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ダブルビジョン  作者: 深瀬優賀
Double World(ダブる世界)
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第十話 毎回「しめた今だ!」ってやるのはどうかと思うけど、チャンスをちゃんと活かせるってすごいよね

興味を持っていただきありがとうございます

 毎回「しめた今だ!」ってやるのはどうかと思うけど、チャンスをちゃんと活かせるってすごいよね


白梅鶯は待っていた。その瞬間を。能力無効化フィールドが一瞬でも途切れる瞬間を。


彼女の能力は、座標、時間を示す紙を貼り付ける事で、対象を転移させるというもの。

机の中でもその用意は可能だ。


机の中で、最近持ち歩くようにした付箋に座標を示す文字を書き、消しゴムにそれを貼り付け、能力を発動させる文言を脳内で連呼する。


気の遠くなるような時間ではあったが、それは遂にやってきた。


手の中から消しゴムが消える。


「来た!」


小さく歓喜の声を上げると同時、机をもちあげ、テロリスト目掛けてぶん投げた。


「ぬおっ!?」


男は慌てて回避行動を取る。その間に全力で距離を詰める。


「死ねっ!!」


復帰したテロリストがこちらに銃を向ける。


周囲から悲鳴が上がる。


しかし、弾丸は発射されなかった。

それもそのはず。白梅が消しゴムを転移させた先は、銃の初弾と撃鉄の間だったのだから。


「なっ!?」


驚いた様子のテロリストに飛び蹴りを放ち吹き飛ばす。銃を取り落とした相手を踏みつけ、叫ぶ。


「拘束するから誰か手伝って!!」


その声に弾かれたように何人かが動く。


火災報知器の音が鳴り響く中、テロリストがガムテープでぐるぐる巻きにされるまで、然程の時間はかからなかった。


♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢


「チッ!面倒な……」

「フハハ、顔に出る辺りまだまだ青いのう」

「そうだぞ燕、あと舌打ちなんてお下品ざますよ?」

「あれ?なんで私フレンドリーファイアされてるの?あとその語尾やめて」


相手の幽象(アバター)は首から下げるベルトの付いた、キーボードの(ビジョン)をとっている。


鍵盤が叩かれるたび、不可視の斬撃が飛んできたり、大音量でスタンさせられたりする。


挙句デフォルトが幽象の使用禁止なわけで、正直なところ決定打がない。


隙をついて放つ弾丸は音の防壁で防がれ、燕に至っては近づけないまま防御に手一杯だ。


挙句、攻撃のタイミング以外は能力使用不可に追い込まれる始末。


このままでは、弾切れをおこして押し切られるだろう。


ならば、賭けに出るならば早い方がいい。


「燕、幽象を使え」


銃をフルオートに切り替えつつ、そう声をかける。


「できれば一撃ですっ飛ばせるのを頼む」

「任せなさい」


それでは


「全力掃射」

隻眼龍神(イチモクレン)!!」


黒雲を背負う黒龍が展開されるのを視界の端に捉えつつ、銃のトリガーを引きっぱなしにし、弾丸を延々と吐き出す。弾が切れれば即刻ファストリロード。出来る限り隙間なく射撃を続ける。


「グオオオオオオオ!!」


髭のテロリストは叫びながら、音の防壁を張り続ける。


「(やはり鍵盤の同時押しは出来ないらしい)」


混ざって別物になるのか、不協和を起こして阻害し合うのかは不明だが、俺が撃っている間は能力封印は無い。それだけ分かれば上々である。


用意が出来るのを見計らって声をかける。


「あと5秒保つかどうかだ」

「早すぎるわ。少し情けないわよ?」

「うん、字面だけだとなんか凄く悲しい……」

「『迅雷』!!」


レーザービームのような紫電が放たれる。


床が砕け、砂煙が上がり、相手の姿を覆い隠す。


「やった?」

「それやってない奴!?」


煙が揺らいだのを見て、二人揃って跳んで回避。

焦ったため、体制を崩す。


「ぐえっ!?」


そして、のしかかられた。


「来るな!!」


馬乗りになり、俺の額に拳銃を突きつけた男が、燕に叫ぶ。


「少しでも怪しい真似したらコイツを殺すぞ!!」

「くっ」

「殺せ」

「やめろシリアスだ!!」


茶化すと怒られた。


「いや、茶化したくもなるだろ?そのカードは切らないからこそ意味があるんだから。それくらいわかるよね?」

「黙れ!!」


叫ばれたので、一旦黙る。そして苦笑と共に続ける。


「にしても、油断したな……」

「ああ、中々いいところまで来たぞ?」

「ああ、こっちじゃねぇよ」


銃声。撃ち抜かれたのは、奴の背中だ。


体の力が抜け、男が振り返る。そこには誰もいない。

続いて、腕が撃ち抜かれた段でようやく気づく。


「お前……!?」

「弾切れとは言ったが、サブアームズがないとは言ってない」


種は簡単。ポケットから取り出した拳銃で撃ち抜いた。

最悪死んでもいいと思っての行為だったが、まあ、重畳。


相手を押し除け、ダクトテープで拘束と止血を行い、そこらに転がす。


「おー。終わったみたいだね」


背後の声に振り向くと、白髪の美少女がいた。


「おう、そっちもお疲れさん。テロリストの残りはいなさそう?」

「うん。名取君が全員闇討ちしてくれた」

「さすがは相棒枠」

「?」

「こちらの話だ」


キャラの能力とざっくりした扱いしか認識していないがな……


「さて、取り敢えずはこれで……」


カランカラン


人骨が転がるような音が響いた。


振り向くと、先ほどの髭のテロリストの懐から、シャコガイのような形をした掌サイズの貝殻が転がり落ちていた。


俺はアレを知っている。


「マズい、逃げろ燕!!」

「っ!!」


燕は比較的冷静に、校庭に向かって貝殻を蹴り出す。


そして、パンドラの箱が開いた。


お読みいただきありがとうございました

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