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第1話

「なんで〜!?」

 僕は人ごみの中叫ぶ。

「お前、それ嫌味だぞ。」

「だって〜。」

 友にそう言われながらも、本当につい口にしてしまうくらい、ショックだった。


 今日は、高校受験合格発表の日。これまでの日々は本当に大変だった。友人の中では、ダントツに頭の悪い自分は、どうしてもみんなが第一希望にしている高校に一緒に行きたかった。本当に死ぬ気で頑張った。最後の1ヶ月はほとんど3時間睡眠を続けた。

 そして今日結果が出た。


 合格したのは、自分だけだった。



 友が、嫌味だというのもよくわかるが、私の目的はみんなと同じところに行くことだった。たいして、勉強が好きでもないし、この高校のどこが好きかと聞かれたら、言葉に詰まる。

 

「僕、辞退しようかな」

「お前ふざけるなよ!和也めっちゃ頑張ってたじゃんか!それを俺らがいないからって捨てるのもったいないよ」

「そうだよ、それにそれで同じ高校入ってもなんかこっちが気負う感じがするしな。」

「それに、高校自体も自転車で15分くらいしか離れてないし、すぐ遊べるよ。家も近いんだから関係ないって」


 自分は人見知りがひどく、中学入学時は一人でいることが多かった。そんな時、先生に陸上部に入ってみてはどうかと誘いを受けた。毎日をただなんとなく生活していた僕を気遣ってのことだろう。でも、そのきっかけをくれたのがうれしくて入部した。入部した同期は自分を入れて4人。人数も少ないことから本当に仲良くなった。クラスはみんな違ったが、昼ごはんと休憩も一緒にいることが多かった。僕は中学時代をその3人のおかげで楽しく過ごせたのだ。

 

 そんな友と離れるのは本当に辛く、卒業式に号泣したのは言うまでもない。


 卒業式の後、みんなが自分の家に泊まりに来た。


「おれ、高校入学したら絶対彼女つくるんだ〜。」

「おれら一つも女と関わってなかったしな。」

「おれら意外と毎年バレンタインにチョコもらったり、剛なんか告白されてたじゃん!」

「あの時は、付き合うとかよくわからなかったから、断ったんだ。友達と遊ぶほうが好きだったからさ。」

「お!いいこと言ってくれるね〜。和也も頑張って彼女作れよ!お前の高校かわいい子いっぱいだぞ。」

「それより友達ができるか心配で。。。」

「お前のいいところをみんなに見せれば、絶対できるって!俺らが保証する!!」

「うっう〜、みんな〜」

「お前泣かすなよ〜。」

「ほら和也、お前の好きなたこ焼きだぞ、食え。」

「うん。」


 このような感じで、僕は高校の入学式を迎えることになる。



 入学式当日。

「お母さん鼻が高いよ!まさかこんな進学校の入学式に出られるなんて。しっかり頑張って大学もいい所に入るんだよ。あ、塾とか行きたかったらすぐに言うんだよ。」


 母のテンションの高さは隣にいて本当によくわかる。母は、自由な人で僕が何かをしたいというまで押し付けてきたりはしない。そういう母が自分は大好きだ。


「保護者の方は、生徒の後方にある椅子に、新入生は、クラス順に席についてください。」


「じゃ〜母さん後で。」

「うん、終わったら電話してね。」


 母と別れて、自分のクラスを掲示板で確認する。自分は5組。先生は女の先生だった。一応クラスの人の名前を見るが、やはり知っている人はいなかった。中学からも何人かは来てるのだが一度も話したことがなく、名前もちゃんと覚えていない。


 体育館に入ると、上級生の人が「おめでとうございます」といいながら自分を案内してくれた。友人たちが騒ぐのもわかるぐらい、きれいな人が多いとやっと周りを見渡した。


 入学式が始まり、色々な先生のつまらない話が続き、あくびを殺すのに必死だった。


 

 入学式が終わり、クラス単位での説明のため教室に入った。そこで担任の真柴先生がみんなに自己紹介をするようにいった。するだろうとは思っていたが、全く考えていなかった。


「紺野中学から来ました、大谷和也です。部活は陸上部に入っていました。高校でまだ何をするかは決めていません。どうぞよろしくお願いします。」


 自分の番がくると意外と無難にまとめることができた。

 そして他のみんなの自己紹介を聞く。

 男子もやさしそうな感じやおもしろそうな感じの人が多く怖いと思う人がいなかったことにほっとした。女子も何人かかわいいなと思う人がいた。

 

 真柴先生が、一通り説明して、今日のところはこれで終わった。

 入学式が金曜日だったので、土日休んで、授業が開始される。

 友達が高校を散策しに行きたいというので、休みにも関わらず、高校に行くことにした。

 この桜ヶ丘高校はこの地域では一番大きな高校で、勉強だけでなく、部活動にもとても力をいれている文武両道の学校た。

 そんなこともあり、休日も部活でにぎわっていた。


「なんかすごい学校だな、自分の高校がしょぼく感じてきたわ」

「確かになんか空気が違うよな、和也がこの空気に染まるのか、おいちゃんさみしいね〜」

「あんちゃんもかなしいよ〜」

「ちょっと変な寸劇しないの!ただでさせ、関係者以外立ち入り禁止なのに入ってきてんだから。まあ、ジャージできたから気づかないと思うけどね。」


「うわ、あの人きれい!」

「どれどれ!うわ、まじできれいだ!!」


 と友人がいうので見てみると、そこはテニスコートだった。

 全部で6面あるコートでみんなが練習している。声が出ていてとっても活気がある。

 その中で、確かにひと際目立つ女性がいた。本当にきれいな人で凛とした感じがした。


「ほんとにきれいだね」

「お!なんか和也からそんな言葉が聞けるなんてお前も成長したな!」

「お前が恋をするのも時間の問題だな」

「はい、ちゃかさない!もう行くよ」

「あ、まって、ちょっとトイレ行くからここで待ってて!」

「あ、俺も!和也ちょっとここで待ってて!」

「わかった、早くね!」


 彼らは走ってトイレに行った。ふと、彼らはトイレの場所を知っているのかと考えたが、まあいっかとその思いを切り捨てた。

 彼らが戻ってくるまで、テニス部の練習をベンチに座ってみていた。

 テニスは少し興味があったので、男子の練習を見ていた。

 試合形式の練習をしているのだろうか。

 1対1で一人がサーブを打ったその瞬間、僕はぞくっと身震いした。

 サーブの速さにびっくりしたのだ。間近で見たのは初めてだった。

 

「かっこいい」

 

 つい声に出してしまった。それくらい惹きつけられてしまった。まだ試合は続いている。


「おまたせ!次、体育館行こうぜ!」

「おう。」


 友人たちがトイレから帰ってきたので、すぐに移動になったが自分はまだ見ていたい気持ちがあった。


 日曜日、どうしてもまだテニス部の練習が見たくて、一人で高校へ出かけた。すると、昨日とは正反対の静かさだった。誰一人いなかったが、テニスコートまでいけばボールとか落ちているかもしれないと、意地汚さがこんなところで出た。

 テニスコートの近くにくると、ボールを打つ音がした。テニス部はしているのかと思い、コートに行くと、一人で誰かが練習しているのが見えた。男子部員だ。他に人が周りにいなかったので、よく見えた。

 すると、彼がサーブを打った。


 その瞬間また自分は背筋がぞくっとした。


 昨日見た人とおそらく同じ人だ。自分はそれから20本くらい彼が打つサーブを見て、家に帰った。

 その日、お風呂のときも、寝る前そのサーブの映像を頭の中で再生していた。


「明日、見学させてもらおうかな」


 そう独り言を言いながら、僕は眠りについた。

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