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写本

 アメリカからフェデックスでやってきた箱を開けると、段ボール特有のにおいがした。ぼろぼろになった油紙に包まれたものを開けると、重い革の本がでてきた。

 あれからラエマ冬の書を調べてみたところ、魔術書としてはかなり変わった本だという事がわかってきた。

 魔術書は、一般的に霊魂や悪魔、天使の解説とその召喚と使役について書かれている事が多いらしい。最も有名なのは、「ソロモンの鍵」だそうだけれど、僕は何が有名なのか全くわからなかった。

 その一方でラエマ冬の書については、そもそもラエマ夏の書「Midsummer booke of Raema」というものが存在していて、そちらが主流だという事がわかった。そして、ラエマ冬の書については「封印の印章を解説」とのみ書いてあった。これじゃあわからない。


 「すみれ、ラエマ冬の書が到着したんだけれど、見にこない?」

 電話の向こうで、落札できてたの?とあきれた声がした。革や羊皮紙でできていると話すと、興味を持ったらしくすぐに来る事になった。

 「ラエマ冬の書がもし英語で書いてあったら読んでくれない?」

 「英語で書いてある方がどうかしてるのよ。1500年頃に成立した本なのよ?その頃の英語で書いてあるか、ラテン語かもしれない。書いた人がイタリア人だったらお手上げだわ」

 

 家にやってきた彼女は僕が出したこだわりの紅茶にめをくれずにフェデックスの箱に向かい、慎重に箱から取り出して机の上に置いた。

 

 「ラエマ冬の書はね、10冊の写本があるとラエマが夏の書に記載しているそうなの」

 「ラエマって人の名前だったんだ?」

 「調べなさいよ!そして、10冊全てが現在所蔵されている場所が明らかになっているの」

 じゃあ、これは10冊あるうちのどれでもないってことか。偽物か、とつぶやいた僕に彼女は慎重にいった。


 「公式に10冊写本があるといっても、後の人が写して11冊目が作られる事もあるし、そもそも現在所蔵されている本が本物とは限らないの。

 この本は装丁がしっかりしているし、それに古英語で解説が書いてある。

 「それから、写本というのは印刷術がなかった頃の、手書き、手写しの本なの。日本でも聞いた事あるでしょ。源氏物語を写していた話。この方が話が面白いからといって、勝手に修正を加えてしまった人がいていくつものバリエーションが存在するの」

 聞いた事ないけれど、これはうなずくところだ。


 「もしかすると、最初のラエマによる原本?」

 「ほとんどその可能性はないと思った方がいいよ」すみれは言下に否定した。

 中をのぞいていたすみれは、書いてある言語が古英語で、冊子の形をしているが、よく見ると折り返しが一度裁断されているページがあることを教えてくれた。

 そしてほとんど文字がなく、イラストで占められていた。

後ろの方に特有のマークがあった。

「これ、魔法的な意味を持つ魔法陣かな?」

たしかにラエマ冬の書は、シジル、封印の方法を示す魔道書だ。けれど、本の中の幾つかに、必ず同じマークがあった。


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