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森の子  作者: 鷹口 投舞
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第1話 洞窟の冒険

俺はオリヴィアに頼まれて、ついでにプレゼントも見つけようと、森にやってきた。すぐに、最初の目的であるキノコを見つけた。しかし、プレゼントは森の奥まで行かないと見つけられない。帰り際にキノコを採って帰ろうと思う。


という訳で、俺は森の奥へと足を踏み入れた。

「…む?何か違和感が、あるような気がするな…。」

いつも1人で訓練のために来ているもりだ。慣れているはずなのに、どこか恐ろしく感じてしまう。でも、まぁ気のせいだろう。念のため、背負っている弓を手に取り、歩みを進めた。


俺がプレゼントしようとしているのは宝石の原石だ。森の中の洞窟にある。集落の女性達にはとても人気がある。物作りにも使えるし、削り出して宝石にするのも、自分でやりたいものらしい。流石は道具作り達だ。

そろそろ、目的の洞窟に着く頃だ。


洞窟の入り口にたどり着いた。特に、トラブルもなかった。一匹の動物とも出会わなかった。やっぱりおかしい気がする。ここまで来たら、シカなどを見かけるはずなのに。


「ん?人の声が聞こえるな…。」


洞窟の中から、音が反響して、聞こえる。誰か俺以外にも、原石を採りに来たのだろうか?そんなことを考えながら、奥へと進んで行く。

この洞窟に入るのは初めてだが、なるほど、これは綺麗だ。自発的に発光する鉱石がそこかしこに埋まっている。夜空の星のような景色が広がっている。周りを見て感嘆しながら、気を引き締めつつ、道を進んで行く。

少し進むと、ひらけた空間が見えてきた。筒状の道が、卵の中央に刺さったような形の洞窟だった。


「誰かいるとしたら、この下か。奥に進んだら音が聞こえなさそうだしな。しっかし、急に暗くなったなぁ。」


卵型の空間には、さっきの発光する鉱物が確認できなかった。


「どうやって降りようかなぁ。もう、入り口の石拾って、帰っても良いかな、アレもキレイだったし。」


そう思い、引き返そうとした時…


「きゃあああぁぁぁぁ、助けて‼︎だれか、たすけて!!!」


物騒な悲鳴が聞こえた。


「馬鹿で欲の深い女だ、俺たちの獲物を横取りしようとした上、誰もいないこんな場所で助けを求めるとはなぁ!!!」


続けざま、男の野太い声が聞こえた。なんか、女の人も悪いことしたっぽいけど、見捨てるのも居心地が悪い。

だが、何も見えないからどの辺にいるのか分からないし、深さも分からないから、飛び降りるのもないな。

そんな事を考えていると、突如、強い光が瞬いた。


「うぐわぁぁぁぁ!!目が痛ぇ!」

「隙を見せたあなたが悪いのよ!」


そう、男と女の声が聞こえた。俺の目も復活した。さっきの光の影響か、洞窟の壁が光っていて、周りを見れるようになっていた。下を見てみると、筋骨隆々の髭男と、華奢な姿の髪の長い女が見えた。その女が、こっちを見た。


「ちょっとそこのあんた!あたしを助けなさい!早く!ぼけっと見てないでよ!」

「助けろって言われたってなぁ、どうしようか。俺は弓矢しか持ってないぞ!」

「なんでそんな軽装なのよ!」


「おい!女ぁぁ!よくもやってくれたなぁ!」

髭男の目もようやく復活したようだ。とりあえず、コイツの足止めをしとけば良いかな。弓に矢をつがえ、男の足を狙う。結構距離はあるが、弓には自信がある。 いつも鍛えてるし、風もないしな。

力いっぱい弓を引きしぼり…

バシュッ! グシャッ!


「ぐわぁぁぁあ、痛ぇぇ!腕がぁ!!!」


どうやら、少しミスって腕に当たったようだ、引き続き矢を放ち、足を狙う。

ドスドスッ


「ウグッ!くそっ!仲間がいたのか!」

「あんたやるじゃない!さぁ、早く助けてよ!」


女が叫んでいる。しょうがない、上手くいくか分からないけど、やってみるか。


「おい!お前体重何キロある?」

「なんてこと聞くのよ!そんな状況じゃないでしょ!」

「いいから、早く!大事な縄が切れるかも知らねぇだろ!」


キノコを縛っておく予定だった縄だ、わりかし細いし、ちぎれたら困る。余談だが、採取予定だったキノコはとにかくでかい。だから、縄でくくって肩に担いで運ぶのが一般的だ。


「39よ!いけるでしょ!」


それくらいならいけるだろう、それにしても華奢だな、よくあの男から逃げられたものだ。


「良いだろう!縄を垂らして踏ん張っとくから、上がってこい!後ろから男

が這ってきてるぞ!」

「分かった!」


割とすぐに女は上がってきた。意外と深くなかったのかもな。なんとか女を助けることができた。


「おい、おまえはなんであんなとこにいたんだ?」

「あら、坊やだったの!イケてる男性かと思ったわ。」

「うるせぇ!助けてやったんだから感謝しろよ!」

「まぁそうね、ありがと、坊や」

「坊やって言うな!俺は来年には大人になるんだよ!」


助けてやったってのに、おちょくってくるとは、いい性格してるぜまったく。それに、話を逸らされた。


「さっきも聞いたけど、なんであんなとこいたんだ?」

「あら、そんなに聞きたいの?そしたら、坊やの割には戦えそうだし、あたしと一緒に来ない?」

「あ、それから、あの奥には何もなかったわよ。」

「なんだそれ、そんな話したくないならいいよ。奥に何もないなら、戻りながら石拾ってかえるよ。あんたも気をつけて帰れよ。」

「なに、心配してくれるの?ありがとねぇ。でも、あたし、坊やに目をつけたし、逃がさないわよ!!」


そう言うと、女は俺を捕まえようと近づいてきた。身の危険を感じる。逃げなきゃ!

入り口を目指して全力疾走。


「せっかく洞窟まできたのに、手ぶらで帰るなんて!」


そう叫びながら、一心不乱に逃げている。女は余裕の笑みを浮かべてついてくる。だが、ここは俺の庭みたいなもんだ!振り切ってやる!


集落を目指して、女をまくべく、俺は洞窟から脱出した。



「坊や、本当にありがとねぇ。」


女の手のひらの上で踊らされているとも知らずに………。



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