ヒイラギとツタ2
ラエマ冬の書を図書館から借り出した。
その時すみれの携帯がなり出した。
「あ、今日バイトだった!忘れてた」
「大丈夫なの?」
「一時間前のアラームだから大丈夫。でも今からっていうときなのに」
すみれがバイトを忘れかけるなんて今までなかった。普段しっかりしていると思ったけれど、さすがに今回は熱中しすぎたらしい。
絶対解析結果教えてね、と恨みがましく言い残してすみれは行ってしまった。
柴研の院生アシュリーは、外国からの留学生だった。しかも、ちょうどさっき図書館ですれ違った女の子だった。院生ということは、自分より年は2-3才上のはずだけれど、背丈が低いせいでせいぜい高校生くらいにしかみえない。
「こんにちは、先生から話はきいているわ。私はアシュリー。英語はできる?」
英語は全然ダメだというと「英語が上手な人がいると先生からきいていたのに。英語の方が、うまく伝えらるけど、なんとかなるでしょう」
にこり、と微笑む。
簡単にこれまでの経緯を話すと、アシュリーも興味を持ち、ヒイラギとツタの賛美歌ならよく知っていると話した。
「キリスト教は、拡大する過程でそれまでもともとあった宗教のいくつかをとりいれています。ハロウィンが有名ですが、漆原先生の講義を聴いていればわかりますよね...まず解析をしましょう」
ラエマ冬の書を取り出すと、アシュリーは食らいつくように眺め始めた。
ブラックライトは特に使わず、やはり特に最後のパリンプセスト部分を眺め、指で材質を確かめるようにして、最後に携帯にくっつけているブラックライトを手慣れた様子で本に当てた。
「たしかに、これはパリンプセストですね。ただこの本の内容は...」
アシュリーは解析機を起動して、解析を始めた。
解析機から出てきたアシュリーは、神妙な顔つきだった。
「おかしい。私にはわからない。なぜなのか。ラエマ冬の書全体がパリンプセストです。最後の部分だけではなくて」
PC上に、画像がでてきた。