表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
くらい日向  作者: 太一
1/17

明けた夜はまだ暗く

 知人が亡くなった。そう聞かされたのは、大学を辞めて実家に帰った矢先の事だった。

 彼女とは別段深い交流があった訳ではなかったが、同じ学校に通っていた頃は、学校で会えば会話するくらいには見知っていた。そんな彼女の、突然の訃報に驚愕こそすれ、他にどう反応するべきか解らなかった。


「突然と言う程でもない。もう二年程になるかな」


 私にその訃報を届けてくれた森は、何の事もない様に続けた。


「そんなになるのか」


「まぁ知らなくても無理はない。お前、殆ど帰ってこなかったろ」


 カラン、とグラスの氷を回しながら呆れたようにこちらを見る。彼はウイスキーを好んで飲む。私も彼に付き合って同じものを飲むが、然程アルコールに耐性があるわけではないので、チビチビとしか飲めない。


「彼女、何してたんだ?」


 喉や舌の焼けるような感覚に顔をしかめながら尋ねると、彼はグラスの中身を煽ってから苦い顔をした。


「卒業後の事は良く知らない。元々、そんなに付き合いのある奴じゃなかったし」


 その表情のまま、酒瓶を手に取りグラスに傾ける。しばらく無言で彼の顔を凝視した。トクトクとグラスに注がれる音だけがする。八分目程まで注ぐと瓶に蓋を閉め脇に置く。


「……どうかしたのか?」


 耐えられなくなったのか、溜息と共に私に視線を向けてくる。私はただ首を左右に振り、出かかった言葉を酒と一緒に飲み込んだ。軽くテーブルに戻したつもりが、グラスは大きな音を立て、周囲に氷もまき散らす。


「あーあー」


 テーブルの上に散らばった氷を一つ一つ灰皿の中に放り込んでいると、対面の彼は席を立ち台所の方へ向かう。戻ってくると、布巾を投げて寄越す。再び向かいに座ると、グラスを覗きながら呟く。


「まさか薄情だなんて言わないよな?」


 その問いには答えず、肩をすくめて見せる。それをどう捉えたのか、彼は苦笑しながらグラスを空にした。実際、私は彼の言う通りに責めようと思った。

 卒業後の事を知らないという事は、然程興味のない相手だったのだろう。彼とは進学後も何度か会っていたが、彼女が話題に上る事自体初めてだったかも知れない。

 それなのに彼女が亡くなったからと、この席で酒の肴の様に話に出してきたことに、少なからず憤りを覚えたのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ