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くらい日向  作者: 太一
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自分を殺すという事

 彼女との、甘くなく、ただただ苦いだけの思い出に浸っていると、鬱々とした気分になってきた。無理矢理にでも思考を切り替えようと、別の話題を探す。話題と言っても、別に誰と話すわけでもないが。

 ふと、森にも野崎にも話しそびれた事があったのを思い出す。


「いや、意図的に隠したのは『話しそびれた』とは言わないか」


 真っ暗な街頭に、私の独り言だけが響く。ジジっと音を立てて切れかかっている街灯も、私の独白を邪魔すまいとばかりに、その間だけ沈黙する。

 また気分が暗くなりそうなので、頭からその話題を追い出す。関について考えよう、と私は思い直した。こちらも気分が明るくなる類の話ではなかったが、自身の事を考えるよりは幾分かマシだろう。


「自殺、ねぇ。案外、しそうに見えない奴ほどするもんかね」


 何より、彼女より身近で心当たりがあった。私は、絶対に自殺なんてしない人間だと思っていたのだが。


「まぁ関の場合と比べてしまうのは良くないか」


 彼女は、両親を失っている。『自殺すれば本人は楽だけれど、残された方は辛い』なんて一般論は通用しない。

 無論、親戚や友人が残された側となるのかも知れないが、正直そこまで他人の関係性である人間の為に、無理して生きろ、なんて言える程私は人生に希望を抱いてはいない。

 自殺を肯定するわけではないが、生きていれば良い事がある、なんて無責任な論法で生の素晴らしさを説かれても納得しかねるのだ。

 要するに、彼女の自殺は、個人的に思う所はあるにせよ、『馬鹿な事をした』と断じて良いものでもないと思った。話を聞いてすぐに、自分のスケールで彼女の状況を良くないと断じた事を考えると、今になって大変な羞恥心に襲われる。


「彼女は、何を思って……」


 最後の瞬間、何を思い、何を考えていたのだろうか。私は、それが改めて気になってしまった。

 自分なら、自殺する時何を考えるか。恐らく、自分は人類の中で一番不幸だとか、もうこんな辛い状況から抜け出すには死ぬしかないだとか、そんなくだらない事を考えるのだろう。それは経験から簡単に予想できる。

 しかし、聞く限りにおいて、彼女はそんな軟な人間ではない様に思えて仕方がないのだ。母が亡くなったと言う時も普段通り通学していたし、父の通夜も毅然とこなしていたと言う。


 そんな彼女が、何故自殺するまでに至ってしまったのか。何が彼女をそこまで追い込んでしまったのか。不謹慎とは思いつつ、私の手はポケットの中の携帯端末を探り当てていた。

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