第3話 ウィーンからパリへ
まぁ、この話は未来の話だし、よくわかんねーと思うが見てくれ。これは佐久間連が異世界に行かなかった場合の話で、つまり、彼の現実に起きたであろう出来事だ。後で本編に絡んでくる大切な伏線だ。
あのとき俺は、訳が分からないオーストリアで空港をうろうろと動き回っていた。
適当に動いていたら手荷物検査場に来た。そこで初めて生まれて初めてオーストリア人と会話した。その白人は眼鏡をかけた小太りの明らかにナード系の雰囲気だったが、俺に対してはやたらと強気だった。
no pc no weater!
入国管理官との訳の分からないやり取りを終えて、手荷物検査のゲートを通過する際に、俺の肩と探知機が不注意にも接触してしまった。
「気を付けろ!」
別の男から怒鳴り声が飛ぶ。俺は萎縮した。
粗っぽく怒気を孕んだ入国管理官達の指示にしたがい、俺はもう一度ゲートをくぐった。
「今度ゲートを通るときは二度と機器に肩をぶつけるな」
「す、すいません」
その背の高い、いかにも高圧的な白人入国管理官はこっちの顔も見ずに言い放った。急いで貴重品を身に付ける。俺は一度も愛想笑いも浮かべず。貴重品を身に付ける間、常に周囲を警戒していた。
その後空港の出口がわからず俺は迷った。じっとりとした汗をかいていた。看板の案内する方向に従い、出口へと向かう。
すぐにタクシーが見つかった。車のドアを軽くノックし、運転手に話しかける。
「ヘロー!ホテルに行きたいんだけど…」
「行きたい場所はどこだ?」
「サンスクリッド通りにあるスクウェアホテルなんだけど…」
「そこまでなら25ユーロだ」
「Ok.分かった。連れてってくれ」
俺はとても警戒していたし、凄く疲れていた。片言の英語で自信が予約していたホテルに行きたいと伝えて、そのままタクシーに乗った。15分程度のドライブを体感し、ホテルに到着した。
長旅のフライトで疲労していた俺は、タクシーの運転手に労いの言葉を言い、ホテルのドアを開ける。
真っ先に視線が合った支配人にホテルバウチャーを見せた。
「こんばんは。日本から来た佐久間連です。今晩泊まる予約をしていたし、バウチャーも持ってます」
「パスポートを見せろ…」
20代後半と思われる若い男だったが、彼の冷たい態度に辟易した。俺が見せたバウチャーもろくに見ずに、パスポートを要求した。
彼にパスポートを手渡し、確認する。きちんと予約できていたようだった。鍵を受け取り、真っ先に自室へ向かう。
扉を開けると、そこは久しぶりの一人の空間だった。
英語によるコミュニティの温度差によるショックと、異国ゆえの緊張感は相当追い込んだようだ。俺はシャワーで汗をながし、貴重品を確認した。絶対に盗まれないように警戒することが必要だった。
バスルームから上がり体を拭いた後、空腹を感じたが誰とも話したくなかったので自室に引きこもった。オーストリアは魅力的な国だと思えなかった。
時計をセットし翌日のフライトに遅れないよう備えた。