第全話 『——こうして俺は、五年前の続きを歩みだす。』
ストレスが溜まって、ムシャクシャして書きました。
更新ペースは自分のストレスの溜まり具合によります(笑
高校一年目の生活が、早くも終わりを迎えていた。義務教育から解放されたにも関わらず、ついでにいえば望んだわけでもないのに周囲に促されて進学し——その事を後悔しながら過ごす毎日だった。
友達ゼロ。将来の夢もない。趣味といえば一人で過ごす時間を苦にしないために始めた読書くらいのもの。自分が今、何のために生きているのか。自分が今、何のために学校に来ているのか。わからないままに、流されて日々を過ごしていた。
——その日までは。
終業式が終わった、その帰り。寄り道してチェーン展開されている古本屋で長々と閉店まで立ち読みした俺は、街灯のまばらな光を頼りに家を目指し——そのとき、目の前の地面が唐突に強い光りを放った。
「んだ、これ……魔法、陣……!?」
漫画の読み過ぎで現実との区別がつかなくなったのかと思ったが、間違いない。目を擦ってもそれは依然としてそこに存在した。
「……っ」
ゴクリ、と喉を鳴らして唾を飲み込む。
——誘惑には抗えなかった。
このつまらない毎日から逃れられるのであれば——そんな期待九割、恐怖一割で俺は足を踏み出していた。
魔法陣の光が一際強まり、視界は不思議な光で包まれ——
——俺は異世界へと、転生した。
* * *
——時は流れる。
五年に渡る命懸けの戦いは終結を迎え。
転生した者”達”は役目を終え。
英雄となった彼等はそれぞれの願いを手にする。
ある者は”そこ”で愛する者との一生を望み。
ある者は本来のあるべき場所へと帰る事を望み。
そして、俺もまた——……
* * *
——あの時の、帰り道だ。
体感的には既に五年も前の光景。身体が酷く頼りなく、弱っちく、小さく感じられた。
五年間の差は流石に大きいのか、酷い頭痛を覚えた。しかし、それ以上に喜びが溢れていた。
——戻って、来たんだ。
比べて初めてわかる排気ガス臭いこの街の空気も、妙に懐かしく感じられる。目から五年間溜め続けていた様々な思いが形となって、熱を伴って流れ落ちる。
——ああ、俺は、生きてる……!
泣いて、泣いて、泣いて。今の自分がいかに幸福な立場にあるのかをはっきりと全身で噛み締め、呟いた。
「……家に、帰ろう」
そうして俺は、五年前の続きを歩みだした——……
* * *
これはそんな、異世界から帰還した一人の元・英雄のお話……。
本編終了。以下、後日譚です。