美春の死
作者です。あらすじにもあった通り、これは友人との共同作成をしています。のんびりお楽しみください。
私は加藤美春。高校2年生。たった今、車にはねられて死にかけています。少し、遡りましょう。
高校への登校中。いつも見かける小学生の軍団の1人が、ちょっと遅れて横断歩道を渡る。私もその後ろを、渡り出す。
何ら変わりのない普通の光景。
しかし、今日は違った。
まず耳に入るのは、年若い女性の声。「危ない!」と。何事かとそちらを向いて目に入ったのは、信号無視の車。その車は、私と遅れていた小学生に近づく。
私は、反射的に動いた。何も考えてはいなかった。ただ、反射的に、無意識に動いた。そう、小学生を突き飛ばしたのだ。
先ほどの女性の声や、その他の人の声が聞こえる。「危ない!」「きゃあああ!」「いやあああ!」と、叫び声が耳に響く。
次の瞬間、鈍く痛々しい音が、私と車から聞こえる。数秒遅れて、私の脳にも衝撃が伝わる。痛い、という事は無かった。
まるでスローモーションのように、ゆっくりと景色が流れていく。私は、小学生の方を見た。無事だったようだ。小学生は私を凝視して、呆気にとらわれている。
やがて私の身体が、地面に叩きつけられた。
そして、最初の部分へと戻る。
力無く叩きつけられた私の元に、周りにいた人や運転手、小学生が集まる。何人かはスマホ片手に、焦りの表情で話している。おそらく、警察や救急車だろう。しかし、救急車は無意味のようだ。
私は多分、死ぬ。だから私は、首を動かした。私の顔の横で泣きじゃくる小学生の方へ。
「ね、え。」
「ふえ?おねえちゃん?」
声を絞り出す。最後の気力を使い果たすつもりで。小学生は、びっくりしたように私を見つめる。涙を拭くために顔を覆っていた手をどけ、私を涙を溜めた目で見つめる。
周りの人たちが、私が喋るのを止めようとする。が、私は聞かない。それを無視して、小学生へ話しかける。
「私、は、死ぬ、よ。」
「いやだ!」
周りの人たちは、どこか諦めた顔をして、私の邪魔を止めた。
「頑張、って、生きて、ね?」
途切れ途切れに、私は言葉を出す。小学生は私をジッと見つめ、黙った。そして、コクリと頷く。
私は次に、運転手の方を向いた。
「運転手、さん、お母さん、と、お父さん、に、ありがとう、って。」
「言う!言う!悪かった!本当に悪かった!」
運転手に、父母への伝言を頼む。運転手は、何度も何度も謝る。
もう、無理そうだ。だから、最後に。最後に、これだけ。
「ありが、とう、」
美春は、そう呟いた。それは、その場の全員の耳に、深く刻まれた。
がっくりと首を地に打ち、力無く微笑み、美春の命は尽きた。
今回はキリが悪かったので、短めです。長いときも短いときもあると思いますが、特に気にしないでください。
投稿はゆっくりですが、よろしくお願いします。