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前世編/幸せだった②
———数年後、私は刺繍をしたタペストリーを帝都の商業ギルドに売るようになった。
商業ギルドは身分に関係なく、秀でた商品であれば何でもいい値で買い取ってくれる。
今、帝都の貴族の娘の間で、花柄の刺繍入りのタペストリーが流行っているのだという。
手に入れた布や糸は、元はローアルが狩りをして肉を売って得たお金で買ったものだ。
1ミリだって無駄にできない。
幸いにも刺繍は私を捨てた母親に教わったものだった。
運よくそれが貴族の娘たちの目に止まり、わずかながらも利益が生まれるようになった。
それで二人の食べ物や新しい衣服や靴を買った。
私もローアルも親に捨てられたが、その親に生きる手段を学んでいたのが本当に幸運だったと思う。
ただ後々思ったことがある。
私とローアルの親は実は貴族だったのではないだろうかと。
狩猟と刺繍。
どちらも貴族の趣味や遊びだと聞いたことがある。
でもそんなこと、捨てられた今となってはどうでも良いことだ。




