アシュリー4
「冬至は一年で一番日が短い日...死ぬのは太陽、ってこと?だから赤いモチーフが出てくる。でも再生する赤いものがわからなくて」
すみれは珍しく真面目な顔をしていた。大学の講義を受けているときのようだ。
「キリスト教ではクリスマスはイブとクリスマスだけど、冬至の祭といったときはそこから一週間は続くの。だから、再生するものも太陽なの」
マーサさんはお菓子を追加で持ってきてくれた。これなら夕ご飯も用意すればよかったわ、元気な人がいると嬉しいものね、と笑った。
「確かにいわれてみると冬至の祭には意味を感じるわ。太陽が出ている時間が短くなっていき、また長くなっていく」
「農作物や家畜を飼っている家族には、季節というのは太陽が出ている時間がどうなっているかが大事な問題だったということはわかるの。農作物を作る以上暦は欠かせないということになるわ」アシュリーがお茶を飲みながら補足した。すみれは出てきたモンブランに目がなく「これいいんですか!?」と山を崩しにかかった。
「原始的な魔女というのと、ウイッカはだいぶ違うと考えられているわ。一部の農作物が育つかや家畜が子どもを産むか、そして人と人との間で子どもが産まれるか、ということが生き延びる上で重要だった時代があって、その祭礼はキリスト教がきてからも行事として取り込まれました。クリスマスだけじゃなく、ハロウィン、イースターもそう」
「一つ大きく歪んでしまったことがあるとすれば、キリスト教が男性優位な形になっていることね。ウイッカは広く受け入れられた宗教だったとはいえないけれど、それに近い信仰として自然の信仰の中でヒイラギとツタが競い合う文化があるのなら、女性もある程度認められていたようにも思います。
さぁ、私はここまで。いくつかまだ分からないことがあると思うけれど、それはきっと漆原さんが手伝ってくれると思うわ」
今夜はどうも3人の魔女に囲まれてしまった格好でどうも不思議な感じだった。