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「やあ。登録は出来たかい?」
カウンターを離れた俺に声をかけてきたのは、先程の青年だった。
「ああ。上手くいったよ。ありがとう。えっと……」
「そう言えば名乗るのがまだだったね。僕はラース。君と同じ新人冒険者だ」
よろしく。と手を差し出してくる。
「俺はトーヤだ。こちらこそよろしく。ラース」
俺はその手を握り、握手した。
「ここで会ったのも何かの縁だ。一緒に簡単な依頼でも受けてみないかい?」
ラースはそう提案してきた。冒険者になったはいいものの、いきなり1人で依頼を受けるのは少し躊躇っていたらしい。
「こちらから頼みたいくらいだ。確かカウンター横の端末から受けられるだよな?」
さっきのカウンターの隣には、5つ程、胸より少し低いくらいの大きさの端末が設置されており、それらには敷居があり、隣の画面は見えないようになっていた。
「最初だから簡単そうな採集依頼でいいよな?」
ルーキーランク 採集依頼で検索をかけると、10個ほどの依頼が表示された。
ルーキーランクの依頼だけあって、街で売っているポーションの買い出しや近くの平原での薬草採集などがほとんどだ。
「ただの買い出しじゃつまらないから、この西の森にある毒消し草採集依頼でいいよな?」
構わないよ。と言う返事が返ってきたので、受注ボタンを押す。
この依頼は受けて3日以内に達成報告を行わない場合、違約金2000ゴドールが発生します。よろしいですか? と言う注意が出たのでOKを選択。
「受注出来たみたいだね。採集依頼だけど念の為、武器を買っておきたいから、先ずは武器屋に行こうか」
「いらっしゃい。初めてのお客さんだな。新人冒険者か?」
武器屋はギルドの隣にある。武器屋だけでなく、防具屋や道具屋など冒険者に必要な店は大体並んでいる。
武器屋の店主はガタイの良い男で、いかにも屈強な戦士でした。と言うような容貌だった。
「はい。初心者用の扱いやすい武器ってありますか?」
ラースがそう聞くと、こっちだ。と店内を案内してくれた。そこは短剣や短槍などの小振りな武器のコーナーだった。
「武器に慣れてないならこういう武器で使いやすい種類を探して行くのが1番だ。攻撃力は低いが軽くて扱いやすいし、何より安いしな」
ガッハッハ。と見た目の通り豪快に笑う。
適当に相槌を打ちながら品物を眺めていく。
俺は両親が両手剣と細剣を使っていたので、その訓練を軽くしていたことがある。
なので能力値と相談してそのどちらかにしようとしていたのだが……。
攻撃力の方が俊敏よりも高かったし、両手剣にしようかな。
初心者向けの両手剣と細剣なら値段は、両手剣の方がやや高いが、店主の言う通りとても安かった。
「すいません。これください」
俺が買うものを決めたと同時に、ラースの声が聞こえた。
彼は無難に両刃の長剣に決めたようだった。
俺も買い物を終え、店を出た。
念の為、隣の道具屋で回復薬を買う。
「さぁ、準備も出来たしそろそろ行こうか」
俺たちは、初の依頼をクリアすべく、街を出て西の森へと向かった。