表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
森の子  作者: 鷹口 投舞
4/11

第3話 夕暮れ

今回は短めです。

「はぁ、はぁ、はぁ……、なんとかここまで来れたか。」


俺は集落の入り口付近にまでやってきた。試練のために訓練を積んできた。そのおかげか、大分早くここまで来れた。あの女を撒くことが出来ただろう。

少し休憩しよう。手に持った弓を横に起き、近くにあった巨木にもたれかかった。


「どうしよう、オリヴィアのためのものが何もない。どう説明したらいいものか…。」


そう呟きながら、俺は息を整えた。そろそろ戻らなければ。日も傾いてきた。疲労感を覚えながら、ゆっくりと腰をあげる。

ビュッと風が吹く。何の気なしに、俺は上を見上げた。するとそこには…。


「坊や、おまたせ。足速いのね。あたし疲れちゃったわ。」


俺を捕まえようとしてきた女がいた。すぐさま立ち上がり、弓を拾…。


「あれ?俺の弓は?矢もない!」


焦る俺に、ゆったりとした口調で喋りかけてくる。


「ふふ、本当に疲れてたのね。ここにあるわよ。ちょっと借りちゃったわ。」


女の背には、ノアの弓矢があった。俺はなぜ気づかなかったのだろう。いくらなんでもおかしい。


「早く返しやがれ!どんな汚い手を使ったんだ!」


俺は強く叫んだ。

すると女はやはり、ゆっくりと口を開いた。


「あら?気がつかなかったのかしら?あたしはちゃんと自分で拾ったわよ。この程度も分からないなんて、坊やではなく、赤ん坊だったかしら?」


おちょくってきた。腹が立った俺は、木を駆け上がる。ぶっ飛ばしてやる。


「まぁ、木を走って登ってくるなんて、そんなことができるのね。あたしともっと話しましょうよ。余裕を持つべきよ。」


女は俺のことを嘲笑いながら、そう言った。もうダメだ、一発顔面に決めてやる。そう固く決意した俺は、拳に力を込める。


「くらえ、ブス!さっさと俺のを返しやがれ!」


女の眉がヒクついた。

俺は渾身の力を込め、殴りかかった。よし、入った。そう確信した俺は、何故か中に浮いていた。と思ったら、苦しくなる。息ができない。


「坊や、あたしに向かってブスとは良い度胸してるわね。」


そう言いながら、女は俺を地面に投げつけた。


「ガハッ!……げほっ、げほっ、こほっ、なんて力と速さだ。お前何もんだ!」


無様にも顔面を強打した俺は、すぐさま振り返った。しかし、女はいない。代わりに、俺の首元にはオレンジ色に光る刃が見えた。そんな余裕は無いのに、夕暮れの空に見とれてしまった。


「まぁ、いいわ、坊やの住処もこの辺でしょ。道案内ご苦労様。死んだら良いわ。サヨナラ。」


ザシュッ、ドサッ。

草木がより赤く染まった。

俺の手も真っ赤になっていた。まるで太陽が手の上にあるかのように。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ