第四章 途切れた時間#3
努は目を瞬かせる。
「よっしゃ、1位取るぞ」
耕基が興奮しきって雄叫びを上げる。
キャンプ二日目。
キャンプ場を起点に、暗号文を解読しながら地図と磁石でゴール地点まで辿り着く。という面倒なリクエーションが予定されていた。
「はい。お前の分も交じっていたぞ。仕方がないから組んでやったから、有難いと思えよ」
祐太の声にキョトンとした表情で、努はそれを受け取る。
頭の中がもやもやとして、すっきりしなかった。
健一は佐伯から預かってきた封筒を透かして中身を見ようと、必死に頭上で透かせている。
耕基が広げた地図の上に、忠志が方位磁石を置く。
笛の音が鳴り一斉に封筒が開けられ、ブツブツ読み上げる声が充満し、一気に駆け出して行く。
後れを取った努の手を、祐太が引っ掴む。
「早く行かないと」
努は嬉しくなって、頬を綻ばす。
暗号文①
北東十度。エコライン。東に十歩。西に三
歩。三角お屋根の食堂。
「なぁ、今は集いの広場だからココだろ。で、北東というとこっちだから多分ハイキングコースのこれの事だと思うんだけど」
健一が的確に解析し、皆が頷く。
「確かあっちの方だよな」
忠志が顔を上げて林道になっている方を指差す。
「なるほど、エコラインってあれか」
「でもさ、赤い屋根の食堂なんてあったかな」
祐太が腕を組む。
「僕達がご飯を食べたのはあっちだよね」
健一がぐるりと反対側を向いて言う。
「あ、あいつら分かったんじゃねー。真似してついて行っちまおうぜ」
耕基の出した案に、忠志がニヤリとする。
「待ってよ。そんなことしたら、ここの理由付けの所が書けなくなる」
チッと忠志が舌打ちをした。
佐伯が手渡した封筒には、暗号文と地図に解答用紙が入れられていた。そこにはきちんと推理文を書かなければならなくなっていて、それが間違っていたら減点されてしまうと、健一が口を尖らせて言う。
「昨日僕、あの林で木の枝を拾ってきたけど、赤い屋根の食堂なんてあったかな?」
祐太が、うーんと唸り声をあげて考え込む。
「早くしないと」
次々と駆け出して行く班を見て、耕基が急かした。
「分かった」
声を上げたのは、祐太だった。
「食堂と言うか、野鳥用の餌箱が置いてあって、その屋根の色が確か赤色だった気がする」
「それだ!」
忠志が叫ぶと同時に、全員で走り出す。
「早くしろよ」
耕基が振り返り怒鳴る。
面倒くせぇな。
俺は努の躰から飛び出し、ふっと笑みを零す。
そうそうリサの思う壺にはならないさ。
固まってしまっている努を見て、俺はそっと囁く。
「とっとと行きやがれクズ野郎」
くすくすとリサが笑いながら林をかけて行くのを感じ、俺はやれやれとつt無の前を走り出す。
目の前の長い尻尾を追いかけるように、努が駆けだす。
そのままスッと俺は姿を消す。
何となくそうするのが一番だと思った。




