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ごーれむ君の旅路  作者: れっさー
第1章 アラドンの街編
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第49話 偵察隊との交戦 その5

「「・・・ッ!?」」

 馬車の御者台に座っていたウサ耳族のアレンカとカリナの二人は「巨人(ごーれむ君)」から物凄く強い魔力を感じて身をすくめた。

 彼女達ウサ耳族の頭頂から生えているウサ耳は、音を聞くための聴覚器官ではなく、ある種の魔導センサーである。彼女達ウサ耳族は、このウサ耳で周囲の魔力状況を感知し、外敵から逃げたり、狩りで獲物を探したりする際に利用してきた。

 ウサ耳族以外の人型(ヒューマノイド)に例えれば、自分たちの近くでいきなり大音量を浴びせかけられたようなものである。幌馬車の中にいる同じウサ耳族のステラにも感じられたのだろう、幌馬車の中から彼女の悲鳴が聞こえてきた。

 二人が御者台の上で頭を抱えて身をすくませながら「巨人(ごーれむ君)」を見れば、「巨人(ごーれむ君)」はいきなり立ち上がったかと思うと右腕を前に伸ばして轟音と共に火の玉を撃ち出し始めた。

 ドガガガガガ・・・!!!

「「キャーーッ!」」

 馬車の御者台に座っていたウサ耳族のアレンカとカリナの二人は強大な魔力反応に続き轟音を浴びて、さらに悲鳴を上げる。この轟音は他の4人にも聞こえた様で、幌馬車の中からも悲鳴が聞こえてきた。

 思わずぎゅっとつむった目をこわごわと開けてみたアレンカに見えたのは、火の玉を撃ち出すのを止め、地響きを上げながら走り出した「巨人(ごーれむ君)」の後ろ姿だった。

 ズシン、ズシィンと足音を響かせながら、お世辞にも軽快とは言えない足取りで走り出すと、「巨人(ごーれむ君)」は稜線を超えて姿が見えなくなった。

 しばらく「巨人(ごーれむ君)」らしき足音が続いた後、再び轟音が短く響き渡る。御者台の上で再び身を縮こませたアレンカは、2度目の轟音の後は静かになったので御者台を降りて「巨人(ごーれむ君)」の走った方へ坂を登り始める。

「アレンカ、ちょっと、危ないわよ!」

 御者台の上からそう叫ぶカリナの声も耳に入らず、アレンカは稜線から顔を出し、今まで見えなかった向うの景色を見た。

 

**********

 

 見えたのは、60メートル程前に佇む、「巨人(ごーれむ君)」の後姿だった。「巨人(ごーれむ君)」は街道の真ん中で両足を肩幅に広げ、丘の頂点に立っている。「巨人(ごーれむ君)」は何かを警戒するかのように、上半身を左右にゆっくりと向けている。左手を右ひじに添え、右腕を真直ぐ前に突き出している様子が見えた。

 「巨人(ごーれむ君)」の向こう、アレンカの立つ丘から150メートルほど離れたところに、何かが黒焦げになっていた。時折吹いてくる東風が、肉の焦げる臭いをかすかに運んでくる。

 アレンカの頭の中で、黒焦げになっている「何か」と馬に乗ったヒトが結びついた瞬間、アレンカは吐きそうになった。

(「巨人(ごーれむ君)」はコレに気付いていたんだわ・・・。さっきの火の玉でコイツを斃したのね・・・。)

 吐き気をこらえ、アレンカは少し離れたところにいる「巨人(ごーれむ君)」を見る。

(何かを探している・・・。コイツの仲間がまだいるのね・・・、っ! みんなに知らせなくちゃ! )

 アレンカは急いで坂をおり、馬車のところまで戻っていく。一息で馬車に戻る瞬発力は、ウサ耳族の特徴である。

「アレンカ、どうしたの?」

「前から普人族が来ていて、「巨人(ごーれむ君)」が斃したの! でもまだ仲間がいるようなの! 注意して!」

 突然馬車を降りたアレンカを心配するように声をかけるカリナに、アレンカは自分の見たことを説明する。

「ええと、「巨人(ごーれむ君)」には街道の向こうからやって来るのが判っていて、それで隠れていた。さっき飛び出していったのは、ソイツらを斃すため・・・。で、連中の仲間がまだこの辺にいるかもしれないってことなの?・・・信じられないわ・・・。」

 アレンカから説明を受けたカリナがそう呟く。とてもすぐに信じられる内容ではないが、現に「巨人(ごーれむ君)」は走り出して丘の向こうに行ってしまっている。

 「巨人(ごーれむ君)」が自分たちを見捨てたわけではなさそうなので、

「とりま、後ろにも伝えた方がいいんじゃない?」

 とカリナはアレンカを促した。

「そうね、後ろの5人にも教えなくちゃ。」

 半信半疑なカリナを他所に、アレンカは幌馬車の後ろに回った。


**********


 イヌ耳族のセイーヌは幌馬車の中、入り口にいた。幌馬車の中には、彼女の他に4人の娘が不安そうに座っていた。セイーヌ達は御者台に座るアレンカ達と同様、奴隷商人に捕まり連れ去られたのである。

 昨日、魔物の襲撃のドサクサに紛れ逃げ出したが再び捕まってしまったところを、なぞの「巨人(ごーれむ君)」に助けてもらったのだ。「巨人」に両手両足を縛る鎖も切ってもらい(切った鎖は何か役に立つかもと馬車に乗せてある)、この馬車を曳いてもらっていた。昨夜は街道沿いの広場で夜を明かし、日の出前に出発したのだった。

 助け出されたのは最年長のセイーヌ、セイーヌと同じイヌ耳族の少女ミア、赤毛赤目のドワーフであるソフィとロッタ、ウサ耳族のアレンカ、ステラ、カリナの7人で、幌馬車の中の奥側の元は檻だった(「巨人(ごーれむ君)」が入り口の鉄棒を焼き切ったのでもう檻ではないが)場所にソフィ、ロッタとミアの3人が、入り口にセイーヌとステラの2人が座っていた。入り口に2人が座っているのは、ウサ耳族のステラとイヌ耳族のセイーヌなら周囲を探りやすいためである。

 大きな街道を東に進み、日の出から1時間と少し経った頃だろうか、突然「巨人」はその歩みを止めた。御者台にいるアレンカから、どうやら「巨人」が何かを見つけたようだと言われ、何かあったらすぐに馬車から出ることができるよう、幌馬車入り口に皆で固まって座ることにした。

 永遠とも思われたが、実際には止まってから2、30分経った頃だろうか。突然、轟音が響き渡り馬車の中の5人は悲鳴を上げ、耳を抑え(うずくま)る。

 幌馬車の外から、「巨人」の足音らしき音が響き、ふたたび辺りは静かになった。

 何がどうなっているか判らないまましばらくすると、アレンカが馬車の後ろまで回ってきて彼女が見てきたことを伝えてくれる。

「・・・つまり、仲間がこの辺にいるかもしれないってことなのね・・・。みんな、聞いた? 怖い人がいるかもしれないから気を付けて。」

(え? そんな簡単に済ませちゃうの?)

 隣で一緒に聞いていたステラが拍子抜けするくらい、セイーヌはあっさりアレンカの説明を受け入れた。

「セイーヌさん、そんな簡単でいいんですか?」

 思わずセイーヌに訊ねたステラに、

「あら、アレンカちゃんが見てきたのでしょう? それに、さっきからかすかに肉の焼ける臭いがしているの・・・。「巨人さん」が何かを斃したのは間違いないんじゃない? 「巨人さん」が警戒しているってことは、まだ仲間が近くにいるってことよ。注意しないとね。」

とセイーヌは返した。

「注意しないと・・・って言われても・・・」

 困惑するステラを他所に、大きな足音が聞こえてきた。馬車のもとに「巨人(ごーれむ君)」が帰って来たようだ。

 馬車の前でジャラジャラと鎖が動く音がする。ほどなく、ステラ達を乗せた馬車はがたごとと音を立てて、再び街道を東に進み始めた。



(つづく)

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