前世編/魔術師ディーの罠③
———しかしある時、同じ訓練生たちに呼び出され———。
「おい、ブタ。特別に訓練してやるぜ。」
同じ養成所に通う貴族の令息達に、ローアルは地面に落ちた木の棒を拾うようにと命令される。
彼らは数人でローアルを逃げられないよう取り囲んでいた。
「………」
ぐっと唇を噛み、ローアルは静かにその棒切れを手に取る。
「行くぞ!ブタに俺たち貴族様が、特別に教育してやるからな!」
「…!」
訓練用の剣は両側が逆刃で斬れる事はない。
しかし打撲傷などは負わせられる。
剣を手に襲いかかってきた令息の一人を、ローアルは身軽に避けた。
「なに?」
「あいつ、避けやがったぜ。」
「うそだろ?まぐれだろ。」
「このやろう!」
顔一面にそばかすがある令息が再びローアルに襲いかかった。
しかしローアルはそれを何なく避け続けた。
それもそのはずである。
なんせローアルは、元騎士団の老齢の師匠から幼くして何年も訓練を受け続けたのだから。
剣術には護身のための受け身も含まれている。こんな子供騙しの剣を避けるのは、ローアルにはごく簡単なことだった。
しかし何度もやり損ない、恥をかいた令息は怒り狂った。
「そいつの両手足を抑えろ!」
「なっ!離せ!」
ローアルは必死に逃げようとしたが、数人がかりで地面に押さえつけられた。
身動きができないローアルに馬乗りになった令息達は、笑いながら剣や拳でローアルの体を何度も殴打する。
「貧民が!思い知ったか!」
「ギャハハ!」
彼らには罪悪感など欠片もない。
令息達はさんざん暴行して満足すると、高笑いし、ローアルを残して去って行った。
傷だらけになったローアルは、何とか動く手でグッと地面の草を握り潰す……。




