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第四話 オマハビーチ突破!

ノルマンディに召喚され、早くも速攻で死んだ俺、なぜこんな糞展開になってしまったんだ!?

 また目を覚ますと上陸挺からのスタート。そんなバカな。


「これより敵前上陸する!装備を確認し、交戦に備えろ!」


また、あの白人の男が喚き散らす。あーなるほど。こりゃループだ。


完璧にループ物だわ。なるほど。俺こと聡明な佐久間連は一瞬で状況を把握した。


どうせこのままの展開なら…上陸挺の前部扉が開いた瞬間、この小隊は機関銃の射撃に釘付けされ全滅する。


だったら…



考えを巡らせる合間にも状況は刻一刻と迫り俺に判断を求める。白人の男。恐らく上官…が兵士達を怒鳴りつけた。



「海岸は目の前だ!上陸後、直ちに分散し遮蔽物に身を隠しながら全身!鉄網状を爆破しろ!俺を目印に続け!」



「ハッチ解放します!」


「行くぞ!突撃!!!」



合図だ。俺はこの後の展開を知ってる。この上陸挺は前方数100メートル先のトーチカに潜む、ドイツ軍の機銃掃射により狙われており、小隊は全滅する。



「ここだぁ!」



俺はハッチ解放の合図と共に、上陸挺の縁から一人身を投げ出した。後ろから銃撃音と鉛と肉のぶつかる音が聞こえた。


海面に落ちるまでの瞬間がやけに長く感じた。



バシャン!


体が冷たい海に投げ出され、全身が急速に冷えていく。海水で目が染みるが、構わず見開く。


薄暗い海面にいくつもの死体が折り重なってる。俺は迷わず手持ちの小銃を捨てた。ヘルメットも海中でもがきながら外す。装備の重さで沈むからだ。重りを失った体は急速に海面に浮上する。


その最中、銃弾が水中を走った。いくつもの螺旋が海底の砂を荒らす。


「ぷはぁ!なんだこれ」


まさしく地獄絵図だった。海水は赤く染まり、いくつもの上陸挺が炎上しながら砂浜に突入している。目前のビーチは死体が折り重なり、その死体目掛けて銃弾が着弾していた。この光景は映画で見たことがあるぞ。



「おいおいこんなのうそだろ!?まさか、激戦地のオマハビーチかよ!?ついてねーじゃねーか!」


ちくしょう!頭の中でぐるぐるといくつもの考えが浮かんでは消えていく。俺は水中でバタバタもがきながら前進し、ようやく砂浜に辿り着いた。



「糞が!!Shit the fuck up!!!!」


分かってる。次は武器だ。俺はさっき海中に小銃を落としたところだ。だが武器なんてあるじゃないか。


この砂浜の至るところに。



「武器!銃はどこだ!?」



身を地面に伏せながら周囲を観察すると、銃はすぐ見つかった。名前は知らないが、子供の頃の戦争ドラマで見たことがある軽機関銃だった。たしか軍曹とかが使ってるやつ。


その銃はひっそりと落ちていた。俺から15メートルほど離れた死体の山の中に…



俺はすぐ中腰になって…金属製の遮蔽物の後ろに隠れる。その間も銃撃と爆発音が響き渡り、周りの地面をなぎ払った。あそこまで走って10歩程度。時間にして数秒だ。一瞬で武器を拾う。また遮蔽物に隠れる。こんなの簡単だ。俺は銃撃音が鳴り終える瞬間を待った。


ドドドドドド…




「いまだ!」




クラウチングスタートダッシュで一気に距離を詰める。あっという間に人間だった物の山に辿り着いた俺は、そのオモチャみたいな機関銃を拾った。かなり重い。まるで鈍器だ。



「よしやったぞ銃だ!」


「おい貴様、こっちヘ来い!そこだと死ぬぞ!」


隣から声が聞こえる。俺を怒鳴り付けた40歳くらいの中年の兵士は遮蔽物に身を隠しながら、丘の上のトーチカ目掛けて小銃を何発も撃っていた。


ガンガンガン!キーンッ


小銃を打ち切ったときに聞こえる特徴的な音がなんとも言えない綺麗な金属音だ。


「今そっちにいきます!」


再度小走りでそいつの元へ。俺が10秒前にいた死体の山だった所が派手に吹き飛んだ。爆風と残骸がべしゃりと服に張り付く。肉片を手で払い除け、そいつのとなりに座り込んだ。


「状況はどうなってる?」


「どうもこうも最悪だ。この地点は敵の防備が固いハズではなかった。だが、現実に我々はビーチで釘付けだ」


「理解した。どうやってこのビーチを突破するんだ?ところで、俺の名前はエドワードだ。所属の小隊は上陸挺上で集中砲火を受けて全滅した」


「ああ!?なんだって!?」


「俺はエドワードだ!小隊は全滅した!」


「ジョニーだ。くそったれ!」


またどこかで響き渡る爆発音と銃声と悲鳴。その激しさのせいで俺とジョニーの会話は怒鳴りあってるみたいだった。


「エドワード!あの丘のトーチカを潰さないと俺たちは全滅だ!前進して鉄網状を突破するしかない。この最悪な状況を打開するぞ」


「分かった!それで…どうやってあそこまで辿り着くつもりだ!?」


「こいつを使う!」


ジョニーの後ろに布製の乾いたバックパックがある…その中に何本も棒が入っていた。


「この発煙筒が入った袋だ!こいつを俺が投げた隙に、お前は敵の射線外までまっすぐ走り抜けろ!そのあと発炎筒を投げ続けて味方の前進を支援しろ」


「分かったぜ!あんたが先に発炎筒を投げる。その後俺が丘の手前の鉄網状まで走り抜ける

、その後発炎筒をばら蒔く。これでいいか?」


「その通りだ。鉄網状を爆破する工員が来るまで援護しろ!」


「了解!合図をしたら突っ込むぞ!」


俺は銃を背中に担ぎ、発炎筒が入ったバッグを抱え込んだ。準備は出来てる。この戦場を走り抜けてやるぜ。ジョニーをちらりと見た。奴は発煙筒を投擲する体勢だった。


1.2.3いまだ!



「エドワード!投げたぞ!」


「分かってる!」


俺は発煙筒が煙を出す前から走っていた。ただひたすら前だけを見据えて…銃弾は目茶苦茶な所に命中しており、俺を狙っていない。


ひたすら走り、鉄網状に倒れ込むように前のめりに蹲る。時間にして数十秒…


後方を見るとジョニーのいたところはもくもくと煙でおおわれ、そこが集中的にドイツ軍に狙われているようだった。



「あぁ…あいつ、死んだか」


俺は迷わず発煙筒をバックパックから引っ張り出し、ところ構わず投げまくった。辺りに煙が充満し、視界はゼロになる。


俺の所だけじゃない。至るところで味方の部隊が発煙筒を投げまくっている。煙が立ち上ぼり、ドイツ軍は効果的に銃撃することができなくなっていた。



気が付くと鉄網状の手前に数十人の兵士が集まっていた。俺は叫んだ。



「工兵!工兵はいないか!?鉄網状をパイプ爆弾で吹っ飛ばせ!」



「了解しました!」


二人の兵士が名乗り上げ、鉄網状前で爆弾の設置を始めた。設置が終わるまで実際は二~三分ほどだったが、俺には永遠のように感じた…



銃撃と砲撃は鳴り止むことなく我々を捉えていた。火だるまの戦車が砂浜で座礁している。あちこちで呻き声が聞こえていた。



「離れてください!爆破します!」



工兵が合図をした瞬間、鉄網状はなぎ倒された。俺たちは戦況が一変したことを肌身に感じた。


「お前ら突っ込むぞ!俺に続け!」


背中に背負っていた機関銃を手に持ち変え、俺は突撃した。後ろにはアメリカ兵達が続き、初めは数十人だったのが数百人と続いていく。



手始めに、塹壕に籠った敵兵を機関銃で蜂の巣にしてやった。


火炎放射機でなぎ払われ、火だるまになったドイツ兵を撃ち殺す。



撃って撃って撃ちまくる。軽機関銃はすぐに玉切れを起こした。その武器を投げ捨て戦死したアメリカ兵の小銃を拾う。玉切れだ。


ポーチから弾層を取りだし、慣れた手つきでM1ガーランドに叩き込む。



ガンガンガンガァン!キーンッ…



玉切れ。またリロード…



敵兵を二人撃ち殺した。



ああ、これが戦争だ。



にやりと笑う。



今日、エドワード二等兵こと佐久間連はオマハビーチを突破した。




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