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森の子  作者: 鷹口 投舞
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第8話 試練 その1

オリヴィアに貰った矢を矢筒に補充し、準備は整った。さて、いよいよ親父と長老の下へ行く時だ。


「ノア、準備は良いな?」

「もちろん!」

「じゃあ、行くぞ!」


短い言葉を交わし、一緒に長老が住む宮殿へ向かった。

宮殿は、神秘の森の手前にあり、森へ続く門の役割も兼ねている。定期的に行われている会合の場にもなっていて、中々の広さだ。

それに、長老のことを見たことがある人はあまりいない。子供の間では、実は鬼だとか、幽霊だとか、男の真似をした女だとか、いろんな話で盛り上がる。

しかし、少し恐ろしい噂も立っていた。夜な夜な宮殿から呻き声のようなものが聞こえてくる。俺も数回、聞きに行ったことがある。1人じゃ怖くて、毎回親父と一緒に行っていた。しかし、何も聞こえなかった。

懐かしいな、騙されたと思って、随分と近所の奴らに怒ったもんだ。

そんなことを考えていると、あっという間に宮殿にたどり着いた。親父が言う。


「長老様、ただいま参りました。鬼三でございます。私のせがれを連れて参りました。必要なことは話してあります。いつでも始められましょう。」

「そうか、ご苦労であった。貴様はこちらへ来い。他のものは既におる。それから、五鋼を読んで来い。」

「かしこまりました。」


そう言うと、親父は俺の頭をポンっと触った後、宮殿の中へと消えていった。

親父は自分のこと『きざん』って言ってたぞ?カードネームみたいなもんか?それに『ごこう』って人が来るみたいだな。

そんなことを考えていると、宮殿の中が少し騒がしくなった。

いよいよ、テストが始まるのか?

長老の声が聞こえてきた。中から声を張り上げていると思うと、なんかウケるな。


「小僧、貴様はまだ試練をクリアしていない、子供だと聞いた。したがって今回のテストは試練と同等に扱うものとする。内容はこやつが説明する。」

「よう、小僧、久しぶりだな。あん時はやってくれたな〜。」


中から、大柄の男がぬっと出てきた。


「あ!あの時の!」

「覚えていたようだな。お前に足を射抜かれた時は、焦ったぞ。敵に味方するとは思わんかったからな。グワッハッハ。」


豪快に笑う男は、洞窟で見た髭男だった。あの人、野党かなんかだと思ったけど、守護者だったのか!ヤバいことしたかな?

そう思うと、身体中からドバッと汗が出てきた。


「小僧、そう緊張せんで良い。儂がまだまだ未熟だったからな。さて、そんなことはどうでも良い!むしろ、アレがあったからこその、この試練だからな!」


なんか、良い人そうだ。それに、俺の放った矢のお陰で試練が受けられる??


「どういうことですか?」

「儂は五鋼と言う。役割は"砦"だ。守護者の皆を守る役割だな。その俺に僅かとはいえ、ダメージを負わしたことが評価されたのだ。」


そういうことか、納得だ。ていうか、ダメージ少しだったの?確かに怪我してるようには見えないけど、手応えはあったのに……。壁は高そうだな。


「まぁ、そんなことはどうでも良い。今回はただの試練ではない。守護者選定の試練だ。内容を説明する。」


試練の内容は以下の3つだ。

まずは、1.魔法の素質判断

どうやら俺たち『森の民』の限られたものだけ、魔法なるものが使えるらしい。これが使える才能がある事は基本らしい。

次に、2.実践技能

これは言わずもがなだ。弱ければ生きていけない。

そして、3.適性診断

ペーパーテストと口頭試問で判断されるらしい。何を調べるかは秘密だそうだ。そりゃそうか。

試練は、1番から順に進んでいくらしい。


「説明は以上だ。それでは中へと進みたまえ。」


いよいよか……。ドキドキしながら、俺は宮殿の中へと足を踏み入れた。



宮殿の中には、髪と耳が長い、すらっとした人が立っている。


「ようこそ、第1の試練へ。」


声を聞いても、男か女かわからない。


「私の名は二夢。早速始めようか。気分が悪くなったら、座っても良いからな。」


それだけ言うと、二夢さんは微動だにしなくなった。確かにそこにいるのに、そこには居ないかのようだ。気配がまるで感じられない。

一体何を見られているのだろうか。しばらく時間が経っても、何も起こらない。これが本当に試練なのだろうか。なんだか心配になってきた。

唐突に、二夢さんが喋る。


「小僧、私の言う通りの動きをしなさい。」

「………!」


返事をしようとしたが、何故か声が出なかった。


「まずは、そこにあぐらをかいて座りなさい。」


俺は普段のように、あぐらをかいて座る。ホントに、何を見てるんだコレは?


「次に、立ち上がって、こちらへ向かって歩いてきなさい。私に触れることができれば、合格です。」


え、その程度か?余裕じゃないか。俺はスッと立ち上が……あれ、身体が、重い…。なんでだ?しかし、なんとか立ち上がる。二夢さんの方を見ると、関心したようにこちらを見つめている。

目標へ向かい、歩を進める。最初は、それほどでもなかったが、半分くらい歩いたところで、先ほどのような身体の重さを感じる。汗もダラダラと吹き出てくる。

それでも、一歩一歩積み重ね、二夢さんに手を伸ばせば届くくらい近づいた。今にも押し潰されそうだ。しかし、触れば合格。何が起きているか分からないが、とにかく触らなければ…!

油のキレた古い機械のような動きで手を伸ばす。もう少しで触れる!あと少し…指を伸ばせば……!


トンっ

なんとか、触れた…!と思う!

バフンッ

そう思った瞬間、二夢さんが煙と一緒に消えた。どうなったんだ…?


「合格ですね。おめでとう。」


そんな声が聞こえてきた。ホッとすると同時に、ガクッと膝をついた。

めちゃめちゃ疲れたーー!!!内心で叫ぶと、長老の声が聞こえてきた。


「続けて、二つ目の試練だ。休憩してる暇はないぞ?」


……この試練、キツすぎる!!

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