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前世編/傲慢な皇女②

 

 スラム街の住民は恐怖しながら跪き、その恐ろしい光景をただ傍観していた。

 乾燥した風が舞い、夕暮れの空が街中を照らしている。

 銀色に光る騎士の鋭い剣が赤い景色を鮮明に映し出していた。


 「っ、エステレラ……!ごめん、君を巻き込んでしまった!」


 背後にいたローアルが私の手首をぎゅっと掴んだ。

 指先がひどく冷たい。ローアルも怖いんだ。



 「何言ってるの。

 何ひとつ、ローアルのせいじゃない。

 それにあなた一人を危険な目には合わせない。

 どんな時も、例えこれが最後でも、私達はずっと一緒だよ。」


 

 私達のこのやり取りを見て、馬車の皇女はあからさまに不機嫌そうな顔をする。


 「やめなさい、フォンセ。」


 「皇女様!しかし…!」


 皇女に鋭い眼光を向けられた騎士は、ようやく剣を下ろし、鞘に収めた。

 しかし全く気が済まない!という風に私達を睨みつけてくる。


 「ねえ、それならお前は何が欲しいの?

 欲しいものを言ってご覧なさい。」


 言葉とは裏腹に、皇女は私やローアルに冷ややかな目線を浴びせた。


 「僕は…彼女と一緒でなければどこにも行きません。」


 ローアルは声を震わせながらも私を自分の背後に隠した。まるで宝物でも隠すかのように。

 また皇女が恨めしそうに私を見ている。


 「それは何?あなたの恋人かしら?」


 「恋…いえ、そうではありません。

 しかし彼女は、僕の大切な人であることに違いありません。」


 「ローアル……っ!」


 「この貧民が!よくもぬけぬけと皇女様に向かって不遜な口を…!」


 再び騎士が怒鳴り始めたが、それを静止して皇女が言った。


 「そう。なら仕方ないわね。

 その下賤な者も一緒に引き取ることにしましょう。それなら問題ないでしょう?」


 「皇女様!?こんな小汚い貧民を、まさか二人も引き取ろうと言うのですか!?」


 「黙りなさい、フォンセ。いくらあなたでも、わたくしの決めたことに口出しすれば、その首を切り落とすわよ。」


 「…っ申し訳ありません。皇女様っ」


 真正面から皇女に睨まれた騎士はまた黙り込んだ。


 「誰か。この者達を連れてきてちょうだい。

  あ、けれどまだ馬車には近づけないでね。

 汚ないから、城に帰ったらきれいに洗わなければ。」


 「いや、やめて!離して!」


 「やめろ……エステレラに触るな!」


 数人の騎士達が強引に私達に掴みかかる。

 抵抗したが私とローアルは荒々しく腕を引かれ、無理やり別々の馬に乗せられてしまった。


 道端には、夕食のためにと買ってきた果物や穀物が無造作に転がっていた。


 なぜ……!


 私達には断る選択肢さえないのだろうか!

 貧民だから好き勝手しても構わないと?


 あの皇女様はローアルをあきらめる気はないみたいだ。

 だけど私は、ローアルをまるで家畜のように扱う皇女をとても好きにはなれなかった。


 飼いたいなんて………

 

 ローアルは物じゃない………!



 ——————



 「フォンセ。」


 「はい、皇女様!」


 「機会を見てあの少女を殺すのよ。

 むごたらしく残虐に。

 私に歯向かった罰を与えなければ。ね?

 フォンセ。」


 「はい!皇女様!ご命令はこのフォンセが必ず遂行してみせます!」


 この帝国の第一皇女。

 皇帝の次に高貴で美しいエスピーナの顔に、ひどく不気味な笑みが浮かんだ———。




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