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前世編/魔術師ディーの罠①
——帝国一の魔術師、ディーがやって来たのは翌日だった。
他国との外交中だったが皇女からの命令と言われ、仕事を他の優秀な部下に任せ、急遽引き返してきたのだ。
ディーの家門である【ストレーガ公爵家】は、元々トルメンタ帝国の皇家がまだ二分されていた頃の反対勢力だった。
しかし覇権争いに敗れ、血筋を絶やさないことを条件に現皇室に絶対服従させられた。
そんな屈辱的な過去を持っているのがストレーガ一族だ。
そのため一族は皇命にはいかなる場合も逆らえないという弱点を持っている。
現ストレーガ公爵であり、皇族の血筋でもあるディーにも魔力が受け継がれ、それは歴代でもトップクラスだと言われていた。
今のディーの魔力の強さは現皇帝のアウトリタに並ぶとも。
一方で若き公爵家当主ディーは、現【魔塔】の主でもある。
帝国に深刻な被害を及ぼす魔獣対策の指揮官を務めたり、皇命により友好国への魔力供給などの外交も行なっていた。
ディーはパッと人目を引く長い銀色の髪と、右が碧、左が灰色のオッドアイが特徴である。
その容姿や高貴な身分から帝国一モテると言われているが、いまだ未婚だった。
ディーは常にトルメンタ帝国の紋章が銀糸で刺繍された、黒の魔術師の衣装を着ていた。




