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ごーれむ君の旅路  作者: れっさー
第1章 アラドンの街編
95/306

第95話 制圧した村で その4

2020年6月6日加筆修正。修復プラン周りの描写を追記。


 「ごーれむ君」の視界に表示窓(ウィンドウ)が開き、戦術AIが提示したいくつかの改修プランが示される。

 大型の盾を付けたタイプ、球形の肩アーマーを増設したタイプ、小型の障壁魔宝珠(シールド・オーブ)を増設し、装甲板ではなく魔導防壁での防御力を強化するタイプ、様々な、そして魅力的な改修案が表示されていく。

(まぁ、待て。慌てるな。)

 そう言って「ごーれむ君」は、ある改修プランを仮想空間に表示したのだった。

 それは、一見何の変哲もない地味な強化改修プランであった。

 全体のシルエットは、直方体を組み合わせた、「ごーれむ君」の身体のデザインと一致している。右肩装甲板と同じ様に、前後に分割された装甲板が肩の球体関節を挟みこむように装着されている。右肩と違うのは、全体に一回り大きくなっている点である。従来の装甲板に、追加で装甲板を貼り防御力を増加させるもので、一番ポピュラーな改修プランと言える。

【なんや、ありきたりなプランやんか。そんなんより戦術AIはんが出してくれたプランの方がええな。なんか、パワーアップ! って感じがするやん。】

 補助AI壱号がそう言ってくる。

【弐号は、壱号に同意・・・、待て? この数値は・・・?】

【参号から。「ごーれむ君」のプランの数値確認を要求。この数値は現実的ではない。】

 補助AIたちが、「ごーれむ君」の改修プランをそれぞれの演算領域で検討しなおし始める。

 「ごーれむ君」の出したプランは、従来の装甲板に追加の装甲板を貼り着けるタイプのプランである。防御力の増加は増加するが、増加装甲の分だけ重量は増える。それは様々な悪影響を機体に及ぼす。左腕だけでも、“肩こり”の原因となったり、腕の駆動速度を落としたりとの悪影響があるし、機体全体の重量バランスが崩れることは、魔導効率や機体制御について新たなプログラムを構築する必要がある。オートバランサーの各要素数値(パラメーター)を修正するのも地味に手間がかかるモノなのだ。

 しかし、「ごーれむ君」の改修プランでは、張り付ける増加装甲の厚みに比べ重量増加が驚くほど少ない。しかも防御力増加期待値は増加装甲の厚みに見合うモノであった。

【装甲は、土魔法によるセラミック装甲・・・。しかし、これでは重量が合わない・・・。「ごーれむ君」の改修プランの詳細の説明を要求する。】

 戦術AIも同様の結論に至ったようで、“スペックとしておかしい”改修プランについて説明を求めてきた。

(理屈は、簡単なんだ・・・)

 こう言って「ごーれむ君」は改修プランについて説明し始める。表示窓(ウィンドウ)に、増加装甲板の断面図が表示される。

【これは・・・、空洞?】

 断面図を検討した戦術AIが呟く。表示窓(ウィンドウ)に表示された断面図では、増加装甲板は3層構造となっており、外側から2番目は空洞で、一番外側の第1層と一番内側の第3層には何かが充填されていた。

【【【【これは・・・】】】】

 見たこともない内部構造をした装甲板に、補助AIたちが黙り込む。

【弐号は外側第1層と第3層に魔素充填剤が積まれている理由を質問する。】

(魔素充填剤が魔力干渉によって崩壊することで、魔力干渉波の影響が主構造材(メインフレーム)に及ぼさないようにするのさ。)

【外側第1層の充填剤が円すい状に抉られた状態で詰められているのはなんでや?】

(万一物理攻撃を受けたときに、装甲板が外側に向かって弾けることで衝撃を逃がす効果があるのさ。あとチョットだけど重量軽減効果もある。)

【空洞の第2層が薄い壁でいくつもの小部屋に分かれているのはなぜ?】

(薄い壁の間仕切りで6角形の小部屋を造ることで、重量を減らしながら装甲板全体の強度を保つことができるんだ。)

【そんなバカな・・・。参号から。確かに構造計算では強度の低下が抑えられている。】

 補助AIたちや戦術AIがてんでに疑問点を言い合い、「ごーれむ君」が一つ一つ筋道の通った答えを返していく。

【確かに、重量バランスではこれが一番いいな。】

 補助AI壱号が立ち直り、「ごーれむ君」の改修プランを見直す。

【こんな方法があったとは・・・】

 戦術AIが驚くより呆れるような声でつぶやく。彼の演算領域で計算したところ、強化予測は更に高い数値を出していた。

【参号から。装甲板の材料は現地調達で、被弾個所はその都度交換するのか?】

(そうだよ、せっかく土魔法が使えるのだから、増加装甲板は消耗品と割り切って現地で作り直せばいいんじゃない?)

 それも、補助AIたちの思考にはなかった。装甲を強化するという点では同じだが、他の装甲板同様強化した装甲板で耐え続けるという発想である。しかし、「ごーれむ君」のプランは、増加装甲板はあくまで消耗品であり、その場その場で作り直せばいいというコンセプトだった。他のプランと比べシンプルで軽量な増加装甲は、作成に必要な魔力も少量で済む。今後単機での稼働が続くであろう「ごーれむ君」の実情に合ったプランと言えよう。

【なぁ、この増加装甲板方式、全身でやったらエエんとちゃうか?】

【弐号は壱号に反対。いくら軽くても全身に纏えは重量の増加は無視できない。】

(補助AI弐号の言うとおりだね。流石に全身にはできないね。でも、状況に応じて追加装甲板を臨時に取りつけるのは、アリだとおもうよ。右腕だけとか、胸部装甲だけとか。不要になったら外してしまえばいいんだし。)

・・・・・。

【【【【・・・】】】】

・・・・・。

【このプランでエエと思うで。】

【弐号もこのプランの採用を支持する。】

【参号から。このプランの採用を支持するが、形状や装甲厚について再度細部を検討することを提案。】

 少し(1ミリ秒ほど)の間があって、補助AIたちは「ごーれむ君」のプランを採用することに賛成し始める。

(そうだね。これはあくまでコンセプトであって、実行するにはもう少し補助AIたち(みんな)の意見を聴きたいね。)

 そういって、「ごーれむ君」は、脳内会議を続けるのだった。



(つづく)

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