第6話 秘密 その2
親父は静かに、そして淡々と今まで秘密にされてきた事を語り始めた。
俺たちの集落は総勢約100名で構成されている。男女比は1:1だ。また、親と子供は血が繋がっていない。誰かが死ねば、北にある神秘の森と呼ばれている場所にある祭壇に、何故か赤ん坊がいるらしい。まさに神の恵みだ。
この赤ん坊は、長老が親を決めていく。親は、集落内のカップルから、適性が確認されて、子供を任せられると同時に結婚も認められるシステムだそうだ。
つまり、この集落は実に閉鎖的で、特殊な空間なのだ。そして、森の外は外界と呼ばれている。外界からは森のことを迷いの森と呼んでおり、この集落のもの以外は、ここまでたどり着くことが出来ないらしい。
ここまでは、大人になると同時に知らされることだそうだ。そしてここからは、ごく一部の人のみが知っている話だ。
そもそもなぜ、あの女はここまで来られたのか。それはやはり、俺のせいらしい。
時折、どうしても外界から人がやってきてしまう場合があるそうだ。理由は不明だそうだが。そうしてやってきた人を親父を含めた超一流と呼ばれる狩人で構成される部隊、5名ほどが所属する、『森の守護者』が外界に誘導し、それでも戻らなければ排除、殺してしまう。
戻らない外界の人、外人の目的は俺たちだ。俺たちは『森の民』と呼ばれており、伝説になっている。驚異的な身体能力と知識量を持つことができる民族で、神に愛されているとか、神の子だとも言われている。子供ですら、通常の外人を凌駕する能力を持っている。そんな俺たちを守るのがこの場所で、『森の守護者』がこの場所を守っているのだ。
親父は、俺が思っている以上に凄まじい狩人だったのだ。
そして、あの女は外人の中でも、『森の民』を最もしつこく狙う国『エメド』の刺客だった。顔と、俺には分からなかったが、特徴的な身のこなしで分かるのだとか。
俺はとんでもないやつを招き入れてしまっていたようだ…。
そして親父は、一息タメを作ってから言った。
「ノア、お前が『森の守護者』となれるかどうか、試験することが決定した。これから一緒に長老の下へ行く。他の守護者もいるが、これから見ることは他言してはならない。お前にはもう拒否権はないからな。」
なんでも『森の守護者』という組織は存在を知っているものが殆どいなく、ましてそのメンバー全員を知っているのは、長老と守護者達だけだそうだ。
ローランさん達は親父が集落の外に出ているとだけ聞いていたそうで、口があんぐりと開いている。
俺は、緊張と恐怖が入り混じる中、どこかワクワクもしていた。
「分かったよ親父、俺は守護者の一員になりたいし、願ってもない。早く行こうぜ。」
「まぁ、そう慌てるな。テストは陽が下がってきてからだ。長い話だったしもう昼だ。まずは腹ごしらえをしよう。飯を食いつつ、テストの簡単な説明をする。あ、そうそう、あとこれから俺には敬語を使え。守護者は実力主義の上下関係があり、これは絶対だ。ちなみに俺はナンバー3だな。」
「分かっ…分かりました。ではまずメシ…お昼ご飯にしましょう。」
「ハハハッ、まぁまだ慣れないだろ。意識しなくてもそのうち勝手に身につくさ。テストをパスできれば、思い知らされるからなぁ」
親父の笑みがいつになく恐ろしかった。そして、踏み入れてはいけない領域へと入っている気がしてならない。一体俺、どうなっちゃうんだろう………。
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