冬の夢3
アシュリーにラエマ冬の書を託して、僕とすみれは図書館に出かけた。
図書館の古い棚からはやはり何も見つからなかった。Googleで僕はツタに関連した1つの歌を見つけた。
Nay, ivy, nayというタイトルだ。
Nay, Ivy, nay, it shall not be, I wis,
Let Holly have the mastery as the manner is.
Holly standeth in the hall fair to behold,
Ivy stands without the door; she is full sore a cold.
Nay, Ivy, nay,
すみれが一冊本を抱えて持ってきた。
図書館にはなかったんじゃないの?と聞くと、「閉架があることを忘れていたの」と本を置いて席に座った。
「閉架?」
「一般公開されていない書庫のことよ。ああやって手に取れる本は開架っていうの。そういえばと思って司書さんに聴いてよかったわ。これが15世紀ごろからのイギリスの民謡や歌を集めた本なの」
すみれは、その中の1ページに付箋をつけていた。
「古くて、しかも多分口語なんだけど一つツタの歌を見つけたの」
Ivy ys good and glad to se;
Ivy is fair in hys degree.
Ivy is both fair and gren,
In wynter adn in somer also,
And it is medecinable, I wen,
Who knew the vertus that long thereto;
Ivy,
It is god and lusty
And in hys kynd a wel god tre.
「読めないよ」
「読めるわよ。伸ばす部分が伸びてないの。seはSee、godはGood。あとはsomerはSummerね。ちゃんと韻も踏んでるわ。口語っぽいのが玉に瑕ってところね」
僕がNay, ivy, Nayを見せると彼女は笑い出して、すぐに図書館の中だと気がついて声を潜めた。
「Nayは、今の英語でいうならNoなの。これはツタを否定してヒイラギを推す男性側の歌だわ」
なんだ、そういうことか...とがっくりした。
「でも、これを夢の中の男性陣が返歌として準備してる可能性はありそうね。っていことは、何を歌ってもこの歌で否定されてしまう」
そこへアシュリーが僕たちを探しにやってきた。
「面白そうな話してマスネ」
「アシュリー、すみれが夢の中でクリスマスソングを練習してるっていうんだよ」
僕とすみれが事情を話すと、アシュリーは「そういうことなら、ラエマ冬の書に答えが書いてありマシタ」
アシュリーは印刷した一枚の紙を持ってきていた。
「Veni coronaberis」