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水無月1
「なあ、おジョー。
合法的に国内で君の友達の餌になるにはどうしたらいいかね?」
膝に載せたソレに問いかけてみても、答えは返ってこない。
耳に入ってくるのは薄らと開けた窓から漏れてくる雨音だけだ。
当たり前か。でも、
「…たまには、声出さんとな。」
ぼやきながら、おジョーをがしがしと手荒に撫でてみる。
虚しくもあるけれど、存分に癒される。虚しさを誤魔化すように、おジョーの口に手を突っ込んで『ガブッ』と擬音を声に出してからおジョーを解放した。
「僕の夢は、なかなか叶いそうにないね。」
おジョーは、ホホジロザメだったかのデフォルメされた見た目にそぐわない、少し凶暴な歯がチャーミングなぬいぐるみだ。
平々凡々な僕の名前は名乗る必要も無いだろう。
これは、「鮫の餌になる」個とが将来の夢の僕が鮫のぬいぐるみのおジョーと過ごす何の変哲もない日常の話。