14/17
『俺』
「俺…は…」
言葉にならない。
そもそも、何故『私』なのか。
その疑問は否応なく、忘れたかった事を思い出させる。
男が『私』という一人称を使う場面は限られている。
公的な場で、と言うのが一般的だろう。
私も例に漏れずそうであった。
あの日までは。
「私はそっちの方が慣れてるから、寧ろ違和感だったけど…。」
彼女は触れちゃいけない話だった?と少し眉根を下げる。
そんなことない、と平静を装う事もできなかった。
「あぁ、まぁ、色々あってな」
触れられたくない、と言っておきながらこんな言い回しをするあたり、本当は聞いて欲しいのだろう。
なんて、醜いのだろう。やはり私は、自分が嫌いだ。
「いや、いや、なんでもない」
自己嫌悪から、つい先程の発言を取り消す。
その小ささにまた嫌気がさした。
気まずさから、手元にあったビールを一息に煽る。
「すまん、今日はもう帰るわ」
「え、あ、ちょっと!」
自分の分の代金だけ置いて立ち上がる。
吐きそうになりながら走った。
大して飲めもしない酒を一気に飲んだからか。
あるいは。




