第7話 誓い
さて、腹ごしらえも済み、俺は親父と一緒に長老が住む宮殿に向かうべく準備
していた。
「ノア、弓の手入れとかもちゃんとしとけよ。矢もしっかり持参するんだぞ。」
「それくらい分かってるって!これからやるとこ!」
まったく、いつまでも子供だと思いやがって。
さてさて、弓の弦は大丈夫だ。弦もしっかり張れているし、綻びもない。矢筒の中の矢もまだまだたくさん………。
あれ?ないぞ?なんで?ヤバい、あと6本しか入ってない……。テストに向けては大丈夫な気もするけど、念には念を入れておこう。
「俺、オリヴィアん家行ってくる!矢貰いに行くわ!」
俺はそう親父に叫びながら早速家を出た。遅くなったらやばいからな。
「おい!ノア!今行ったらヤバイかもしらんぞ!おーーい!………大丈夫か、あいつ。」
父親アレンの心配は、息子ノアには届くはずもなかった。
父の心配もつゆ知らず、ノアは勢いよく外を掛けている。
「あれ、今朝は天気良かったのになんか曇ってるなぁ。」
曇天の空が広がり、辺りはまだ昼にも関わらず、薄暗くなっていた。そして、ノアはオリヴィア家の前にたどり着いた。
俺はノッカーを叩く。
カンカンッ
「すみませーん。おれです、ノアでーす。オリヴィアいま「ノアーー!!!」
バンッ
勢いよく扉が開き、俺の顔面にぶつかった。
「イテー!!もっと静かに開けろよな!」
「っるさいわね!あんたが集落の外に行くかもってホントなの!?もしかしたらもう会えないかもしれないとか!もうここにすら帰ってこないかもしれないとか!私の矢、ずっと使うって言ってたじゃない!………グスンッ、あたしの…あたしの作った矢……使って集落一の狩人になるって、言ってたじゃん…。」
オリヴィアは凄まじい勢いで喋ったかと思ったら、目にいっぱいの涙を溜め、泣き出してしまった。オリヴィアが泣いたのはいつ以来だろう…。
どうやら、俺が『森の守護者』になるかもしれないと聞いて、心配になったらしい。ローランさん達に聞いたんだろうな。
「ごめん…。」
「ごめんってなによ…。そんなん言って欲しくないよ。私にはノアの口から話して欲しかった。」
それでもやっぱり、俺の中には謝罪の言葉しか見当たらなかった。
オリヴィアは涙を拭きながら言った。
「もういいわ、ノアだもんね。どーせ別れを言いに来たんじゃなくて、矢が足りなくて取りに来たんでしょ!ちょっとここで待ってなさい!」
走って家の中へ戻って行った。
待ち時間がすごく長く感じる。やはり申し訳なく思ってしまう。たしかに、昔、あんなことを言った気がする。オリヴィアの為にも、どんな仕事か分からないけど、早く一人前になって、早くもどって来れるようにならなくちゃな。
そんなことを考えていると、オリヴィアの足音が聞こえて来た。またしても、勢いよく扉を開けていた。
「お待たせ!これ、私の作った矢!さっきはああ言っちゃったけど、実は気合い入れてたくさん作ってたんだ。修行前にもう一度寄ってよ、出来るだけ作っておくから!」
「ありがとう、俺にはこの矢が一番しっくりくるよ。また寄らせてもらう!テスト頑張ってくるよ!」
そう言うと、俺は親父の下へと急いだ。やばいやばい、遅くなっちゃったな。身体を温めるついでにしっかり走るか。
そんなノアの背中を見つめながら、オリヴィアは呟いた。
「やっぱり、テスト受けないって選択肢はないのね……。ノアらしいわ。」
次回、いよいよテストです。
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