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くらい日向  作者: 太一
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『俺』

「俺…は…」


言葉にならない。

そもそも、何故『私』なのか。

その疑問は否応なく、忘れたかった事を思い出させる。



男が『私』という一人称を使う場面は限られている。

公的な場で、と言うのが一般的だろう。

私も例に漏れずそうであった。

あの日までは。



「私はそっちの方が慣れてるから、寧ろ違和感だったけど…。」


彼女は触れちゃいけない話だった?と少し眉根を下げる。

そんなことない、と平静を装う事もできなかった。


「あぁ、まぁ、色々あってな」


触れられたくない、と言っておきながらこんな言い回しをするあたり、本当は聞いて欲しいのだろう。

なんて、醜いのだろう。やはり私は、自分が嫌いだ。


「いや、いや、なんでもない」


自己嫌悪から、つい先程の発言を取り消す。

その小ささにまた嫌気がさした。

気まずさから、手元にあったビールを一息に煽る。


「すまん、今日はもう帰るわ」


「え、あ、ちょっと!」


自分の分の代金だけ置いて立ち上がる。



吐きそうになりながら走った。

大して飲めもしない酒を一気に飲んだからか。

あるいは。

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