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前世編/暴君皇帝②

 

 皇女はローアルを物のように指差して騒ぐ。


 「早く2人を引き離して!!

 わたくしに女の方は必要ないのだから、西の塔にはあの子1人をやって…」


 「まあ、待て。エスピーナ。

 それも本人に直接聞こうではないか。」


 「お父さま!?」


 あっさり皇女を止めた皇帝は、今度はローアルを試すように尋ねた。


 「ローアルよ、お前はどうしたい?

 このままペットのようにエスピーナの所有物となるか?それとも……」



 「恐れながら陛下。僕は、エステレラと離れることはできません。

 それが叶わないなら、どうぞこの首をおはね下さい。」


 ローアル……………!!


 「私も同じです、皇帝陛下!

 ローアルだけを連れて行くというのなら、私もここにいる意味はありません……!

 どうぞローアールと一緒に首を刎ねて下さい!」


 私も同じ気持ちだった。

 ローアルと離れたくない。

 離れるくらいなら、死を選ぶ。


 私たちは手を繋ぎ、恐怖に慄きながらも皇帝に2人でそう訴えた。


 皇女がまた不快そうにこちらを睨みつけるが……

 


 「ワハハハッ、そなたらは本当に面白いな!

 エスピーナよ、ここは大人しく傍観してみてはどうだ?

 この二人は皇室の従者としての資格があるか見極めたい。しばらく、わたしが預かろう。」


 「お父さま!!」


 面白いものを見つけた、とでも言いたげに皇帝が高らかに笑った。


 隣の皇女は歯痒そうにドレスの裾を握りしめ、ブルブルと震えている。


 「では謁見は以上だ。この者達は速やかに西の塔に連れて行くように!」


 謁見が始まってから一番大きな声を張り上げた皇帝。立ち上がってマントを翻した。

 兵や騎士たちが一斉に頭を下げる。


 ————もしかして、私たちは引き離されずに済んだのだろうか…?


 わがままを通したのに、処刑もされずに?



 「こ、皇帝陛下の寛大な処置に感謝いたします。」


 「と、トルメンタ帝国に祝福を。」


 私たちはいつか役に立つはずだと覚えた感謝の言葉をそれぞれ並べ、足早に去っていく皇帝に頭を下げた。


 あれが噂の皇帝?確かに怖かった。


 恐怖でまだ手が震えている。

 でも………


 私はふと、遠のく皇帝の顔を盗み見た。

 とある疑問がどうしても浮かんでしまったからだ。


 皇帝は本当に、あの噂通りの冷血な暴君なのだろうか?と。


 確かに皇女は、人の命を軽く扱う方なのだと思う。

 きっと私が学んだ、たくさんの皇族たちの思考と何ら変わりないだろう。



 でも、暴君と恐れられている皇帝の方は、本や噂とは少し違う気がしていた。

 威圧感はあるものの、残虐な面を見る事がなかったからだ。

 まだ私が何も知らないだけかもしれないけれど。


 少なくともローアルは皇帝のおかげで、皇女の手を逃れたのでは?



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