第2話 誘い
「はぁ、はぁ、はぁ。 ………なんとかここまで来れたか。」
俺はもうすぐ、村の建物が見える辺りまでなんとか走ってきた。きっとあの女を撒くことができただろう。しかし、プレゼントはおろか、オリヴィアの頼みであるキノコすら持って帰れていない。どうしたものか…。
そう考えていたとき…
「あら、坊や、こんなところで休憩しているの?期待はずれはやめてよ〜。」
バカにしたように笑いながら、あの女の声が聞こえてきた。
「なっ!!嘘だろ?!確かに撒いたはず…。どうして俺のスピードに追いつけるんだ!」
かなり木々の生えた森であり根も強く張っていて、この集落の住人ですら、走ることすらままならないのだ。どう考えてもありえない。
「しょうがないわねぇ、それくらいなら教えてあげるわ。あたしは、坊や達を探しにきたのよ。そのために訓練したのだから、これくらいできて当然よ〜。」
「む?どういうことだ?初めから俺たちが目当てだったのか?」
「そう言ってるじゃない。しょうがない、さっき洞窟の中ではしなかった話、今からしてあげましょう。事情を説明しなきゃ、また逃げられちゃいそうだし。」
どうやら、俺を捕まえようとしていたのは、誤解だったらしい。分かったことは、まず、女の名前がアリアーゼだということ。アリアと呼べば良いらしい。そして、俺たちは『森の民』と呼ばれ、集落の外では伝説となっている民族らしい。誰も集落の外に出ないし、外から人も来ないから、知らなかった。
俺たちは外の人ー外人と呼ぶとするーよりも圧倒的に身体能力が高く、俺でも外人からすると超人の域にいるとのこと。
外人たちは、戦争をしていて、アリアの属する軍は戦況がとても厳しくなってきた。そこで、伝説を頼りにこの森を目指してきた。しかし、この森は迷いの森と呼ばれ、いつの間にか、入り口に戻ってしまう。困っていたときに、ふと洞窟が目に入りその中に入って行くと、あの髭男のばったり会った。そこで襲われたらしい。
今まで見つからなかったのは、あの空間が暗くて上があるとは分からなかったことが大きな要因らしい。あのとき、アリアが光らせたのは、閃光玉というものを使ったとのことだ。
そして、俺と出会えたことで、『森の民』と交渉しようとしたんだとさ。そして…。
「だから、あたしを坊やの村に連れて行って!長老さんと交渉させて欲しいの!お願い!」
俺には、判断が難しいな。今まで外人が来なかったという事は、何かある気がする。でも、アリアはとても困っているようだ。………まぁ、何かあっても俺より強い大人たちがいっぱいいるし、大丈夫か。
「よし、わかった!アリアを連れて行く。ただし、無礼なことをしないと誓ってくれ。」
「ええ、もちろん誓うわ。」
「もうすぐ村だ、俺の前を歩け、俺が道を指示する。変な素振り見せんなよ!」
「まぁ、あたしのこと信用してくれないのね…悲しいわ…。」
意外と、この坊やも警戒心あるのね。もっとポンコツかと思ったわ。まぁ、集落の中に入りさえすれば、なんとかなるわ。でも一応、取り入っておくに越した事はないわね。味方は必要だもの。
「当たり前だろ、一応外人で、知らん奴だからな!」
アリアは、体を近づけながら言った。
「あら、あたしはもう仲間だと思ってるけど?坊や優しいもの!」
「いいから、早く行くぞ!」
なんだ、この女、グイグイくるなぁ。オリヴィアに見つかったら誤解されちゃうよ。
「えぇ、早く行きましょ!」
ふふ、この子やっぱりちょろいわね。このまま上手くいきそうね。