第四章 途切れた時間#2
祐太の間の悪さは、筋金入り。
裏手から戻った努は、つくづく思う。
耕基にしっかり見られてしまったらしく、とっ捕まえられている。
「何こそこそと話してたんだよ」
困り顔の祐太が、チラッと努の方を見る。
面倒な事にバンガローの中から健一と忠志も出てきてしまい、顔から汗が噴き出す祐太は、微かに震えだす。
「何かあったの?」
何々と好奇心むき出しの忠志に、耕基は怒った口調で答える。
「こいつらがこそこそとしていたから……」
緊張が走る。
面倒だ。
そう思った瞬間、努から俺へ入れ替わる。
木々がざわつく。鳥のさえずりが頭の中で幾重にも木霊していく。
「もういいよ」
吐き捨てるように言うと、驚いた裕太が、目を見開く。
「何がだよ」
忠志は喧嘩口調で言う。
「夜、怖くてトイレに付き合ってもらったんだ。また苛められるから、黙ってて頼んだのに、今日になってばらすって言いに来たんだ」
少し無理あるかな。
愁傷な面持ちで忠志たちの顔を見回す。
「そんなの、信じるか」
ですよね。この流れでそれはない。耕基の反応に俺は納得しながら、じっと目を覗きこむ。
でもそういうことにしておきましょうよ。お互いのため。
耕基の瞳孔が開く。
長く息を漏らす。
その瞬間、時間が攫われていく。
耕基がプイと顔を横に背ける。
「集合時間だ」
健一が腕時計を見ながら、得意げな声で言う。
面白くなさそうに、忠志が耕基の尻にけりを入れたかと思うと、駆け出して行く。それを追いかけて、全員が走り出す。
「助かった」
祐太がホッと胸をなでおろしながら言うのを見ながら、俺は瞬きを数回する。
「やるじゃない」
何事もなかったように駆け出して行く祐太を見送る俺の横に、リサが現れ躰をぶつけてくる。
「よう分からん。けど、忘れた方がいいってこともあるんだな」
「そうね」
リサがいたずらっ子の目を向ける。
「私の作戦、無視してんじゃないわよ」
ん?
思いっきり尻を蹴り上げられ、俺の時間が一気に飛んでいくのが分かった。




