける。また、自身を囲む壁の外には新たに壁を作れない。展開速度と精密操作性に優れるため、防御性能は高いものの、攻撃への直接転用は難しい。




