コンテスト1
僕は教会の外で残りの作業を無意識に片付けていた。ヒイラギの飾り付けが終わって、薪の準備も終わった。残すは、教会での食事会とダンス、それからコンテスト。
来年からは、神父様はキャロリング、ロウソクを持って各家を巡って賛美歌を歌う方を優先するという方針だった。ヒイラギとツタのコンテストはなくなり、賛美歌の中にヒイラギとツタなどが繰り入れられるという話を聞いた。
コンテストは、去年一昨年と、ずっと男性側の勝利だった。特にヒイラギとツタの歌は、別の教会でもどんどん歌われるようになって、少年聖歌隊が歌うようになったと聞いた。
作業を終えた女性陣が教会からでてきて、歩いている中に僕はすみれの姿を見つけた。
「見て!夢の中に入れたんだ!」僕はすみれにかけよって手を広げた。
けれど、すみれはあいまいに首を振って女性の群れの中に入っていってしまった。そのまま女性達は僕の方を見ることなく歩き去っていってしまった。
突然、後ろから腕に抱きつかれた。
「アシュリー!?」
「夢の中に入ったみたいね。それで、今見たでしょ。すみれはこの夢の中に取り込まれてる。私は魔女の力と知識があるから抵抗できるけれど...彼女はこのままじゃ、夢から帰って来られなくなるかも。
もしかしたら、あなたも危ない」
夢の中のアシュリーの日本語は流暢だった。
「どういうこと?これは夢なのに?」
「夢は夢でも...ラエマ冬の書がみせる夢だわ。あなたの夢でもあるのだけど...あなたの願望が実現する世界...あなたの希望通りにいく夢なのだから。
でもこの夢にはラエマの意思が入ってきてる。あなたが自分で希望したと思ったことが、歪められてこの世界に影響してしまう」
「まだ...頭がぼんやりとしてる」
急激に眠くなったような感じになって、僕の目の前がぼんやりとし始めた。
「しっかりして。私の目をみて!」
「アシュリー」彼女の目はぼんやりとした世界の中でくっきりした輪郭を持っていた。
「すみれを助け出さないと!」
「なんでも希望が叶うの?」
「そう。でも...ラエマの意思が」
「じゃあアシュリー、そのスカート脱いで」
「脱ぎません...脱ぎません!エロい!」
アシュリーは薄くなりかけたスカートを意思の力なのか魔女の力なのか呼び戻した。
「だから男の夢に入るのは嫌なのよ...」
アシュリーは僕に少ししゃがむようにいうと、僕の額にキスをした。
焼きつくような痛みのあと額がジンジンと痛みはじめた。
それから、顔を抱きしめるように唇にもキスをした。アシュリーの唇はやわらかくて、生暖かかった。彼女の長いキスが終わると僕は投げ出され、半分閉じた目でアシュリーは僕を見下ろしていた。
「これで痛みを感じている間は自由に動けるはず...私の力の影響を受けているの」
「痛いけど...意識がはっきりしてきた。ありがとう。痛いけど。二度目のキスはなんだったの?」
「あなたはその答えを知っているわ。今はすみれを探しなさい」
アシュリーは顔を背けていってしまった。額の痛みと舌の先にアシュリーがいるような感じがした。
僕は立ち上がると、オルガンの調べが流れる教会へと向かった。