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ごーれむ君の旅路  作者: れっさー
第1章 アラドンの街編
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第9話 接触、困惑 その2

 「彼」は摘み取ったヤマオオショウブの塊を左手に乗せ、保護目標B(ウサ耳少女)に差し出した。

(気づいてくれよ・・・)

「彼」と保護目標は言葉が通じない。「彼」の意図を保護目標Bがくみ取ってくれるかは、「やってみなければわからない。」ことであった。

「Koreo,Watasitatini・・・?」

 どうやら伝わったらしい。保護目標Bは目の前の草の正体と、その使い道に気が付いたのか、おずおずとヤマオオショウブをつかむ。後は自分でできるだろう。他にできることはないか・・・。

【壱号から提案。敵Aの損傷は軽微。敵Aから有用な物資を調達することを提案。】

【弐号も同意。】

【参号も壱号の提案を支持。】

 補助AI達からの提案は真っ当なものだった。倒した敵3体のうち、敵Aの死体は比較的損傷が低い。何か所持品で使えるものがあるかもしれない。敵Aの遺体を調べる。上半身には大穴が開いていた。傷のわりに出血が少ないのは、傷口が焼かれているためであろう。腰に色々なポーチをつけたベルトをしている。

【敵Aの服装を調査。麻、木綿を材料とした厚手の布製の服。防具装備として胸部前面に革製のプロテクターを装備。背嚢バックパックなし。野営を想定しない、半日から1日の行軍を前提とした軽歩兵の装備と推測。】

【紋章、階級章の類と思われる装飾品、確認できず。規格量産品の装備、同様に確認できず。軍の正規兵である可能性は低いと推測。】

 戦術AIが敵Aの服装を調査、分析結果を伝えてくる。やはり戦闘を職業とした普人族であるようだ。しかし、皮鎧などの装備品が規格量産品ではない様子で、「彼」の知る正規兵とは様子が異なる。どこかの傭兵であろうか?と「彼」は敵Aの正体をつかみかねていた。

(いかんいかん、今は装備を保護目標Bに渡すことだな)

 敵Aからポーチやカバンをベルトごと引き抜き、保護目標のところへ運ぶ。保護目標B《ウサ耳少女》は自分の手当てを済ませ、保護目標A(イヌ耳幼女)の手当てをしているようだ。近くまで歩いて保護目病Bの傍に調達したベルトを落とす。

・・・今度は通じなかったようだ。保護目標Bは顔をかしげながら「彼」を見つめるだけである。

「Oneethiann,Po-tiwosirabetemiyouyo,Nanikayakunitatumonogaarukamo・・・」

 意外なことに、保護目標Aは「彼」の意図に気づいたようである。保護目標Bはハッとした表情をすると、敵Aのポーチを漁りだした。

 何かのタオルだろうか、布切れに草の汁を染み込ませ傷に押し当てていく。「彼」がしばらく作業を見守っていると、粗方終わったのだろう、保護目標Bは両手を布切れで拭いて立ち上がった。

「Koredetoriaezusiketuwaosimaitto,Miachan,Tateru?」

「Unn,・・・Itaa!」

 保護目標Bから話しかけられた保護目標Aは立とうとするが、バランスを崩して倒れてしまう。「彼」はようやく、二人の両手両足に鎖の枷がはめられたままであったことを思い出した。

(これ、邪魔なんだろうな・・・よし、取ってやろう)

【アカン!最優先事項『イエス・ロリータ、ノー・タッチ』に抵触するで!】

【弐号からも警告!許可なく女に触れると事案発生!】

【参号も警告!本機の出力では保護目標を握りつぶす可能性大!】

【鎖の枷は手でも引きちぎれるけど、補助腕のバーナーで焼き切ったほうが良いと思うわ。火傷をするから身体から少し離れたところで鎖を焼き切ったらどうかしら。】

 補助AI達が【事案発生!】と騒ぐ中、生活AIが穏やかな方法を提案してきた。「彼」は二人の枷を取り去ろうと、両手を保護目標Bに伸ばしたのだった。それがどれほど保護目標Bを恐怖させるかもわからず・・・


**********


 アレンカは今日何回目かの恐怖の極致に陥った。傷の手当ても終わり、魔の森を抜けだそうとした途端、「巨人」が彼女の身体をつかもうと手を伸ばしてきたのだった。

「・・・・・ッ!」

 恐怖で叫ぶこともできず硬直したアレンカの身体を「巨人」はその左手で掴み込む。

 慌てて掴まれた「巨人」の指を枷のついた両手で叩くが、「巨人」の手はビクともしない。レンガのように固い「巨人」の指にむしろアレンカの手が痛くなってきた。痛みと恐怖で泣きそうなアレンカに、「巨人」は右手を伸ばしてきた。

(殺される・・・!)

 硬直していることしかできないアレンカの目のまえで、「巨人」の右腕の内側が開き、何か棒状の物が伸びてきた。アレンカに向かってきた棒状のそれは、途中で上下3方向に分かれていた。

(???・・・)

 上下三方に分かれた棒のうちの上の棒は先端が球状になっており、まるで目玉の様だった。実際、「巨人」の(モノアイ)と同じ色の光が灯っていて、アレンカの顔を見つめている。目玉が動いて、視線?が下を向く。方向から、自分の手を見ているようだった。

 下の棒は先端が少し膨らんでおり、どこか花の蕾を思わせる円すい状であった。先端の膨らんだ部分は自由に動くのだろう、上下左右に首を振っていた。

 中央の一番太い棒の先には大人の手サイズの「手」がついていた。「手」といっても親指のほかは太めの、「指」というより近所の鍛冶屋で見せてもらったペンチのような鍛冶挟みに近い指が2本付いている。その「手」がむんずとアレンカの手かせの鎖を掴んだ。

「!」

 アレンカの手枷は手首が鉄の輪になっていて、両手を丁度肩幅ぐらいの長さの鎖でつながれている。「巨人」の手はアレンカの手枷の左手端を掴んだ。そのまま下の棒が近づいてきて、先端を「手」のそばの鎖に近づける。

 下の棒の先端がブゥゥンという音を立てて光り、アレンカの人差し指くらいの太さと長さの青い炎が出てきた。先端が動き、その炎をアレンカの手枷の鎖に押し当てる。ジジジ・・・という音を立てながら、10秒ほどで鎖を焼き切ってしまう。「手」が掴んでいない方の鎖がジャラジャラと音を立てて下にぶら下がる。「手」は掴んでいた鎖を放し、今度はアレンカの右手側の端を掴む。同じ様にして、「手」は右手側の鎖も焼き切ってしまった。アレンカの両手を縛っていた枷は、手首にはめられた輪っかと、そこから延びる10センチほどの長さの鎖だけとなった。

 両手が自由になったアレンカは、「巨人」に捕まれていることも忘れて両手を動かす。それぞれの手をバラバラに自由に動かせることを確かめると、アレンカは「巨人」に向かって話しかけた。

「鎖を切ってくれたのね。ありがとう!」

 普人族に捕まり奴隷として運ばれて以来、アレンカは久しぶりに朗らかな笑顔で礼を言うのだった。「巨人」はアレンカの言葉にかまわず、右腕を下に向けた。どうやら足かせの鎖も切ってくれるらしい。アレンカは暴れるのを止め、「巨人」が作業しやすいようにと、足を広げ鎖を張るのだった。


(つづく)



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