21
窓ガラスが割られ、銃身を突きつけられた。弾丸には強いが、べつの衝撃には弱いようだ。
ガラスの破片を浴びたことも、仙道はよくわかっていなかった。頭が真っ白になり、包囲されていることが現実として受け止められなかった。油断していたわけではない。だが、安全な場所まで離れていると信じて疑わなかった。
「残念だったな。おまえの居場所なら、いつでもこっちは把握してたんだ」
兵士の一人が言った。知っている声だった。
「俺だよ」
兵士がバイザーを上げ、ヘルメットを取った。
花房だった。そういえば、寺院で聞いた声も知っていると思ったのだ。きっと、この花房が声音を変えていたのだろう。
「わかったか。おまえさんは、いつでもわれらの手のひらの上だったのだよ」
もう一人も、素顔をさらした。しかし、こちらのほうは見なくてもわかった。一人が花房ならば、知っている人物は徳井しかいない。
「交渉は終わりだ」
「あなたたちは……いったい、なにが目的だったんですか!?」
「それだよ。そのプロテクトを破ってもらうことだよ」
徳井は、勝ち誇ったように答えた。
「三つコードがあったろ。最初の一つは正規のものだ。われわれでも知っている。あなたは生徒を使って上の人間から情報を引き出したようだが、ちゃんとヒントをくれただろ? あれは予定どおりのことだったんだよ」
上の人間とは、辻本のことだ。
「だが、あとの二つは御影たちが仕掛けたものだ」
御影──その名前は、最初に聞いている。テロリストのリーダーで、その人物との接触を仙道は疑われたのだ。
テログループによるもの……総理の見解が正しかったということだ。
「とにかく、降りてもらおうか。総理も」
為す術もなかった。無理やり車から引きずり出された。総理はされるがままだったが、仙道はそれでも抵抗しようとした。
「おとなしくしてろ」
そんな花房の声を耳にした直後、後頭部に衝撃がはしった。
顔の無い生徒が、こちらを見ていた。仙道は呼びかけた。
「きみの名前は?」
「先生、相談があるの」
少女は名前を告げず、そう切り出した。
「いいよ、なんでも聞くよ」
「わたしね、人を殺してみたいの」
「なに言ってるんだ……そんなこと、ダメにきまってるじゃないか」
「どうして?」
「人間は、人間を殺しちゃいけないんだよ」
「でも、戦争では殺し合いをしてる」
「そ、それは……」
「ねえ、どうして人を殺しちゃいけないの?」
仙道は、その答えをもっていなかった。
「答えられないの?」
「答えられない……」
「そう。わたし、学校をやめる」
「やめて、どうするんだ?」
「人を殺すの」
「バカなことはやめるんだ」
「安心して。法律は犯さない。世の中には、いくらでも人を殺す方法はあるんだよ」
その日を最後に、顔の無い生徒は学校に来なくなった。
どうして、名前と顔がわからないのだろう?
なぜ、人を殺してはいけないと、教えてあげられなかったのだろう。
後悔ばかりがつのる……。
自分は、最低な教師だ──そう思った。
やりきれない感情に支配されそうだったとき、音楽が聞こえてきた。ピアノの音色だ。だれが演奏しているのだろう。
そのときになって、仙道はこれが夢だということに気がついた。
脈絡なく、ストーリーがつむがれていく。夢特有のものだ。
「先生、聞いてたんですか?」
「ああ。心が洗われた」
「わたしの演奏なんて、まったくダメです。人を感動させることなんてできない」
「なに言ってるんだ。ぼくは感動した」
「嘘でもうれしいです」
「嘘じゃないよ。でもね……」
「でも?」
「みんなを感動させる必要なんてないんじゃなか? ぼくが感動できればそれでいい。だって、いまはぼくしか聞いていなかったんだから」
「起きろ」
頬を叩かれて夢から醒めた。どんな夢だったかは覚えていない。
瞼を上げると、花房の暑苦しい顔がそこにあった。
「ここは……」
そうだ。頭を殴られて、意識を失ったのだ。
周囲を見渡した。記憶にある場所だった。あの寺院のなかだ。
拘束などはされていないが、いくつもの銃口に囲まれていた。すぐとなりでは、総理も同じようにパイプ椅子に座らされている。
「わかってるでしょうが、お二人には消えてもらいますよ」
どういう表情をとればよいのか、仙道には思いつかなかった。
総理の顔に恐怖はなかった。あきらめていた。さすがは、一国の首相だ。潔さだけは尊敬する。
「……最初から、殺すつもりだったんでしょう?」
「努力賞をあげなければな。あなたは、よくやってくれた。冥土の土産というやつをあげよう」
徳井は、サディスティックな笑みを浮かべていた。すぐに殺すのではないようだ。
「努力賞なら、もうもらいましたよ」
「あ?」
徳井も花房も、意味がわからないようだった。それもそうだ。賞をくれたのは、あのフラミンゴなのだから。そのことを説明する気もなかったので、仙道は冥土の土産とやらをもらうことにした。
「あなたたちは……何者なんですか?」
「名乗ったとおりだ。公安に所属している」
「そうか……」
総理がつぶやいた。
「公安で治安部隊を結成しようとしていた。辻本の使いっぱしりめ……本当にやりやがったのか」
「そうだよ、総理。だが、自衛隊を国内鎮圧のために使おうとしていたあんただって、同じようなものだろう?」
「それはブラフだ。真剣にやろうとしてたわけじゃない」
「御影は、それで潰されたはずだ」
総理は押し黙ってしまった。
「交渉人の先生に教えてあげよう。御影というのは、もとは自衛隊の特殊部隊員だった。特殊作戦群という名だ。そして、その精鋭のなかから、総理が推し進めている国内テロ鎮圧部隊のメンバーに選ばれたのだ。やつの部下二〇名といっしょに」
その彼らが、集団で自衛官をやめたということは、総理から聞いていた。
「だが、やつらは知ってしまった。本当の結成理由が、その《箱》を守るためだったことをな」
徳井の視線のさきに、あの箱──核の発射ボタンがあった。パイプ椅子の上にのせられている。そのとなりの椅子には、奪われたパソコンが置かれていた。自分と総理のぶんも合わせて、四つの椅子が並んでいることになる。
「核の保有は、政治家にしろ、国防にたずさわる人間にしろ、それぞれ意見が分かれる。もったほうがいいと考える者もいるだろうが、その逆もしかりだ」
それはよくわかる。教師のなかにも、核を保有すべきだと考える過激論者もいるぐらいなのだ。
徳井の言う、国防にたずさわる──というのが、その御影という人物なのだろう。
「御影は、核に対してアレルギーをもっていた。だから除隊したのだ。部下全員を引き連れて。われわれは、やつらを利用することにした」
われわれ──それは、徳井たちということではなく、あの辻本の意向だと思った。
「同じ核に反対する者同士──と偽りを口にしてな」
「あなたたちの行動理念はなんですか!?」
思わず、厳しい口調で問いかけていた。
「もちろん、公安部隊をこの国に根づかせるためだよ。やつらにこの《箱》を奪わせ、それをわれわれが鎮圧する。核を狙うテロリストたちを殲滅したとなれば、われわれの存在はたちまち認められることになるのだ」
「なにバカことを……」
総理が声をもらした。
「あれはブラフだと言っておる。私のやっていた右傾化発言は、すべてブラフなんだ。あんなものを押して、本当に核ミサイルが発射されるとでも思ってるのか? それどころか、あんなものがこの国にあるなんてことがわかったら、政府は一夜にして転覆するぞ」
「潰れるのは、おまえのようなバカな政治家であって、われわれではない」
「おまえさんたちは、なんのために存在してるんだ? その《バカな政治家》を守るためじゃないのか?」
「ふざけたことをほざくな! われわれが守るのは、この国だ。この国さえ存続できれば、政治家など全員死んでもかまわない!」
二人は言葉の毒を応酬させた。
仙道は、どちらの意見にも賛同できなかった。政治家のために国家権力があるのではなく、国の存続のために武器があるのでもない。この国に住む、市民のためだ。
「まあいい……話をもどそうか」
総理との言い合いをやめ、徳井は落ち着きを取り戻そうとしていた。
「やつらに言ってあったシナリオは、こうだ。総理と《箱》を確保して、すべての真実を動画配信で中継する。核の所持で政府は糾弾され、そのバックにいるアメリカの影響も小さくなる。結果、この国の主権は戦後はじめて回復することになるだろう。めでたし、めでたし──だが、われわれのシナリオは、そこからだ。総理を誘拐したテロリストを制圧し、《箱》も奪還する。そうなったとしても核をもっていたことで、総理をはじめとしたアメリカ追随の勢力はことごく消え去ることになる。テロリストを倒したわれわれの存在意義は証明され、政権がかわったのちも、公安部隊がこの国の裏側を掌握することになるというわけだ」
自慢げに、徳井は語った。
「やつらは、しかし一計を案じていた。われわれが裏切ることがわかっていたようだ。総理を誘拐したまでは計画どおりだったが、その監禁場所が、まさかここだったとはな。どこで調べ上げたのか、しかも鳳心教の残党まで用意していたとは。われわれにとって、触れられたくない部分だからな」
この『エリア51』を監督していたのは、どうやら彼らということらしい。ここを隠蔽する部署が公安にあるということを総理も口にしていた。
「それだけではない。核の通信システムに侵入し、あんな仕掛けをほどこしていたとは……」
それが、あのパソコンで見た画面なのだろうか?
「あれは、ネット上に存在する核制御のプログラムなのだ。本来は、通信を制御するための安全なものだ。核計画に技術面でたずさわる者なら、パスワードも知っている。ウェブ上にあるのは、どの端末からでも操作できるようにだ。もちろん一般人が発見しても、ただの文字化けしたページにしか映らない」
それが、最初に入力したパスワード。
「やつらが仕掛けたのは、強制的にミサイルを発射させるためのものだ。システムにログインさえできれば、《箱》を使わずともできるようになる。当初の計画どおりにいかなくなったときは、発射させることで、やつらは事態を明るみにしようとした……」
疑問がわいた。
「なぜ、そんなものを……」
《箱》と総理が手元にあるのなら、正規の発射方法を使えばすむことだ。たしか、秘書官か官房長官がいればよかったはず。秘書官は、いっしょに誘拐されていた。
徳井から聞くまえに、仙道はその答えに行き着いた。
「そうか……だからあなたたちは」
「そういうことだ。優先して秘書官を殺した。まあ、運転手のほうがさきにくたばってたがな。やつらも、そういうことを想定していた。だから、こんな手の込んだ仕掛けを用意していたのだ」
ミサイルの発射を阻止するためには、総理か秘書官を殺してしまえばいいのだ。生きている人間の静脈を認証させなければ、《箱》は開かない。
フラミンゴたちテログループは、それを見越して、発射できる仕掛けをべつに用意していた。急襲され、総理か秘書官を殺されれば、核発射という目論見は夢と消える。
「このプログラムはウィルスとして仕込まれたようだが、われわれでも解析はできなかった。核を発射させるものだということ以外は……。存在を知ったときは驚いた。だが同時に、考えが変わった。いっそのこと、核を発射させてみようと。そのほうが、われわれにも都合がいいのだ。さすがに、そんな発想はなかったから、そこは《御影》様様だな。もしかしたら難解なプロテクトを設定したのは、われわれがそう考えることをやつらが想定していたからかもしれん」
「どうして発射を……」
「テロリストを、どこかの国の人間に仕立ててしまえばいいのだ。中国でもいい。北朝鮮でもいい。この国の仮想敵国ならどこでもな。だが、そのためには《箱》から発射されたのではダメなのだ。総理がいなければ開けられないものだ。いくらテロリストに脅されたとしても、総理がボタンを押したのでは、国民は納得しない。しかし、テロリストがシステムにハッキングし、独自の発射プログラムを使用したのなら、話はちがう」
「なにがちがうんですか!?」
「よりテロを憎み、国防というものを本気で考えるようになる」
「おまえら、正気か?」
総理が、たまらずといった様子で声をあげた。
「なぜ、おまえたちが国防のことを考える!?」
「それもふくめた治安部隊ですよ」
わけがわからなかった。ということは、双方の勢力ともに、核の発射をめざしていたというのか!?
結局、どちらに転ぶにしろ、核の発射装置を作動させるということなのか……。
「あれはただの《おもちゃ》だと言っとるだろうが」
あきれたように総理は言った。
「ただの飾りだろうとなんだろうと、かまいはしないのだ。発射システムが使用されたこと自体が重要なのだ。そのためにわれわれも、やつらも、こうして汗を流している。やつらが流したのは血だったかもしれんが」
「……これから、なにをするつもりなんですか?」
「知れたこと。ミサイルを発射してもらう。そして、おまえは核テロリストとして、われわれに射殺されるんだ。当初の計画では、ここを急襲し、秘書官を殺害した段階で、やつらのだれかがシステムを使用して発射するだろうと考えていた。だがいつまで経ってもそれはかなわず、しかも《箱》をおまえが持ち去っていた。ようやくわかった。やつらにも迷いがあるのだと。現に、おまえにプロテクトの解除方法を教えなかっただろ?」
たしかにそうだ。だが彼女は、「箱の秘密をおおやけにするんだ」と言った。
発射させることが目的だったならば、徳井が言うように、それを教えてくれればよかったのだ。彼女の行動には、あきらかな矛盾がある。
「とにかく、いろいろとあてがはずれた。そのかわり、おまえを利用することにしたんだよ。おまえが動き回れば、われわれの思惑どおりに事がもどるだろうとふんでな。まさか、あれを解除してくれるとまでは思ってなかったが」
言い返すのも、馬鹿馬鹿しい計画だった。「あなた」から「おまえ」に徳井の言い方が変わっていたことも、気にならないほどに。
だから、寺院でみつかったときも、気づかないふりをして見逃したのだ。
「そんなことを……」
「おまえが、あれを破れなくても、こちらは官房長官を用意してあった。不本意だが、正規の方法で発射させることもできたんだ。そのために《箱》の奪還も必要だったのだ。そのバカ総理と官房長官が二人いれば発射はできるからな」
「官房長官も、誘拐したのか……それとも」
総理が、恐る恐る質問した。
「そうだよ。もちろん、われわれの仲間ということになる」
つまりは、グルということだ。
「クソッ! あの野郎」
「ははは」
愉快そうに笑う徳井に、仙道も問いかけた。
「……どうして、ぼくがこのパソコンを託されるとわかったんですか?」
「なんだ? 知らんのか? なぜ、おまえが御影に選ばれたのか」
「言ったはずです。御影という人など、会ったこともないと」
「いいや。おまえは御影という人間を知っている。ちがうか……御影という男は、すでにこの世にはいないからな」
「?」
「空港での写真は、でたらめだ。ただおまえとすれちがった、それらしい人間だ。本物の御影は、自害したのだ。この国に失望してな」
「死んだ……どういうことですか!?」
では、いったい御影とは……。
「御影とは、やつらにとっての象徴だ。やつら自身が御影なのだ」
意味がわからなかった。
「やつらの部隊名が、《御影》なのだよ」
「じゃあ、ぼくを選んだのは……」
「やつらのなかの一人だ。われわれの調査では、その人物とおまえには接点がある」
「だれなんですか!?」
「それは自分で思い出すんだな。細かいことまでは調べていない」
徳井は、突き放すように言った。
「警部、事を進めましょう」
そう言ったのは、隊長格だと考えていた兵士だった。どうやら、そうではなかったらしい。徳井のほうが上であることが、集団の雰囲気でわかる。
それにしても、こういう兵士の階級は少尉とか軍曹だと思うのだが、警察流の階級が使われていることに不自然なものを感じた。
「そうだな。冥土の土産は、もういいだろう? そろそろ、はじめさせてもらおうか」
花房たちが、カメラをセットしはじめた。総理たちを撮影していたものだ。ネットで配信するためのものだろう。
「あのカメラで撮るからな。よけいなことはするなよ。大丈夫だ、われわれが銃で狙ってるところは映らない。おまえが無駄な動きをした瞬間に映像は途切れ、おまえは蜂の巣にされている」
仙道はパソコンが置かれている椅子の前に移動させられた。
「それを操作して、核を発射してもおうか」
この状況では指示に従うしかない。総理も言っていたとおり、実際に核が発射されることなどないはずだ。
「よし、配信をはじめるぞ。無駄口をたたくなよ。3、2──」
撮影がスタートしたようだ。政府の人間たちは、この模様を見ているだろうか。辻本以外に、どれぐらいの人間が悪に染まっているのかわからない。しかし、全員がそうというわけではないはずだ。
助けを呼びかけられないだろうか?
ダメだ──すぐにあきらめた。呼びかけたと同時に、殺されている。
仙道は、パソコンの画面をみつめた。その方向のさきには徳井が立っていて、画面から少し視線をずらすと、彼の姿が見える。スケッチブックを持っていた。テレビ番組でいうところのカンペのようだ。はやくしろ──と書かれていた。
とはいえ、パソコン画面には『BOX計画』と文字が表示されているだけだ。とりあえず、クリックしてみた。
画面が切り替わった。
仙道の印象でしかないが、不自然なかわり方に思えたから、徳井たちの言うように、本来の機能ではないのだろう。
『発射システムを起動します』
『YES or NO』
深呼吸してから、YESをクリックした。
『発射コードを入力してください』
仙道の指は固まった。
ここでも、コードの入力が必要のようだ。
顔を横に振りながら、徳井の顔を見た。
カメラのスイッチが切られた。
「できないなら、すぐに死ね!」
花房が銃口を突きつけた。
「ち、ちがいます! これ見てください」
仙道は、パソコンの画面を彼らに向けた。
「発射コード……」
徳井は、総理を睨んだ。
「《箱》から発射するときに必要なコードのことか?」
「私は言わんぞ」
花房の持つ銃口が、総理に移った。
「おまえしか知らないはずだな? 言え!」
「わかった……教えてやる」
さすがは政治家だ。命がかかったら、あっさりと身を守ることを優先した。
「発射コードは、八桁の数字だ。いいか……12345678」
冗談のようなことを、総理は口にした。
「ふざけてるのか!?」
花房に恫喝されても、しかし発言を修正することはなかった。
「本当だ。考えてもみろ。使うことのないコードだ。真剣に決めるわけないじゃないか。好きな番号を私が選べたので、覚えやすいものにしたんだ」
徳井の視線はしばらく総理から離れなかったが、信用したのか瞳をそらすと、さきほどと同じ位置についた。カメラのスイッチが入れられ、撮影が再開された。
無言の圧力で、仙道は嘘のような発射コードを入力していく。
『攻撃地点を決定してください』
世界地図が表示された。照準のような丸いマークがカーソルキーで動かせるようになっていた。他国を攻撃することが徳井たちの目的ではない。あくまでも、発射システムが使用されたという痕跡が欲しいだけなのだ。
もしものことを考えて、なにもない太平洋上にマークを合わせた。
『発射します』
『YES or NO』
YES!




