第40話 偵察隊の出発 その2
アラドンの街の西門、街側の広場。
そこで出発の刻を待っていた守備隊の偵察隊に、軍兵団の第1大隊長のタルヤ・コウ士爵が軍兵団側の偵察隊を連れて合流してきた。
彼らは、原因不明で交通が遮断されていると判断された主街道の偵察のため、守備隊と軍兵団が共同で行う偵察隊である。臨時編成のため、隊長の名をとって「ティモ臨時偵察隊」という仮の名前が与えられていた。
近づいてきたタルヤ大隊長達軍兵団側の偵察隊に、見送りに来ていた守備隊隊長のエイダン・ラウ百人隊長以下、守備隊側の偵察員が一斉に敬礼する。
「エイダン隊長、間もなく出発である。今回はよろしく頼む。」
答礼しつつ、タルヤ大隊長はエイダン守備隊隊長に話しかける。
「ハッ! こちらこそ、よろしくお願いします。・・・大隊長自らお見送りですか?」
たかが偵察隊の出発に、大隊長クラスが出てくるのは珍しい。エイダン守備隊隊長はその旨を伝えると、タルヤ大隊長は
「うむ。今回の事態を代官が重く見ているという、デモンストレーションだな。」
と、西門の周りの野次馬達を横目に応える。それから声を潜めて、
「まぁ、ホラ、第一大隊は先月の魔物討伐で結構やられちゃってねぇ。再編成中なんよ。で、軍兵団は北門や南門からも偵察隊を出すからさ、小隊長や中隊長はそっちに行ってもらってるの。」
と、身も蓋もないことをぶっちゃける。
「はぁ・・・、大変なんですね。」
「まぁね。で、そっちの3人が守備隊からの偵察隊員かい?」
曖昧にほほ笑んだタルヤ大隊長は、少し真面目な雰囲気で3名の隊員を見た。
「はい。トーベ兵士長、ベヘマー兵士、ウーロフ兵士であります。」
タルヤ大隊長の問いかけに、エイダン守備隊隊長が守備隊側の偵察員を紹介する。紹介された3名は名前を呼ばれると同時に一歩前に出てタルヤ大隊長に敬礼した。
「うむ。よろしく頼む。こちらが軍兵団からの偵察要員だ。騎兵がティモ兵士長、ボリス兵士、ヒューゴ兵士。馬兵がヒャルマル兵士、オーサ兵士。今回は臨時編成の偵察隊として主街道の異常を調べてもらう。」
タルヤ大隊長は3人に答礼しつつ、軍兵団側の偵察要員を紹介していく。軍兵団側の5人も同様に、名前を呼ばれると同時に一歩前に出てエイダン守備隊長に敬礼する。
エイダン守備隊長は5人に答礼すると、タルヤ大隊長の隣に立つ。タルヤ大隊長に目配せすると、タルヤ大隊長は軽く頷き、8人の偵察隊員に大声で話し始めた。
「では、これより主街道の偵察を行う。今回は軍兵団と街の守備隊の合同で偵察隊を編成する。通常ではない編成であるが、この任務の重要性、緊急性にかんがみての編成である。任務達成を期待する!」
タルヤ大隊長の言葉を引き継ぎ、エイダン守備隊長が遠巻きに見ている見物人に聞こえるように大声で怒鳴る。
「前衛はティモ兵士長、ボリス兵士、ヒューゴ兵士の騎馬3騎! 中衛はトーベ兵士長、ベヘマー兵士、ウーロフ兵士の馬兵3頭! 後詰めはヒャルマル兵士、オーサ兵士の馬兵2頭! ティモ兵士長を隊長に、トーベ兵士長を副長とする! ティモ臨時偵察隊、発進準備!」
「了解! ティモ臨時偵察隊、発進準備! 全員、騎乗!」
エイダン守備隊長の号令に、ティモ兵士長が応え、8名の偵察隊員が一斉に馬に乗り込み馬上の人となる。最前線の兵らしく、騎乗の動作にも無駄がない。8人はその場で馬首を西門へ巡らし、いつでも出発できる体制を整える。ティモ兵士長が
「発信準備よし!」
とエイダン守備隊長に馬上から報告すると、エイダン守備隊長はすかさず、「開門!」と西門に詰めている守備隊員に命ずる。
ゴゴゴゴゴ・・・と重い音を立てながら、西門が開いていく。
タルヤ大隊長が、
「ティモ臨時偵察隊、発進! 武運を祈る!」
と命じると、ティモ兵士長が
「了解! ティモ臨時偵察隊、発進!」
と号令をかけ、8人の偵察隊はゆっくりと西門をくぐって行き、街の外に向かう。
「気を付けてな!」
「ちゃんと帰って来いよ!」
開けられた西門の両側には守備隊員たちが並び、偵察隊を見送る。偵察隊員たちに敬礼する者、声をかける者、帽子を振る者さまざまであるが、任務達成と無事の帰還を祈る気持ちに変わりはない。偵察隊員は左右の見送りの間をゆっくりと馬を歩かせ、左右それぞれに敬礼を返していく。
門を出た偵察隊員の8人は、一旦立ち止まり横一列に並ぶ。出陣の作法に従い馬首を前に向けたまま半身を右に捻り、彼らを見送っている人たちに敬礼を送る。それを見た見送りの兵士たちが、一斉に出発する偵察隊員たちに敬礼を返す。無事の生還を祈って。
一拍の間の後、敬礼を解いて前を向きなおしたティモ隊長が
「行くぞ!」
と右腕を高く上げ騎馬を走らせ始める。
「応!」
と残りの7人も右腕を高く上げティモ隊長に続き馬を走らせ始めた。
そんな偵察隊員たちに見送りの兵たちから歓声が贈られる。
こうして、日の出直後、アラドンの街の西門から8名の偵察隊員達が西に向かったのであった。
(つづく)
ようやく40話までたどり着きました。
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