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第一話 異世界勇者からのー

勢いで書いた。後悔はしていない。

俺はどこにでもいる高校生の佐久間連だ。


突然だか俺は昨日トラックに引かれた。

まるで野良猫みたいな死に様だったが、悔いはない。何故なら俺は異世界に転生したからだ。


場面が教会のような場所に変わる。

俺の目の前に白い装束をまとった綺麗な女がいる。


「異世界に召喚されし勇者よ!この世界を救いたまえ!」


「なるほど!これが異世界召喚か!すげえー」


俺は大声を出した。


これから俺様は異世界元帥となり、敵を包囲殲滅するのだ!


「俺は!この世界を…救う!」



この日から俺様の戦いが始まった…



第二話


異世界に召喚され、俺はスキルを確認することにした。


全技能レベル99999.


石板に表示される文字はアラビア数字と日本語なので、読める。


「なるほど、俺は最強だな」


目の前にいる美人な女に声をかけた。その女は俺を召喚した人類の最後の砦、女神だ。


「あなたは最強の戦士よ!きっと魔王も秒殺だわ。」


「分かってるよ。取り敢えず、魔王をソッコーでぶっ殺せばいいんだろう?」


「ええ、魔王は西の森にいるわ」


「わかった。五分で殺って来るよ。俺ワープ魔法使えるし…」


「ええ、検討を祈るわ!」


そこで俺は呪文を唱えた。一瞬で武器が造られた…その剣はエタノールソード。最強の鍛冶スキルで鋳鉄された最高の剣。



その剣は俺の手にしっくりと馴染んでいた。


「汚物を消毒するエタノール剣だぜ!」


足元に魔方陣がある。これから、西の森に住む魔王を強襲するのだ。準備は整った。俺は皆を一瞥した。


どいつもこいつも、歴戦の猛者たちだ。苦楽をともにし、旅をした。絶望を切り抜け、一緒に戦った仲間たちだ!


「よし!お前ら!一気に魔王の首をとるぞ!」


「そうこなくっちゃ!」


威勢のいいやつが一人、赤毛の騎士と呼ばれる王国最強の女ソフィア。


「援護はまかせるのし…」


暗い雰囲気の黒髪女。手には死神の鎌。


「俺っちの早打ちで魔王の護衛はいちころばきゅんだぜ!」


うざい雰囲気のムードメーカー。コテツ


その他十万人の王国精鋭騎士団!



「俺は最強の元帥!佐久間連!今日この日、魔王の首とる!」


「うおおおおおおおおお!」兵士から歓声が上がった。


ぶっ殺す。あの日あのとき、人類を追い詰め、屈辱を味あわせた魔王軍に。



「ワープ展開!目標!魔王城。転送開始後、全軍突撃せよ!」



そして俺たちは雄叫びをあげながら忽然と姿を消した。




第三話



「来たか勇者よ!」


ワープで敵の喉元に迫った俺たちは満身創痍になりながらも魔王の軍勢を蹴散らした。


ドガーン!バガーン。


ウオオオ


ガシャンガシャン!



城のあちこちから戦闘の音が聞こえる!


「俺はあんたを止めるためにさっき召喚された勇者だ!五分であんたを殺す」


「なめたものだ。私の力は最強にして随一。貴様ごときに1000年続いた帝国がやられてたまるか」



ドガーン


や、やられたー



またどこかで戦いの音が聞こえた。この戦いが終わらない限り、人は死に続ける。


「とにかく早く戦闘を終わらせるぞ!」


「来い!勇者よ!」


「勇者の秘技七番。断罪のカルマ!」


「な、なんだと!その技は」



俺のエタノールソードが炸裂し、魔王が爆散する。

さすがの魔王も秘技七番には勝てなかったか。


だかその刹那…!


「ふふははは!かかったな!」


「なに!?」



爆散したはずの魔王が瞬時に再生し、俺に後ろから切りかかってきた!


「危ない!連!」


「コテツ!」


その危機一髪の窮地から俺を救ったのは早打ちガンナーコテツだ!コテツはまっぷたつに切り捨てられた。臓物と血が飛び散り。コテツの脳漿が地面に散らばった。


「ぐわあぁーやられた!」


すでに機能を停止したはずのコテツの脳と口が動く。それはまるでピエロみたいだった。


「き、キサマアー!許さんぞ」


俺は激情に突き動かされ、最終奥義を放った!


「勇者の最終決戦仕様奥義!六本欄簇富士山麓流麗斬!」


ブッシャァー


「ぐばぁーー」


真っ二つに切り捨てられた魔王。切口が砂になっている。


これでおわりだ。


「勇者よ!これで終わりだと思うなよ。私を倒しても第二第三の私が…」


「寝言は寝ていえbaby、闇夜に抱かれて死ね。」


ブシャー


「ぐはぁー」


俺は魔王にとどめを指した。


「勇者がやったぞー」


「戦争が終わったー」


周りの騎士達が万歳三唱する…ふふふ。俺が、いや、俺たちが戦争を終わらせた、


「やりましたね!勇者。あなたは救国の英雄です」


「ハンナ。すまない。俺は元いた世界に帰りたくないんだ。このまま君と結婚してもいいか?」


「もちろんですよ!」


「やったぞー勇者と姫が結婚するぞー」


騎士達が下品にもはしゃぐ。やれやれ。困ったもんだぜ。


「俺はやった。俺は勝った。もうあの頃とは違う」


一人握りしめたガッツポーズが虚空を突き抜けた!それは元いた世界の勝利の印!栄光と繁栄の象徴だ。



しかし、喜びもつかの間、俺の地面に魔方陣が輝き始めた。これは!まさか…!


「召喚魔法です!逃げて、連!」


逃れるすべはない。これは俺をどこまでも追いかける。ぞっとする直感だった。ああ、なるほど。



その時俺は思っても見なかった。まさか異世界で栄光を手に入れた俺が現実世界に戻るはめになることに。



俺は…知らなかったんだ。この世界が残酷であることに。





光が拡散する。魔王城も、姫も、コテツの死体も、騎士の軍勢も一瞬で消えた。



目の前に広がる闇。闇。闇。



そう。これはどこかの小説の続きだ。何もない青年がたまたま異世界に行って魔王を倒してハーレムを築いて…ありふれた空想の話。どこにでもある劣化コピーの異世界ファンタジーのラスト。



そしてそのあとは?



そう、これはそのあとの話だ。



俺が大嫌いな現実の話だ。





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