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西の森までは平原を道なりに沿って歩き、徒歩で10分程にある3本の分かれ道を真っ直ぐにさらに15分ほど歩いた所にある。
森の中も整備された道が通っているが、森の先は崖になっていて行き止まりだ。
魔物もほとんど出ないので、1種の観光スポットにもなっている。
冒険者の姿も無く、観光地に武器を持って来た男2人は完全に浮いている。
ラースもそれに気づいている様で、先程から心持ち早足になっている。
「……なんて言うか、僕たちちょっと場違いだね……」
「仕方ないだろ。依頼なんだから……と、ここの道を外れて行くんだな」
整備された道からけもの道に入って行く。
すると先程までとは打って変わって薄暗く、かなり不気味になっていった。
しばらく歩いていくと、小さくひらけた場所に出た。
そこには小さな湖があり、その周りには草が生い茂っている。
「あれが毒消し草だろう。依頼された数は30だったけど、大いに越したことはないだろ。多めに持って行こう」
ラースも異議はないようで、早速作業に入る。姿勢を低くして草を摘んでいくのは中々きつかったが、途中からは集中し過ぎてしまい、気がついた頃には辺りはもう薄暗くなっていた。
「そろそろ帰ろうか。かなり遅くなっちゃったしね」
「ああ。いくら魔物が少ないといっても、暗くなると危ないからな」
行きとは違う理由で早足で帰ろうとはするが、行きと違って今は摘んだ毒消し草を持っている。
たかが草とはいえ、男2人が夢中になって摘んでいただけあって、かなりの重さになっている。
足元に気をつけながら歩いているのもあって、スピードが出ているとは言い難かった。
「うわあああぁぁぁ」
帰路を急いでいる途中、後ろから男の叫び声が聞こえた。
俺たちは思わず立ち止まり、顔を見合わせる。
「今のって……」
「叫び声だ。俺たちがいた所辺りからだろう。ここらに魔物はいないはずなんだが……」
「少ないって言うだけでいない訳ではないでしょ。それにもし本当に魔物に襲われてるなら助けないと……」
今にも走り出しそうなラースを慌てて止める。
この暗い中、今来た道を戻って行っても間に合わないかもしれない。それに……
「待て。冒険者になりたてで、魔物とろくに戦ったこともない俺たちが行って、どうするんだ? ましてや魔物の正体も分からず、辺りも暗く満足に戦える状況じゃないんだ」
「なら! 見捨てろって言うの⁉︎」
「俺たちが言ったところで被害が増えるだけだと言ってるんだ。お前にもわかるだろう?」
「っ!……すまない。君に当たってしまった」
「いや。いいんだ。それよりも早く帰って、ギルドに報告しよう。この地域に魔物が出たかもしれないんだ。このままじゃ一般人にも被害が及ぶ」
街へ向かって走り出す。けもの道を抜け、整備された道に戻る。その後は街へ着くまで悲鳴が聞こえることもなければ、魔物が現れることもなかった。
街について真っ先にギルドに行き、男の悲鳴が聞こえたことを報告した。
ギルドから職員が派遣されることになり、依頼の報酬については、また明日改めてと言うことになったので、俺とラースは一旦別れ、それぞれの家へと帰って行った。




