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ダブルビジョン  作者: 深瀬優賀
Double World(ダブる世界)
10/32

第九話 音使いと糸使いは基本的に強キャラ

興味を持っていただきありがとうございます

「……お邪魔だった?」

「わかってて言ってる?」

「冗談だ。取り敢えず無事で良かったよ」


ギロリと睨まれたので内心気後れしつつ、表面上は普段通りを装う。


「まあ、来てくれなかったらこのまま犯されてただろうし」


何処か、声が震えているのに気づき、茶化すのは止める。俺にはわからない感覚ではあるが、かなり怖かったのだろうから。


「んじゃあ、取り敢えず……」


制服のポケットからダクトテープを取り出す。


床に刺さった男の足を拘束。腕も拘束。ピラミッドのミイラみたいな体勢にした上で、動けないようにしておく(床に刺さったままで)。


「すまん、柳葉少し———」


背後から抱きつかれたことで、言葉が止まる。


ベッドに座ったまま、背中に顔を埋めるようにして、彼女は言う。


「どうして、燕って呼んでくれなくなったの?」

「うん?あーーー……」


ミスに気づく。そりゃあ、名前呼びもしてた可能性もあるよな、幼馴染なんだから。

内心舌打ちしつつ俺は言い訳を口にする。


「あのだな……」

「やっぱり、あの日、私が満月を振ったから?」

「ん?」


雲行きが怪しくなって来たぞ?


「それで車に飛び込んで自殺「待て待て待て待て、一旦落ち着け」


腕を外し、正面から彼女の顔を見る。その目は涙に濡れていて、俺は状況が悪すぎると苦笑いする。


この『薄野満月』の死亡理由が失恋だとは……女々しい奴だったんだろうか?それが正しいかどうかは正直問題じゃない。

今の問題は彼女がそう認識していることだ。


少し躊躇。でも、これが一番手取り早いと考え、真正面から抱きしめる。


「……満月?」

「いいか?これだけは認識しておいてくれ、燕。お前は悪くない」


左耳に、囁きかけるような声で、脳を溶かすように、洗脳するくらいの気持ちで、お前は悪くないと繰り返す。


しばらくすると、涙声が元に戻り、落ち着いた様子。それを見計らって口にする。


「燕、頼みがある」

「何?」

「俺と共に、戦ってくれないか?」


手を差し出す。返答はなかった。でも彼女は迷いなくこちらの手を取った。


♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢


「で?どこへカチ込むのかしら?」


移動中、そんな風に問われる。


「すまん、説明が遅れた」

「謝罪は受け入れるから疾く吐きなさい」


そんな会話をしつつ。説明を行う。


「ここで一つ問題だ。なんであいつら、銃なんて持ってるんだと思う?」

「幽象が使えないからでしょう?」

「正解。つまり、エリア内での能力発動を無差別に無効化するタイプだ」


さて、ここで問題です。


「能力無効化が始まる直前。何か変わった事はなかったか?」

「……あの音ね?」

「ああ、正解」


ニヤリと笑い、続ける。


「おそらく音を媒体としてのフィールドだ。それを展開するのに都合のいい場所が学校にはあるじゃないか」


そう言いつつ立ち止まる。目線を追って、柳葉は納得したように呟く。


「放送室」

「そういう事だ」


さて、と呟きつつ、俺はしゃがみ込む。


「何をするの?」

「ちょっと見ててね?」


保健室から持ってきた包帯をガラス製のカップにつめ、消毒用アルコールをドボドボ注ぎ、消毒用の脱脂綿に着火。


「白梅から聞いた話なんだが、この学校は基本的にスプリンクラーが配備されているのだが、いくつか例外があってな」


あいつは、新しい場所に来ると、まず地図を見て、設備等を確認すべく歩き回る癖があるらしい。


「その一つが放送室。ここでは炭酸ガスを噴霧する事で消火を行うらしい」


包帯から煙が出てくるのを眺めてニヤリと微笑む。


「失礼しまーす」


言いながら放送室の扉を開ける。

中でキーボードの特定の鍵盤を押しっぱなしにしている男と目が合う。


燃える包帯の入ったガラス容器を置き。


「失礼しましたーー」


と言って戸を閉める。ついでにダクトテープで扉を目張りして、距離を取る。


数秒後、火災報知機が鳴る。そのまた数秒後。高い音と共に扉が切り裂かれた。


「………なかなかやってくれるではないか」


ガラス容器を蹴っ飛ばしながら出てきたのは口髭を生やした男。片手にはキーボードをもち、ベルトを肩にかけて吊るしている。


「どうも、平穏のために死んでください」

「そんな子だったかしら、満月君。私少し悲しいわ?」


満月は銃を、燕はそこらで拾った角材を構えた。


お読みいただきありがとうございました

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