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ごーれむ君の旅路  作者: れっさー
第1章 アラドンの街編
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第92話 制圧した村で その1

 村の中央まで来た「ごーれむ君」は、背中に乗せているイヌ耳幼女(ミア)他の6人の娘(アレンカ)たちが「ごーれむ君」について来ているか確かめた。

(よし、全員いるな。次は、と・・・)

 右腕から補助腕(サブアーム)を展開し、先ほど止めた幌馬車の中に突っ込み、中を調べる。奴隷商人の幌馬車と違って、御者台から荷台へ移れるようになっている。(逆に、これが一般的な商人の幌馬車ではあるのだが)

【幌馬車内に脅威となる生物、見当たらず。】

 誰も潜んではいないようだ。「ごーれむ君」は補助腕(サブアーム)を展開したまま肘を曲げ、右上腕水平に上げていく。曲げた腕の先の握りこぶしが顔の横に来るようになると、補助腕(サブアーム)の先についている補助カメラをミア(イヌ耳幼女)の前まで伸ばし、彼女を見つめる。

「Go-remukunnsann,Dousitano?」

 ミアは青い顔をしながらも、補助カメラに向かって話しかける。ミアは「ごーれむ君」の背中に乗ったままであり、「ごーれむ君」がこの村で起こした惨劇を、一番間近で見ていたのだった。多くの兵士が焼かれ、家が壊れていく姿を見て、すっかり怯えている。

 「ごーれむ君」は右腕を水平に伸ばし、補助腕(サブアーム)の先の“手”を右腕に向けて「ここに乗って欲しい。」と何回か振る。

「KokoniNorebaiinone? Wakattawa!」

 ミアは思ったより察しの良い娘であった様で、「ごーれむ君」の意図をすぐに判ってくれた。震える足を動かして、背中から右腕に乗り移る。「ごーれむ君」は補助腕(サブアーム)を使って彼女を支えることを忘れない。

 ミアが乗った右腕を、「ごーれむ君」はそっと動かし、荷馬車の御者台に近づける。馬車に乗り移って欲しいことが判っているのだろう、ミアは大人しく腕から御者台に乗り移った。ここまでの動きでくじいた右足には負担をかけていないようだ。ほっとする「ごーれむ君」。

 ミアを降ろしてから上体を起こした「ごーれむ君」は、後ろについて来ているセイーヌに身体を向ける。右腕でミアが乗った馬車を指さすと、セイーヌにも「ごーれむ君」の意図が伝わったのだろう、

「みんな、あれが新しい馬車みたいよ。『ごーれむ君』はあの馬車を曳いてくれるみたい。」

 と、皆を馬車に乗るよう促してくれた。

(お嬢ちゃんたちはこれで良し・・・。周囲再検索! かくれんぼしている者はいないか確認するぞ!)

 アレンカたちが馬車に乗り込んだのを見届けて、改めて「ごーれむ君」は周囲の探索を戦術AIに命じる。

【了解、地形情報再読み込み、赤外線及び魔導探知・・・。見通し距離に敵勢力を確認できず。】

(広場の南側はどうだ?)

【建造物により探知範囲が限定、視線が通る範囲のみでの探査可能。敵勢力を確認できず。南方80メートルに門を確認、村人及び兵士が門から村の外へ離脱中。】

(逃げるヤツは兵隊でも村人でも構うな、村から出してしまえ。残ってのぞき見する悪い子はいないな?)

【探査可能範囲に敵性勢力を確認できず。】

 戦術AIが再度メインセンサー(モノアイ)で周囲を探索、村内に誰も潜んでいないかを慎重に調べなおす。

(よし、馬車の周りに魔導防壁を張りつつ、先ほど壊した建物のところで機体を修復するぞ!)

 潜んでいる者がいないことを確かめた「ごーれむ君」は、この村に留まり機体修復を行う旨宣言する。

【さっき壊した建物って、魔力反応があった集会場みたいなとこかいな? なんでソンナトコで?】

 補助AI壱号が修復場所について確認してくる。村の集会場と思われた建物は、「ごーれむ君」の魔導ガトリング砲によって、長方形の建物の半分が瓦礫の山となっている。なぜそんな処で修復魔法を使うのか、補助AI壱号には判らなかった。

【弐号は、修復魔法と魔導防壁の同時使用に反対。本機の魔力残量はそれほど多くない。】

【参号から。弐号に同意。修復魔法のみの使用でも本機の魔力残量では充分では無いと警告。この周辺は魔素が薄いので魔力充填には不向きと提言。】

(魔力はあるんだ、あの建物に。)

 「ごーれむ君」はそう言って、半壊した村の集会場を見た。その集会場には、南下している街道沿いに建てられていた、用途不明の橋梁構造物が繋がっていた。

 ズシン、ズシィンン・・・。

 ゆっくりと、「ごーれむ君」は半壊した建物に回り込んで壊れた側から近づいていく。

高さ3メートル程の平屋の集会場を覗き込むため、瓦礫をものともせず左膝をついてしゃがみ込み、中の様子を窺う。右腕を伸ばし補助腕(サブアーム)を伸ばす。3本に分かれた補助腕(サブアーム)の先の一つ、バーナーから青い火を小さく灯し、薄暗い建物内部を照らす。青白く照らされた内部には、2メートル程の女神像が祀られていた。

【天井は梁がそのままで屋根の下地が見えるわ。床はむき出しの土、つまり土間ね。壁は外壁の土壁が内張なしになっているわ。奥の内壁は木の板が張られていて、祭壇になっているみたいよ。

 祀られているのは・・・女神、だと思うけど何の像かしら? 像の左右上方に照明器具と思われる構造物があるけど、光源は何かしら?

 像の横の壁に文字らしい彫刻があるわ。文字と仮定して、本機のメモリには無い文字ね。彫刻のパターンから横書きだと推測できるわね。表意文字(イデオグラム)というより、表音文字(フォノグラム)の様ね。】

 生活AIが内部をざっと分析して報告する。

【こんな半分壊れた建物がなんやって言うんや?】

 補助AI壱号が怪訝な声?で訊いてくる。彼らの思考ルーチンにこのような建物を利用する方法は(当然だが)プログラムされていない。

(まぁ、見ていろ。・・・多分、この辺にあるハズだ・・・)

 「ごーれむ君」はそう呟きつつ、右腕から伸ばした補助腕(サブアーム)の“手”で女神像の下の壁のあちこちをコンコンと叩き始める。大人のこぶし大ほどの大きさの“手”は板で覆われた内壁を軽く叩き、その都度コンコンと軽い音が響く。

【なぁ、ソンナトコ叩いてどーなるっちゅーんや?】

【弐号は「ごーれむ君」の意図が理解不能】

【参号から。弐号に同じ。】

 怪訝を通り越し、あきれるような声になった補助AIたちに構わず、「ごーれむ君」は壁を叩き続ける。

 コンコン、コンコン、ごんごん!、ごんごん!、コンコン、・・・。

 そのうち、壁の一帯、ちょうど女神像の真下だけ叩いた音の響きが異なっていた。

(よぉし、ここだ!)

 母親に隠されたオヤツを見つけたいたずら小僧のような声を上げ、「ごーれむ君」は音の響きが異なる境界に沿って、補助腕(サブアーム)のバーナーで内壁を焼き切っていく。女神像の下、80センチほどの幅で2本の切れ目を入れた「ごーれむ君」は、右手の指先を伸ばし、右側の線に指先をめり込ませる。

 ばきばきばき・・・

 60センチほど壁に手をめり込ませたら、今度は左側も同じ様に手をめり込ませていく。もう一度右側の線に、今度は手首が埋まるほど壁に手をめりこませると、そのまま腕を掻き出すように、手の左側の壁をえぐり取っった。

 ベキベキバキベキ・・・

 掻き出された壁からは、双三角錐な高さ1メートル程の水晶のような物体が転がり出てきた。薄紫色の、淡い光を放ち、薄暗い半壊した建物の中を仄かに照らしている。

【高さ120センチメートル、最大幅80センチメートル、高魔力反応を観測。本機の魔導機関に類似。】

 戦術AIが分析結果を伝えてくる。

【すごい・・・、本機の5倍以上の魔力(エネルギー)含有量(ゲイン)を観測。】

 普段は機械的な戦術AIが、あまりの魔力量に驚きの声を上げる。

(コイツの魔力を使えば、魔導防壁を展開しながら修復魔法を使えるだろう? それだけじゃないぞ・・・。)

【弐号は「ごーれむ君」に同意。しかし、・・・】

【なんでこんなモンがこんな処に?】

 補助AI弐号の疑問を補助AI壱号が引き継ぐ。

(それは大事なコトじゃない。今はこの魔力の塊を拝借しようじゃないか?)

【参号から。完全に「ごーれむ君」に同意。】

(さて、それじゃ修復を始めよう。でもその前に、再度周囲を確かめて、隠れてるヤツがいないか調べるぞ。それから・・・。)

【了解、再探査開始・・・】

 「ごーれむ君」は、自分を修復する手段を手に入れた。傷ついた左腕の修復が始まる。



(つづく)

ごーれむ君一コマ劇場

 補助AI参号【参号から。なぜ“あんなモノ”があると推測したのか、思考ルーチンの開示を求める。】

 ごーれむ君(それは明日以降のお楽しみに。)

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