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第八話 ティーガーキラー

「…おっぱい…フランスJKの柔らかおっぱいが…クソ…」



「おい、お前の頭はどうかしちまったのか?エドワード?戦闘前だぞ…」



「ハッ!ここは…?」



「お前…ふざけてんのか?」



 おっぱいの柔らかさが頬に残ったような不思議な感触と共に俺の意識は現実に焦点を合わせた。


 急速に取り戻した五感が俺を戦場に引き戻す。辺りを見回すと臨戦態勢のトムとその他大勢のアメリカ兵達が前方の村を睨んでいた。さらに後方では、自動車化部隊がウィリアム軍曹の突入の合図を待っているところだ。



 なるほど、戦闘開始直前でリピートするのか…まぁめんどくさくなくて好都合だがな。



よく分かったよ。



 つまり、俺が何もしなければ、これからアメリカ軍は全滅するのだ。



「なるほどね…状況は把握した。ところでトム」



「は?お前、急に訳が分からねえ…で、なんだよ?」



「俺達の小隊、もしくは分隊だけでもいいから、村の後方から奇襲できないか?」



「なんだって?」



「これは俺の勘だが…あのいかにも無防備そうに見える村は、実は罠だらけだ。こちらが前方から突っ込めば俺達は市街地の中で敵の待ち伏せに遭遇するだろう。つまり敵は万全の状態で俺達を待ってるわけだ。だが…そこに慢心があると思わないか?」



「……ただの勘に付き合ってる余裕はない」



「いいからよく聞けよトム。敵は村で俺達を待ち伏せしてる。大隊規模だろうな。当然ティーガー重戦車も控えてる。おまけに敵兵はよく訓練されていて装備も充実してる。ドイツ軍が使う棒状の対戦車兵器の名前はなんだっけ?」



「パンツァーファウストだ…お前、見たことあるのか?」


「そいつでこちらの車両と装甲車は無力化される。まあ、見てろ」






 俺は指差した方向にトラックとジープが進んでいる。


 道の半分ほど進んだ時、先頭の車両が爆発した。

比喩抜きで空飛ぶトラックは一瞬で戦場に静寂をもたらした。






 その様子をみて驚愕するトム。周りのアメリカ兵達も顔が青ざめていた。



「トム、あれは対戦車地雷だ。本命はまだある」


「そんな馬鹿な…」


同時に俺は声を張り上げた。


「総員射撃準備!!」


 突然の爆発で動揺し、押し黙った米兵達の間で、怒鳴り声はどこまでも響き渡った。俺はM1ガーランドの照準を森に向けて獲物が来るのを待つ。

 

「右側の死角だ!道路沿いの森から敵が攻撃してくるぞ。森に向かって撃ちまくれ!」



 ウィリアム軍曹を含めた全員が驚愕し、一斉に俺を振り返る。そして一部兵士は条件反射で小銃を森に向けていた。訓練で鍛えられた反射神経と本能が彼らを動かしたのだ。


 既に彼らの目線は森の中で蠢く迷彩柄の兵士を見据えている…あと少し…あと少しだ。ウィリアム軍曹が慌てて怒鳴った


「待て…まだ交戦許可を出してない-ーー」


 同時に、パンツァーファウストを持った敵兵が、停止したトラックの方向に駆け抜けようとしていた。だが奴等は遅かった…すでに俺と、少なくない数の兵士が銃口を奴等の方に向いていたのだ。腹から声を出して叫ぶ。



「今だ!撃ちまくれ!!!!」



 最初に俺のガーランドが火を噴いた。計八発の弾丸を打ちきるより前に、興奮した兵士達が各々の小銃と機関銃を撃ちまくっていた。銃弾が当たるたびに、敵兵達は狂ったダンスを踊るかのように滅茶苦茶に体を動かして死んでいった。



 十分だ。俺は流れるような動作でポケットから予備弾薬を取り出して小銃に装填する。ガチャン。


 小気味良い音と裏腹に、最初に反応出来なかった米兵達は、既に事切れた敵の死体を遅れて撃っていた。


 前方で右往左往していたトラックと装甲車は、混乱から立ち直って後方に逃げ始める。おそらくドライバーが状況を把握したのだろう。



「まだだ…」


「おい!エドワード!?今のは何だよ?説明してくれ」


「エドワード!貴様はいったい何のつもりだ?!」



 青ざめた表情のトムと、顔をひきつらせたウィリアム軍曹が叫んだ。だが関係ない。俺は、重火器を持って震えている二人のアメリカ人兵士に向かって次の指示を飛ばした。


「左方向から敵襲!偽装した機関銃陣地が攻撃してくるぞ!あそこにバズーカを撃ち込め!」


「は…?…え?」


 指示を出されたバズーカ兵は展開に付いて行けずに目を白黒させた。


「早くしやがれこのド畜生が!そのぶっとい糞を奴等にねじ込んでやれって言ってんだよ!!!!」


 俺の鬼気迫った怒鳴り声によって、兵士は震えながらバズーカを左側の森に向けた。


 今なら迷彩で偽装されていた敵兵の姿が見えるはずだ。奴等は奇襲作戦を潰されたため、動揺してワサワサと動いている。体に身に付けた木やら葉っぱが森の中で一部だけ動いているのが明らかに分かった。ドイツ語らしき声も聞こえてくる。


 「あそこだ!バズーカをぶち込め!!」


 その声と同時にバズーカ砲が発射された。白い煙が辺りに充満して、直後に木々と土嚢と人間が吹き飛ぶ。




 これで射手と銃座は完全に潰した。生き残った敵兵は兵装を放棄して森の中に走り去って行った…




 第一段階は完了したぜ。












「なぜ奇襲が分かった?エドワード二等兵」



 自動車化部隊が敵勢力との交戦距離から離脱し終えた後、俺は制服を着たお偉いさんの一人に尋ねられた。


 階級的に偉いのだろう。俺はこれから先、この階層の人間達と付き合っていかねばならない。戦略を転換させるにはまず上から説得する必要がある。


 彼の質問に、なぜも糞も一回死んでるからです。とは答えられず、双眼鏡で村を覗いたときに、敵の姿を視認したと答えた。





「たまたまですよ少佐。トムが持ってた双眼鏡を勝手に拝借して村を見たら迷彩柄の敵兵がいたのを見つけたんです」


「ゲイリーだ。つまり…そこで奇襲を予測したのか。それに二度も…?偶然にしてはどちらも完璧すぎる対応だった」


「勘にすぎませんよ。ところでゲイリー少佐。このあと、あの村をどう攻めます?」


「ふむ…正面から我が歩兵隊で攻撃する…と言いたいところだが…」


 そいつは一泊置いた後、底を探るような目付きで俺を見据えた。


「君はどう思う?」



 以前の戦闘では、ゲイリーは自分の部下が乗った車両部隊が全滅したことに激昂し、歩兵部隊に突撃を命じた。


 その後、自分を含めた歩兵部隊が機関銃で十字砲火を受けている最中に、狙撃兵に狙われて死んだのだろう。指揮官として、経験不足かつ無能としか言えない。


 いずれにせよ俺はこの立場が欲しかった。偉い人間から意見を求められるポジションだ。二等兵に世界は変えられんからな。どのみちゲイリーはこの戦闘で生き残れない。こいつには踊って貰う。



「私も少佐の意見に賛成です。敵の戦力は張り子の虎と考えてよろしいかと…正面から攻めればあっという間に突破できるでしょう」



「その通りだ。よく言った!」



「私は更に一手打つことを進言します。あらかじめ、一個小隊を村の後方に回り込ませるのです。少佐の部隊が前進し、退却する敵兵を挟み撃ちにするんです。これでドイツ軍は全滅です!」



「なるほど…その手があったか。後方に友軍がいれば敵を包囲殲滅することが出来るじゃないか!」



「ええ!敵を全滅させれば、全ての功績は少佐の手に渡るでしょう!」



「エドワード。君は天才だ!私は陸軍学校出身だったが、君ほど優秀な士官候補生はいなかったぞ!」



「誉めても何も出ませんよ。ところで、その後方で敵を待ち受ける小隊の役割は、我々の部隊で宜しいでしょうか?それとトラックも二台程あれば更に良いのですが」



「ふむ。確かに、ウィリアムと君ならやってくれるだろう。よし、30分もあれば敵の後方まで回り込めるだろう?敗走する敵部隊を殲滅する大役は君達に任せたぞ!」



「了解!!」









 俺達はトラックに揺られていた。ウィリアム軍曹は相変わらず不気味な物を見るような目付きで俺を見ていた。彼の部隊の一員も不吉な表情を隠しきれていない。ゲイリーは俺の部隊にトラック二台とジープ一台を寄越した。


 しかもジープにはバズーカ砲が乗せられていた。これほどの火力と機動力があれば、あの村の戦力に一時的に対抗できる。



 今後の作戦を再度頭の中で練る。トラックの中は無言だった。その重苦しい雰囲気に耐えかねたトムが軽快な口調で軽口を叩く。




「よく分からんが…さっきは大手柄だったじゃねえかエドワード。お前…俺達と違って戦争慣れしてるよな」



「あぁ…そうかもな」



「エドワード、お前いったい何を企んでやがるんだ?」



 口を挟んだのはウィリアムだ。



「どう言う意味でしょうか?」


「いや…お前は…違和感だらけだ。ゲイリー少佐に何を吹き込んだんだ?」



「彼は意見を曲げるタイプではないですから」



「それが俺に対する質問の答えか?」



「明確に答えていますよ…?」



 俺と軍曹の険悪な雰囲気を感じ取ったトムが話題を変えた。



「なぁエドワード、お前さっき戦闘の前に、村に戦車があってどうとか言ってなかったか?あれはいったい何だったんだ?」



「あぁ…トム。村には敵の戦車があるかもしれないな、だがあのジープに積んだバズーカ砲…あれがあったらどうだ?勝てると思わないか?」



「だからそれは仮定の話だろ…?それにバズーカでティーガーをやるには…そうだな。側面か後方を狙うしかないだろうな」


「戦車が側面や後方を晒すのはどんな時だ?」



「前進してる時とか…前を砲撃してる時だろ…?おい…まさかお前…」



「俺を信じろトム。軍曹も信じて欲しい。俺は生きるために戦うんだ。死にに行くんじゃない。でもこの局面を打開するためには犠牲が必要なんだ。もちろん俺は死にたくない」



「…エドワード…?」



 俺はウィリアム軍曹の目を見つめながら言った。聡明な貴方ならこの状況が見えてるだろう。



「戦闘が開始したら俺に分隊の指揮権を与えて欲しい。もし俺の指揮下に10人程いればこの戦いに勝てるぞ」



「貴様…」



「ウィリアム。死にたいか?それとも生きたいか?どっちか選んでくれ。ゲイリーは自分の心の声に従うがまま、どちらかを選んだ。あんたはどうなんだ?馬鹿みたいな包囲殲滅作戦とやらを実行して全滅するのか?それとも脳筋のゲイリーと一緒に突っ込んで仲良く蜂の巣か?」



「俺には…」



 ウィリアム軍曹が重い口を開いた。ため息が漏れる。それはまるで命の一部が彼の口から溢れ落ちてるかのようなため息だった。俺も自分が死ぬ直前に、そんな溜め息を吐いた。こいつも状況をよく分かってる。



「俺には…よく分からん…さっきの奇襲すら見抜けなかった。だが貴様の咄嗟の指揮がなければ車両部隊はやられていただろう。」



「その通りだ」



「…10人だな?スコットとマイクの二分隊の指揮権を一時的に譲渡する。条件として、一人も死なせるな」



「約束する」



奴はもう一度溜め息を付いて、右手を差し出した。



「ウィリアム・S・ヘンドリクス軍曹だ」




「ジェームズ・W・エドワード二等兵だ」



俺はその右手を強く握った。




「もう間もなく村の後方に到着するぞ!」



 トムが村が近づいていることを知らせた。そうだ、これでいい。まずはこの状況を打開する。小銃のグリップを握り、戦闘の準備を始めた。
















 村の後方にたどり着いた俺達は二手に別れ、作戦を開始した。戦闘は俺達が出発した後すぐに開始していたらしい。予想通り、戦場は混迷を極めていた。



 指揮系統が崩壊したゲイリー少佐配下の兵達は、分散して市街地の建物に立て籠り、やがて全滅する運命を待っていた。前回の戦況と同じく、重火器を搭載したトラックと装甲車は真っ先に撃破され、小銃と手榴弾のみでの交戦を余儀なくされていたのだった。


 騒々しいエンジンを鳴らす重戦車が歩兵を引き連れて市内をゆっくり徘徊し、米兵が建て籠る建物を一軒一軒砲撃していく。


 見事なまでの一方的な殲滅、散り散りになった友軍はまともに反撃できずにやられていった。



 その状況を目の前で見せつけられた俺達は闘志を燃やした。今ならまだ間に合う。



「おいおい、エドワードの言う通りかよ?戦車がマジでいるぞ!」



「トム!最初にあいつを潰すぞ。幸い我々は敵に気付かれていない!」


 俺はジープから降りてバズーカ砲を担いだ。



「ウィリアムの部隊は右側面に回って戦車の随伴歩兵を強襲しろ!!」



「了解した!」



「俺の分隊はバズーカで奴を撃破する。スコットの分隊は高台の狙撃兵を始末しろ!」


「ラジャー!」


 俺は部下となった男達に矢継ぎ早に指示を出した。元異世界勇者チート大元帥、佐久間連の名誉を挽回してやろうではないか。



「行くぞお前らああああああああああああああああ」


「「うおおおおおおおおぶっ殺す!!!!!」」





 戦闘開始の一番槍はウィリアムの部隊の一斉射撃から始まった。



「今だ!撃てぇーーーーー!!!!!」



ドドドドドドド!!!!




 予想外の攻撃を受けた戦車の随伴歩兵は、二方向からの十字砲火でドミノ倒しみたいに倒れていった。伏せて反撃する者、逃げる者もいたが、完全な奇襲を受けたドイツ兵達は為す術もなく、一瞬で無力化することに成功した。



 それと同時に、スコット率いる分隊が、高台に潜むドイツ軍狙撃兵の位置を即座に特定し、一人ずつ順番に倒していく。



「デカブツの護衛は全滅させたぞ!エドワード!!」



 ウィリアムが声を張り上げた。これは敵戦車の気を引くためだ。ティーガーは進路を、銃撃を受けた方向に向ける。



「××××××××××!××××!?」


 ハッチから身を乗り出してベラベラ指示する黒服の男が中から出てきた。こいつだ…あのルガー野郎。俺をヘッドショットしやがって。



「トム!あのドイツ野郎が敵の指揮官だ!ぶっ殺せ!」



「おおおおおお!!!」



ガガガガガガガガガッ



トムが奴に向けて滅茶苦茶に機関銃を撃ちまくる。



 その数発が敵の指揮官の胸に命中した。奴は口から血反吐を吐き、ハッチから投げ出されて地面に転がった。


あまりにもあっさりとした退場だった。



「エドワード!やったぞ!」



「よくやった。トム!」



 ボスキャラみたいな格好をしてるわりに一瞬で死んだそいつを横目に見ながら、後であの美しいピカピカのルガーを頂くと決めた。




 いずれにせよ、これで条件は整った。敵の指揮官が戦死し…随伴歩兵は全滅したのだ。丸裸となった戦車はウィリアムの部隊に気を取られてこちらに背を向けている。



「散々手こずらせてくれたじゃねーかよ」



 俺は弾が装填されたバズーカを肩に掲げてティーガーの背中を狙った。その巨大な虎を守るべき兵隊は既に全員死んだ。しかも虎の主も戦死している。




一撃でぶっ潰してやる。




「チェックメイトだ」



 トリガーを引くと、軽い衝撃と共に白煙が拡散し、砲口から発射された飛翔体が真っ直ぐに飛んだ。



 そいつは一瞬で戦車の後部に直撃した後、装甲を突き破り…爆発。



ドカアアアアアアアアアアアアアン




 遅れて砲台が丸ごと吹っ飛んだ。その盛大な爆音のおかげで敵味方の銃撃戦が止まった。



見てるか…お前らの親玉は逝っちまったぞ。



 花火みたいに燃え盛る炎と、黒龍みたいな煙がゆらゆら登って青い空を汚していく。戦況が逆転する瞬間とはこの事だろうか?戦車さえ潰せば後は敵歩兵部隊のみ。



さっきまで追い込まれていたが、こちらの方が兵力は上だ。





「「うおおおおおおおおおおおおおお」」






 ウィリアムの小隊が歓声を上げた。俺はバズーカを投げ捨てて、M1ガーランドを手に取った。



包囲殲滅を始めようではないか。








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