修行。いや、特訓?な、4年間
ゼルテスに修行を課せられたクラリスは、『修行の間』なる亜空間に入っていた。
「まずは、お父さんが言ってたように知識を確認、かな?」
知識の確認。それは、ゼルテスが転生時にクラリスに与えた知識を一度見て、確認・管理を行うという事だ。
クラリスは約半年をかけてやりきった。
遅いとお思いか?否。早い、だ。
ゼルテスの持つ知識といえば、他世界も含めたあらゆる知識に決まっている。『知識』とひとまとめにしても、本などに書いてある学術的なものだ。
つまるところ、『常識』も『個人の記憶』も含まれていないのだ。しかし、『知られざる本来の歴史』など、神のみぞ知るような事は分かる。
なんとも偏ったものなのだ。
「終わった〜!えーっと、次は武術関係の確認だっけ?」
武術関係の確認。それは、クラリスの知識内にある武術関係のものから、きちんと動けるか確認する、というものだ。
それにはクラリスも約一年の時を要した。
しかし、神にも認められている武術や流派は、完全に網羅した。また、一般的なものまでだ。
「よっし、やっと魔法にいける〜!」
はてさて、魔法と。読者様方の恋焦がれるお相手である。それはクラリスとて変わらない。
死してなお会えるかわからぬ神秘の産物。遥か昔にあったかも知れないという記録はあるが、現在では失われている技術である。
各世界ごとに多少の違いはありしも、基本型は神族の使うものである。神族のものは全世界のもの全てを有しているため、属性も階級も多い。
しばし紹介しよう。
まず重要なのは『属性』である。
良く耳にするのは、『火』『水』『風』『土』『光』『闇』だろう。これに、『無』『時空』『精霊』『創造』『破壊』が入る。
属性には適性がいり、無いとその属性は使えない。
多いのは挙げた順で、『創造』『破壊』となると、クラリスとゼルテス以外には適性が出ない決まりになっている。
また、上位属性という、とある属性を極めると適性が得られる場合がある属性もある。
火は『炎』、水は『氷』、風は『天』と『空』、土は『地』と『花』と『木』、光は『雷』と『聖歌』と『神聖』、闇は『呪』と『毒』と『特殊』と『暗黒』である。
他の5つの属性には上位属性はない。
次に重要なのは『階級』である。
下より『生活級』『初級』『低級』『下級』『中級』『上級』『超級』『戦術級』『王級』『帝級』『精霊級』『伝説級』『神話級』『神級』『無双級』『幻想級』『超絶級』『神王級』『超越級』である。
生活級は適性がなくとも使えるが、本当に生活が楽になる程度である。また、火、水、風、土の属性しかない。
初級は適性がいり、魔力が一桁でもない限りは使えるものである。
大抵は低級あたりで成長も止まるが、低級でも十分に強力である。
下級〜上級は才があり頑張れば行き着けるものである。
超級ともなれば天才であり、日に何度も使えたものではない。
戦術級〜帝級は、魔王ぐらいにならないと難しい。
精霊級は精霊が基本使えるレベルである。
伝説級〜神級になると、元来行き着けないほどの範囲となる。
無双級〜超絶級など、ありえないほどだ。
神王級になると、ゼルテスとクラリスにしか使えない。というより、『理』がそうである。
超越級はクラリスのみだ。うん、ありえない。ただ凄い。うん。また、これ以上は認められず、これはクラリスにのみ扱える。
さて、次は発動方法。
『詠唱』や『魔法陣』、『魔法書』などもあるが、基本である神版の魔法は詠唱や想像によるものである。
まず、挙げた3つは想像力が足りないために補うものである。魔法なんて、実を言うと魔法効果を想像するだけで出ちゃうのである。
まあ、レベルや適性にあったものしか出ないが。
「やっと終了ーー!」
クラリスは頑張った。そして、約一年半かけてやりきったのである!
♪ピロン♪
全て終わり満足気なクラリスの耳に、着信音の様な音が入る。
「え?なんだろ?」
クラリスが色々いじっていくと、《ステータスプレート》で謎は解けた。まずステータスプレートに今までなかった謎の2ページ目以降が現れ、ゼルテスからメールの様なものを受け取っていたのである。
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クラリスへ
僕の愛しの娘、クラリス。これを読んでいるということは、全てを完了し終えたみたいだね。じゃないとこれは読めない。
さて、君に次の課題をあげよう。修行の間に扉が現れたはずだ。そこに入ってごらん?そこには、『神獣』や『精霊』、『神』などがいるんだ。
君は修行をしていただけだから、レベルが上がっていないでしょ?そこにいる『魔獣』を倒しきってみて。レベルが丁度Errorになるよ。それが終わったら、そこにいる残りのヤツらを『眷属』にして廻ってみて。
この課題がクリアされたら、また新しいメッセージが届くはず。それまで頑張って!
追伸:ステータスプレートのページは増やして改造できるよ。アイテムボックスの整理用と、知識管理用、スマホみたいに登録者とやりとりとか色々できるやつを創っておいたよ。自由に使って。他にもいるんだったら創ってみてね?
ゼルテスお父さんより
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クラリスは慌ててステータスプレートを確認する。確かに、めちゃめちゃ入ってるアイテムボックスの中身一覧的なのと、図書館的なのがあった。そして、スマホっぽいやつ。しかも御丁寧に、会話するものはメールと、クラリスお気に入りの『LIN○』である。
この時、クラリスに何らかのスイッチが入った。
「ふふふふふ、改造、、ふふふ、面白そう、、」
それからクラリスは、怒涛の勢いで改造し続けた。2ヶ月ほどかかったが。
アイテムボックスの中身がただズラッと書いてあっただけのものは、まず大まかな種類に分けられ、徐々に細かくなり、綺麗に丁寧に整理されている。その他様々な機能付き。
図書館的なやつはまるで未来のコンピュータのようにまとめあげられている。御丁寧に、周りにいくつもプレートが浮いてキーボードまで出てくる機能付き。全部ステータスプレートと同じ青半透明で、基本クラリス以外には見えないが。その他様々な機能付き。
スマホっぽいやつはタブレット状で周りに浮かせる機能付き。もちろん青半透明で((ry。その他様々な機能付き。
「ふー、これで良いかな?」
クラリスさん、元来の目的を思い出していただきたい。
「あ、お父さんからの課題!」
気付いたクラリスは、またも怒涛の勢いでやり遂げた。その間約10ヶ月である。
まずはひたすらに魔獣を倒す。これには4ヶ月ほどかかった。なんせ数が多い。
次はひたすらに眷属化していく。神獣、精霊、神話族、神族、その他。
ふむ、神話族が良く分からないだろうか。まあ、名前の通りだ。人が創った神話から発生した神だ。ギリシャ神話お馴染みのゼウスや、日本神話お馴染みの天照大御神までいる。神族は、神王と最高神達が創り生んだ神だ。神話族よりは力がある。
眷属達とはステータスプレートのスマホっぽいやつに登録し合い、LI○Eでグループもいくつか作ったりと、色々手を加えた。
さて、課題を終えたということは、あれがくる。そう、ゼルテスからのメッセージが。
♪ピロン♪
「来た!良かったぁ〜。」
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クラリスへ
僕の愛しの娘、クラリス。2つ目の課題もクリアしたようだね。これで君の修行は終わり。現れた扉から出てごらん?初めに会った『神王の間』に出られるよ。残りはそこで直接話そう。
君の父、ゼルテスより
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確かに扉があった。クラリスは久しぶりに父に会えると、勢いよく出た。
そこは確かにあのただ白い空間で、ゼルテスが嬉しそうに手招きをしていた。
「お父さん!久しぶり!」
「うん、久しぶり。だいたい4年くらいだったね。ちょっと早すぎない?ははは。」
2人はギュッと抱き合い、会話を交わす。しばらくすると真面目な顔つきになり、どこからともなく現れた椅子に着席した。2人の間には机もある。
「クラリス、君にお願いがある。ある世界の文明レベルを上げてくれる?今のままでは、文明状態が動かないんだ。」
「え?そうなの?分かった、やる!」
「はは、ありがとう。」
クラリスは即答した。そりゃあクラリスだって、加藤美春の頃に多少は異世界に憧れた。一度は行って冒険してみたいのだ。
しかしクラリスは、重要な事を聞いていない。
「それって、何処の世界?」
「ああ、神王直轄世界群第8番世界のティオラだよ。」
「あそこ?分かった。」
神王直轄世界群。世界はたくさんあるが、その全ては神々が治める。もちろん、神話族ではない。その中でも、神王が直々に治める世界群の事を指す。
ティオラは、一番良くある『剣と魔法(と魔物)の世界』である。
「ま、そういう名目なんだけど、特に何もしなくていいよ?魔道具の他の使い方を教えて欲しいだけ。それが終わったら好きにして。
あ、壊しちゃダメだからね。」
「あー、魔道具!それならすぐに終わるね。分かった。」
魔道具とは、ご存知の通りである。魔法を使いやすくしたり、威力を上げたり、魔力制御をしやすくしたり、主に攻撃に使われるものだ。
しかし魔道具とは、科学や化学と違ってもっと可能性がある。それに気づかず、文明が止まったのだ。
確かに生活用魔道具もあるが、面白みもなければ向上性もないのだ。
「転移場所はアラスティックでいいかな?」
「分かった。」
アラスティックとは、街の名である。非魔族一の大国、アルリアック王国の王都だ。
ゼルテスが転移魔法を展開し、クラリスは神王の間より消えた。
「クラリス。君の運は、幸も不幸も、小事も大事も、良き者も悪き者も引き寄せる。君の旅路、見守らせてもらうよ。
文明レベルを上げて欲しいなんて、ただの言い訳だしね。ははは。」
ゼルテスも、笑い声を響かせながら消えていった。
クラリスが目を開けると、そこは裏路地だった。薄暗く、細い。
「あ、人目につかないようにか。よし、多少は憧れも持った異世界とチート。まずは楽しもう!目的は慣れ親しんだ後だね!」
クラリスはテテテッっと、道に出る。そこは、活気ある王都だった。
たくさんの人が行き交い、売り子が声を張り上げ、たまに客や店が言い合って。楽しく美しい王都があった。
クラリスは感動したようにつぶやいた。
「ここが、アラスティック…!」
〈ティオラ〉についての設定は設定章として出します。ですので、目次でいってください。一応、次第に文で説明が入っていきますが、分からないかもですので。
魔法についてもまとめたり、人が増えてもまとめるつもりです。ネタバレはしないつもりなので、ぜひ見て頂けると嬉しいです。