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第46話 プロローグ・復讐

第三章スタートです。


「ぜっ!……ぜっ!」

 深夜。月灯りだけが照らす町の下で、イラは息を荒くして剣を握っていた。


 彼の周りにあるのは老若男女問わず手足を砕かれ、身動きの取れなくなった人間たち。防具を身につけている者は少なく、大抵は包丁や棍棒などどこにでもあるようなものを武器にしていた。

 誰一人として殺されてはいない。しかし彼らは動けずとも、目に深い憎悪をたたえてイラをにらみつけていた。時折わけのわからない恨み言すら聞こえる。イラは彼らの目線を受けて、ぎりと歯を噛みしめた。


「何が……どうなってやがる」

 イラは背後から跳びかかってくる鋭い気配を察し、剣で斬り払う。剣から衝撃が伝わり、刃がしなった。イラの持つ剣は、剣というにはいささか奇怪な形をしている。


 刃は月灯りを受けて光を反射する聖銀。だが刃は細長く、よくしなる。鍔の代わりに太いシリンダーが取りつけられ、六つの弾倉には赤、青、黄、緑、白、黒。それぞれ六色の精霊結晶が封じられている。シリンダーの下には銃でよく使われる引金があり、イラの指はすでにそこにかかっている。


 イラが『六色細剣』と呼ぶそれは流水の刃を纏い、背後の敵と顔も見ずに数度打ち合う。振り返り、敵の顔を見て、イラは眉をひそめた。

「あなたは……」

「死ね。“透徹”!!」


 知った顔だった。敵は持った長刀を立て続けに振るい、イラを斬り殺そうとする。


 剣の腕は十分一流。しかし“玉石”であるイラに及ぶものではない。長刀が突き出されたところを『六色細剣』で跳ね上げ、一歩踏みこみ、敵の胸に、空いた左手で掌底を食らわせる。「かはっ」と肺に残った息が吐き出される。胸から心臓へ突き抜ける衝撃は、命を奪うことなく敵の意識だけを奪う。

そしてシリンダーを回転。自分の背中に土壁を出現させた。


「外したか!」

 土壁に突き刺さる矢。遠くから敵が弓を射たのだ。こいつまでここにいるということは。左から迫る気配に、イラはとっさに長刀を扱っていた敵を気配の方向に放り投げた。


「うごぁ!」

 盾を構え、イラに向かって突進してきた敵が長刀使いと衝突する。盾持ちは目の前に飛んできた仲間を受け止めようとするが、そこにイラが追撃。盾使いの斜め右に入り込み、すいと足を出す。足払い。体勢を崩してから流れるように首へのひじ打ちで盾使いを昏倒させる。その間にも矢が射られ続けている。イラは空いた腕で剣を操り、ひたすらにその矢を払い続ける。

 夜の暗い中でよく当てる。命中精度の良さすら腹立たしい。


「ウジム エタナウ」

「うぉっ!」

 さすがに厄介だ。イラは弓使いに水球を放つ。弾は分断し、威力は抑える。いくらかは矢で相殺されたが、水が弓使いの顔面に当たり、矢が止まる。


 意識を落とそう。続けざまに精霊術を使おうとしたイラだったが、急に視界が眩み、喉の奥から熱いものがこみ上げてきた。

「ごほっ!げはっ」

 吐きだされたのは黒ずんだ血。同時にイラの手足の先が冷えたような感覚に襲われる。動きが鈍る。吐血。麻痺。イラは傷一つ負っていない。ならば、

「毒か……」


 いつの間にかに飲まされていた毒に、イラの身は侵されていた。いつ飲まされていた?心当たりはあった。いやだがそうすれば……

 考えるな。考えるのは後。このままではまずい。イラは一度身を隠そうとするが、


 上から、強力な力を感じた。


「っつ……!!」

 イラはふらつく体をおして、その場を飛び退く。降ってきたのは炎。


 ()()()だった。


「君もですか……」

 イラは感情を感じさせない言葉で呟いた。体内に埋め込んだ人体操作の精霊器『操糸』の稼働率を上げる。普段より反応の鈍い『操糸』にいら立ちを覚えつつ、イラは炎を発した男と対峙する。


「先生」


 手に持つのは装飾華美な片手剣。簡素な革鎧を着ていて、左手はよく見なければ分からないほど精巧に作られた義手。髪も瞳の色も黒。そこそこ整った顔立ちは無表情で、しかし剣を手が震えるほど強く握っている。


「真琴」


 イラの生徒、神谷真琴は激しい感情をもって、イラに剣を向けた。


「先生……死ねぇぇぇぇ!!」

 真琴がイラに向かって致死の白炎を放った。


「ふざけるな。……ふざけるんじゃねぇぇぇ!」

 イラは目に憤怒を宿らせ、真琴に剣を振るった。致死の白炎は引き裂かれ、イラの剣が真琴に迫った。


 憤怒の中に困惑と悲しみを宿したイラ、


 憎悪に塗りつぶされた真琴。


 二人の使う『六色細剣』と『龍剣』が激しい火花を散らしてぶつかり合う。


「争って、そして死ね。“透徹”」

 月灯りの下で「先生」と「生徒」が激突する。その光景を一人の女が満足げに眺めていた。

 三章完結までは連日更新の予定です。ですが、まだ三章を書ききっていないのでできるかどうかはわかりません。

 大詰めのところまで書いているのでできるとは思うのですが、不安です。

 ともあれ、『誰か俺に異世界人の指導の仕方を教えてほしい』第一部最終章よろしくお願いします。感想、ブクマ、ポイント評価などいただけると励みになります。

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